ピカソ・マニマニア

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『 フロリダ 』  ローレン・グロフ 著

2021-04-29 18:06:38 | 

副題は 「丸い地球の どこかの 曲がり角で」

ニューヨークで生まれ育ち 結婚と同時に フロリダに移り住んだ作者の 自身を投影したかのような 2018年に発表された11の短編集です。

ローレン・グロフは 1978年生まれ、2015年の長編 『運命と復讐 』で 注目されました。

蛇と鰐とハリケーン、蒸し暑いフロリダが どの作品にも描かれています。



ポール・サイモンの歌 ♪グレイスランド♪ から付けられた「亡霊たちと抜け殻たち」   幼い息子たちをガミガミ怒鳴る自分に嫌気がさし 子供の寝かしつけは夫に任せて ランニングに出る彼女が見る 彼女自身も含めて亡霊や抜け殻のような人々。


ジョン・ダンの宗教詩から取られた言葉「丸い地球のどこかの曲がり角で」
爬虫類学者の父親が 毒蛇に咬まれて死んだ。数十年後 一人ボートで池をさまようジュードの前に父の亡霊が現れる。


「犬はウルフッ! と鳴く」  孤島に母親に置き去りにされた7才と4才の姉妹。 放した犬は野生化していき 骨と皮だけになって助け出された二人は 幽霊のようだった。


フロリダパンサーが目撃される森の古い狩猟小屋で幼い子供たちと3人で過ごした一夜「ミッドナイト。ゾーン」  


O・ヘンリー賞を受賞した 「ハリケーンの目」  ハリケーンの避難勧告を無視して家に居続ける女性が出会う 亡霊たち、


「愛の神のために、神の愛のために」  神の愛のために には お願いだからの意味があるそう。  裕福な家に育ったジュヌビエーブと 学資ローンの返済に苦しむアマンダ。 フランス在住のジュヌビエーブをアマンダが訪ねるが。


母親の介護を押し付けられた三女が 一年の内一ヶ月だけ姉たちに介護を代わってもらい訪れた 「サルバトル」 での出来事。


18世紀の博物学者に恋をする 「フラワー・ハンターズ」


大学の教職を解雇され ホームレスになっていく女性を描いた 「天国と地獄」  作者はプロテスタントのカルヴァン派の家庭に育った。カルヴァン派は生前の行いとは関係なく 天国に行くか地獄に行くかは 生まれた時に神に決められている のだそう。


ジョギング中に 血まみれの少女を発見、介抱したが 警察にも行かず逃げて行ってしまった 「スネーク・ストーリーズ」


高校時代フランスに交換留学で行ったときに嵌った モーパッサンを研究しようと 子連れでその生地に行くが そのとんでもない一生に興ざめしていく 「イポール」 イポールはモーパッサンの生地。




一話一話が重く考えさせられるので 一気には読めませんでした。
30代~40代の女性の閉塞感が良く出ていると思います。詩的な表現が多く救われました。

的確な注釈は開いたページの左側にあり 読みやすい。
訳者の後書きも親切です。



私は昨年の今頃、ミシガン州の私立探偵のシリーズ話を読んでいて、そこには 冬には湖が カナダと行き来できる程凍るという、ミシガンに住む人はこぞって お金をためて老後は暖かいフロリダに住むのを夢見ている と繰り返し書いてあったので もっと楽園のようなところかと思っていました。フロリダはフロリダで 住みにくい点もあるのですね。



    by   風呼   
     



コメント
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