どうにもならない貧しさ、人の性(さが)を受け入れざるを得ない 家族の優しさを 不快感を最小限度にとどめ 淡々と描かれた原作が どんな風に映像化されているのか見たいと ずっと思っていました。
多少の人物設定に違いはありますが この方が説得力があり 想像以上の出来です。
監督は呉美保(おみほ)さん。 主演は綾野剛さん。 お二人は昨年度の各映画賞を総なめにされました。
脇役の高橋和也さんが秀逸。 なんと6人の子持ちだそうです。元男闘呼組。
舞台では岡本健一(元男闘呼組)さんも頑張っています。 こちらは男手ひとつで育て上げた一人息子がジャニーズjrで活躍の傍ら 上智大学に合格されました。
函館の町が丁寧に描かれ 短い夏の海の色と共に 印象的です。
函館市民の協力が大きかったそうです。 市民に愛され続ける作家さんです。
原作者 佐藤泰志さんは 1949年生まれ、 5度の芥川賞候補、 一度の三島由紀夫賞候補となるも すべて落選、 三島由紀夫賞候補となったこの ”そこのみて光輝く” を上梓した翌年に自死されます。 長く自律神経失調症を患われていました。
芥川賞受賞作は 欠かさず読んでいますが 最近の受賞作には ? っと思わされっぱなしです。
3年前の 田中慎弥さんの 『共食い』 以降 納得できない気がします。
市民の自主制作に近い形で制作された映画 『海炭市叙景』 の原作も是非読みたいと思います。
惜しい作家さんを失ったものです。
by 風呼