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チック・コリア/シークレット・エージェント

2007年06月21日 23時30分01秒 | JAZZ-Fusion
 76年に続く、「乱発の年」であった78年に出したアルバムのひとつ(ソロ名義だけでも他に「フレンズ」「マッド・ハッター」を出している)。比較的ポップでリラックスした表情を見せ、当時のフュージョン・ブームに目配せをしたような「フレンズ」、コンセプト・アルバム指向の強い大作指向の「マッド・ハッター」に対し、このアルバムはどちらというと、「フレンズ」のナイト・ミュージック版のような仕上がりだ。具体的にいえば、音楽主義的な面、テクニック史上主義なところは割と抑制されて、その分都会的なファンキー色やAOR風味が強いといったところだろうか。また、リズム・セクションが常連のスティーブ・ガッドやスタンリー・クラークが消え、当時コリアが発掘したドラムスのトム・ブレックライン、ベースのバーニー・ブルネルが登場しているあたり、サウンド的にはこれまでとは微妙に色合い変えてきている。

 1曲目「ゴールデン・ドーン」はシンセ・オーケストレーションをフィーチャーした序曲風なファンファーレだが(このパターンも「またかい」と感がかなくもない)、シンセだけでオレが、オレが....となるのではなく、しっかりとバンド・ミュージックになっているし、ピアノがいかにもポップなフュージョンしているのも楽しい。2曲目「スリンキー」はファレルのフルートとエレピをフィーチャーした基本的にRTF風な作品なのだが、リズムがファンキーでキレが良いのでアップ・トゥ・デートな感触も不足はない。3曲目「ミラージュ」はトロンボーンとシンセのデュオによるリゾード風な空間サウンドだが、バルトーク的な表情も見せる。4曲目「ドリフティング」はモランをフィーチャーしたボーカル作品、彼女が登場する時にありがちな意味不明な無国籍的情緒でもって仕上げられた作品だが、正直いうと彼女のボーカルをフィーチャーした作品を私はあまりおもしろい思ったことがない、この作品もご多分にもれずそうだ。一方、5曲目「グレープ・ストリート・ブルース」はモランのボーカルをフィーチャーしつつも、タイトル通りブルージーなAOR的としてまとめてあるのがおもしろい。

 6曲目「フィックル・ファンク」は、タイトルとおりファンキーな作品だが、いかにもチック・コリアらしいシャープなリズムのキメが連打される、スポーツ的な快感が充満したテクニカルな作品だ。リズム・セクションはさすがにやや大人しいものの、ガッドとクラークと比較してもそれほど遜色がないはさすがだ。コリアはこういう新人を発掘してくるのが本当にうまい。7曲目「バガテル第4番」はバルトークの作品。コリアの音楽的指向の中にバルトークというのが確実にあって、彼が比較的なシリアスな音楽をつくろうとするときまってバルトーク臭くなったりするのだが、こちらはピアノとシンセでシンプルに仕上げている。8曲目「ホット・ニュース・ブルース」はなんとアル・ジャロウをフィーチャーした作品だがAOR風な訳でもなくややテクニカルさ不発に終わった感じ。9曲目の「セントラル・パーク」は、この時期のアルバム同様ラストを飾るストリングスなども導入大作指向の強い作品で、例によって最後に相応しくスリリングな場面も用意されているのだが、ラテンのリズムとトラッドなストリングスがいくぶんリラックスした雰囲気を醸し出しているのがむしろ特徴か?。
コメント
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