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CHICAGO III

2007年06月05日 22時44分32秒 | ROCK-POP
 71年の第3作。全体に前作、前々作の延長線上にある野卑なロック的なダイナミズムと実験精神、サイケ的な賑々しさのようなもの横溢した作品ですが、ヴァリエーションは更に拡がり、その掘り下げ方も各々深度を増し、音楽の作りもよりプロフェッショナルな色彩を漂わせはじめてきた....という感じで、いうなれば「やや落ち着きを見せた順当な第3作」といったところでしょうか。このあたりは旧A面の冒頭のやたらとファンキーでかつジャム風な「僕等の歌を」、ちょっとジャズとロックのボーダーみたいなスタンスで仕上げた、まるでBS&Tみたいな「孤独なんて唯のことば」、ウェスト・コースト風なコーラスとサウンドをフィーチャーした「朝の光」、ニューロックというよりは明らかにハードロック的な重さのある「欲しいのは君だけ」という4曲のヴァリエーションから既に明らかといえましょうか。

 ちなみにアルバムはこれ以降、つまり旧B面以降はこの時期のシカゴらしくメドレー形式で組曲に仕立てた曲が続きますが、まずは全6曲からなる「トラヴェル・スイート」。1曲目「フライト・ナンバー602」はまるでCSNY風なフォークというか、アコスティック・サウンドで、ドラム・ソロの「火星へのモーターボート」をブリッジに、やっとシカゴらしい「自由になりたい」が登場して安心させてくれます(シングルカットされてそこそこヒットしましたよね)。「自由の祖国」はピアノとフルートをフィーチャーした印象派風な作品。この手の実験的作品は前作、前々作にもいくつか収録されてましたけど、その後のシカゴを知っている人にとっては、やや時代に置き去りにされた感もなくはないですね。その後、メロディックでコーラスがポップな「僕等の夜明け」と「フライト・ナンバー602」の雰囲気にやや近づいた(といってもこちらは後半かなりジャズ的になりますが)アコスティックな作品「ハッピー・コウズ・アイム・ゴーイング・ホーム」で締めくくる構成になってます。

 旧C面はタイトルの割にはやけに軽快に始まり、あらぬ方向どんどん展開していく「母なる大地」、これもシングル・ヒットしたポップな「ロウダウン」が独立曲を並んだ後、再び「シャワーの時間」という5曲からなる組曲になります。こちらは全編フォーク風なアコスティック・サウンドやコーラスをたっぷりフィーチャーし、曲も一貫した流れがあってなかなかよくまとまっている作品。旧D面を使い切った「エレジー」は、詩の朗読に始まるドラマチックな作品で、ボーカルの出番はほとんどなく、ブラスやSEを筆頭にかなり重厚なインストをメインにだしています。現在の耳で聴くとやはりいささか散漫な感じはぬぐえませんが、ともあれこの時期のシカゴはやはり自他共にインスト・バンドとしても自負があったんでしょうね。ともあれ、シカゴのヒストリーからすると(次のライブを総決算とすければ)、この手の組曲というのは「若気の至り」というのはあんまりですが、熱病みたいなもんだったんでしょう。とにもかくにも作品が打ち止めになる訳です。
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