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スタンリー・ジョーダン/虹の階段

2007年06月13日 23時40分59秒 | JAZZ-Fusion
 80年代後半にタッピングというギター奏法で話題になったジャズ・ギタリストだけれど、これはその彼が90年日本のブルーノートで繰り広げたライブ・パフォーマンスを収録したライブ盤だ。私はギター奏法について全く詳しくないのだが、タッピングとはロックでいうライトハンド奏法のことであろう。例のヴァン・ヘイレンで有名になった、あのフレットのところで現を右手で叩いて、トレモロのような効果を出す奏法である。スタンリー・ジョーダンの場合、これを更に推し進めて、両手でギターを2本弾くというようなことまでやってしまうらしく、このライブでもそのそうした奏法が大々的に披露されているようだ。確かにこのアルバムではソロとバッキングを同時にやっているようなところが多数聴かれる。

 ただ、テクニック的に斬新なだけでは単なる音楽のサーカスになってしまう。実際、この彼のアルバムではそういうところもあったらしいが、このアルバムではギター・フュージョンとして聴いても音楽的になかなかのものであると思う。このアルバムで聴ける彼のギター・ワークは良く歌うし、例のテクニックも、別段これみよがしなところがなく、至極音楽的で、センスもなかなかなものだと思う。また、曲の方もレッド・ツェッペリンの「天国の階段」に始まって、コルトレーンの「インプレッション」、ロッド・テンバートンの「レディ・イン・マイ・ライフ」と続き、「枯葉」「ストールン・モーメンツ」と4ビート、ロック、ブラコンと、実にヴァーサタイルな選曲で楽しませてくれるし、予想に反し、4ビート&スタンダード系の作品の方がむしろ楽しめたりするのは(ウェス・モンゴメリーの名演をモダンにリファインしたような「インプレッション」などなかなか快演であるし)、彼の素性の良さを物語っているようにも思える。

 ただ、これは彼のために惜しんで書くのだけれど、いかんせん、弦を指で叩くという奏法の限界なのだろか、タッピングを駆使したギターの音色はとても細く、ともすれば貧弱に聴こえてしまうのは遺憾ともしがたい点かもしれない。もう少し太い音色、あるいは強烈な個性のようなものがあったら、もっと良かったと思う。今やスタンリー・ジョーダンといえば、既に「忘れられたギタリスト」かもしれないが、このアルバムの後、彼の音楽はいったいどうなったのだろう。ひょっとすると私が期待するような個性を醸成してくれていたりするのかもしれないが、あまり消息を聞かないところからして、どうもそうした方向で進化もしていないようだ。残念なことである。
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