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音楽全般について 素人臭い能書きを垂れてます
プログレに特化した別館とツイートの転載もはじました

坂本龍一 スネーク・アイズ (Soundtrack)

2005年05月04日 00時34分56秒 | サウンドトラック
 映画というものは、昔はほとんど名画座に通い詰める....ってなノリで、およそ映画と名のつくものならシリアス作品でも、ミュージカルでも、はたまたポルノでもなんでも観たという感じだが、現在ではもうほとんどヒデオでしかみなくなってしまった。これももちろんビデオで観た作品。主演は売れっ子ニコラス・ケイジ、監督は私の大好きな技巧派ブライアン・デ・パルマ、音楽が坂本龍一(ハリウッド・デビュウとなる)というおもしろい組みあわせでもって、制作されたスリラー作品である。

 ストーリーはアメリカのとあるスポーツ・アリーナでボクシングのタイトル・マッチが行われ、それを視察しにきていた国務長官が何者かに射殺される。アリーナは閉鎖され、ひょんなことからそれに遭遇した悪徳刑事(ニコラス・ケイジ)が、事件にかかわったことから、そこに潜む陰謀が徐々に明らかになる....というものだ。
いかにもブライアン・デ・パルマ好きそうなトリッキーな設定だが、映画そのものも久々にデパルマらしい技巧の冴えが存分に楽しめるものとなっている。なにしろ、冒頭の15分近いワン・カット撮影が凄い。主人公のニコラス・ケイジが2階らしいTVスタジオ風なところから、部屋を出て廊下で数人と会話し、その後チンピラを追ってエスカレータで1階へ降り、そいつをとっちめて金をせしめるると、エスカレーターを降りてきたチャンピォンに歓声を送り、そのまま会場へ入り、旧友と再会、あれこれ話して、やがてイスに座って試合開始、その後、観客の不穏な動き、謎の女の登場、そして銃声と、ストーリーの序盤を一気にワン・カットで収めている。それはまさに目がくらむような映像体験であり、ハリウッドの映画作品としては、異例なほど実験的な表現ともなっている。まさに久々にデパルマらしいタッチを堪能させもらったという感じである。

 その後、ストーリーはどんどん意外な方向へと進んでいき、観客はほとんど事件に翻弄され続けることになる訳だが、中盤になると事件の真相はあっけないくらい明かになってしまう。このあたりはヒッチコックの「めまい」の故知に学んだのだろう。ともかく映画の眼目は「意外な真相にあらず」というところなのだ。事件を追う主人公はまったく別の地点から真相に到達するが、その時点で、あの冒頭においてワンカットで収められたシーンが、今度はまったく違う視点から再度語られることになり、後半は黒澤の「羅生門」よろしく、まさに映像による謎解きいった格好になっているのだ。つまり、観客はあの時見せられた映像がまったく違った意味合いを持っていたことに気がつくという趣向なのだが、これもまたデパルマらしいとしかいいようがないものだ。他にもスローモーション、分割画面などなどデパルマらしい趣向が作品中に横溢しており、ファンならめっぽう楽しめる受け合いである。

 さて、坂本の音楽だが、デパルマという人はかなり音楽にもウルサイ人のようで、この作品で坂本が起用されたのはおそらく「ラストエンペラー」等のベルトリッチ作品での貢献度に注目してのことだろう。ピノ・ドナジオの明るく壮麗な旋律を好んで使用するデパルマ作品には、坂本の作る旋律はやや暗い印象もなくはないが、全体に弦を主体にした沈痛で不穏な音楽でもって進んでいくあたり、映画の趣におおいに貢献しているといってよかろう。
 メイン・タイトルは、「西洋人が期待する東洋の映画音楽家坂本龍一」のイメージに答えるべく、いつものペースで押し切っている感じだが、パニックの場面の音楽では、坂本の粘着質であるがタイナミックなサウンドが、デパルマ風の容赦ない描写と見事一致しており、作品を見事に盛り上げている。それにしても、坂本は弦のアレンジがうまい。この作品ではどうやらバルトークあたりを元ネタにしているようだが、ニコラス・ケイジ扮する主人公の行き交う倦怠感と正義感の狭間のようなものが、弦の微妙な動きでもってよく表現されており、けだしサウンド・トラック中の聴き物となっている。(1999年9月21日)


※ 昔。映画評として書いたものをちょっとたけ改訂しました。その後、坂本はデパルマと組んでいませんが、やはり坂本の翳りある旋律は、派手好きなデパルマの好みは合わなかったんでしょうね。
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映画を彩るピアノ協奏曲集

2005年04月24日 00時05分55秒 | サウンドトラック
 NAXOSから数年前に出た、ハリウッド製の映画音楽をピアノ協奏曲化した作品ばかりを集めたアルバムです。4月20日に書いたKOCHのアルバムと似たような企画ですが、こちらの方が、収録した作品の知名度や作品の美しさなどという点で一版向けですかね。演奏はプロインシャス・オドゥイン指揮のRTEコンサート・オーケストラ、ビアノはフィリップ・フォークです。これも自分用にメモしてみます。

 01. アディンセル/ワルソー・コンチェルト(デンジャラス・ムーンライト)
 アディンセルはイギリスの映画音楽家です。本国ではどうか分かりませんが、一般的にはこの1曲だけが世界的に知られている人だと思います(なにしろリチャード・クレイダーマンもやってるくらいですからね)。映画「デンジャラス・ムーンライト」の音楽らしいのですが、どういう映画で、どう使用されたたんでしょうね。ちなみに音楽にはご存じのとおり、ラフマニノフ的憂愁とチャイコ的壮麗さを多少メロディックにしたような仕上がり。

 02. ビーバー/イスラの肖像(ザ・ケース・オブ・ザ・フライトゥンド・レディ)
 初めて聴く曲です。ビーバーという作曲家、そして「ザ・ケース・オブ・ザ・フライトゥンド・レディ」という作品の詳細は全くわかりません。冒頭はのみやけに精力的で、ピアノ協奏曲っほいですが、本編の方は感傷的で甘いロマンティックさが横溢したいかにも映画音楽的雰囲気です。

 03. ローザ/白い恐怖協奏曲(白い恐怖)
 「白い恐怖」の音楽は、ミクロス・ローザの代表作です(アカデミー賞受賞)。この音楽はいろいろな長さ、編成のピアノ協奏曲化されているようですが、これはもっともオーソドックスな版で、有名なテーマ部分を額縁に、グレゴリー・ペックがサイコチックになるこれまたテレミンの部分、ピクニックの場面の音楽を中間部に構成して、映画中の主要な旋律は全て聴くことができます。ピアノとのオケの絡みも非常に有機的で、まるで最初からピアノ協奏曲のようです、

 04. ロータ/魔の山の伝説(魔の山)
 ニーノ・ロータはフェリーニの音楽で有名ですが、この曲は知りませんでした。ラフマニノフ風な外観の中から、一度聴いたら忘れられないようなイタリア的な哀愁の旋律が顔を出すあたりは、いかにもニーノ・ロータですね。彼は映画音楽と平行して純音楽の分野でもいくつかの作品を発表していたようですが、やっぱりこの手の旋律が出てくるんでしょうか。

 05. ベネット/主題とワルツ(オリエント急行殺人事件)
 40~50年代の作品からの音楽ばかりで構成されているこのアルバムでは、一番新しい曲(74年)。前述のワルソー・コンチェルト風な時代がかったビアノ協奏曲風なテーマを持ち、このテーマがラウンジ・ミュージック、ウィンナ・ワルツに変奏されるという構成。デビッド・ラスキンの「ローラ殺人事件」なんかと同じ趣向ですが、もうちょっと長く聴きたいです。

 06. バス/コーニッシュ・ラプソディ(ラブ・ストーリー)
 これも作曲家、作品ともに全く初めての作品。ご多分にもれずラフマニノフ風な音楽で、彼のピアノ協奏曲第2番の第1,2楽章を6分に圧縮したような趣ですが、大胆な不協和音を使用してみたり、ピアノに印象派風フレーズが出てきたりとモダンな点もちらほら。また、ピアノ協奏曲的な雰囲気も濃厚で、この点ではこのアルバム中12を争う出来です。

 07. ハーマン/死の協奏曲(戦慄の調べ)
前回書いた「B.HERRMANN, F.WAXMAN, A.NORTH / Paradine Case」にも収録されていた作品です。前回も書いたとおり、名作「幽霊と未亡人」を思わせる壮麗でロマンティックなテーマが魅力的。また、わずか12分の曲ですが、よくよく聴くとこの作品。リストの協奏曲ばりに一楽章制のピアノ協奏曲の体裁を整えているんですね。いやぁ、さすがです。

 08. ウィリアムズ/オーウェンの夢(ワイル・アイ・リブ)
 これまた作曲家、作品ともに全く初めての作品です。額縁を構成するテーマ部分は、チャイコフスキーのピアノ協奏曲の雰囲気にかなり近い印象で、まんまみたいな部分も出てきます。ただし、中間部いかにもいかにもなハリウッド調に転じてドラマチックに盛り上がりを見せるあたりはこの作曲家の個性なんでしょう。その分、ピアノ協奏曲的なムードは後退気味ですが。

 09. ペナリオ/ミッドナイト・オン・ザ・クリフ(ミッドナイト・オン・ザ・クリフ)
 レナード・ベナリオって確か有名なピアニストだった思いますか、こういう映画音楽も作っていたんですね。曲は半音階で進むちょっと退廃的な旋律が印象的なのですが、やはりピアニストが作った曲だけあります。名技性の高いフレーズが連打して、どっちかというと、ショパンのピアノ協奏曲の緩徐楽章みたいな、オーケストラ付きのピアノ・デモ・ピースみたいな感じになっちゃいますから....(笑)。
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B.HERRMANN, F.WAXMAN, A.NORTH / Paradine Case

2005年04月20日 00時38分59秒 | サウンドトラック
 KOCHというクラシックのマイナー・レーベルから出た、バーナード・ハーマン、フランツ・ワックス、アレックス・ノースという黄金時代のハリウッド映画音楽家達のかなりレアな作品を集めたマニアックなアルバムです。KOCHはよくこういアルバム出して来るんで、見逃せないレーベルなのですが、今回はピアノ協奏曲的な作品を集めているところがミソ。内容が内容なので、自分のために曲ごとにメモしておくことにします。


 01.ワックスマン/ピアノと管弦楽のための狂詩曲
 ヒッチコックの「パラダイン夫人の恋」のスコアを基にフランツ・ワックスマン自身がピアノ協奏曲風に編曲したもので、そもそも「パラダイン夫人の恋」自体サントラとしても、かなり珍しい部類となると思いますが、その編曲版といえばレア度はかなり高いと思います。テーマは同じヒッチコックの「断崖」とか「レベッカ」あたりと共通するワックスマンらしい田園風なムードをもったもので、前半はロマン派の緩徐楽章風に進行。やや怪しげなムードを織り交ぜつつ、半音階風にテーマを展開していくあたりはワックス節ですかね。中間部のロマンティックさも、いささか古式ゆかしい感じはしますが、とても美しい音楽です。全体にピアノはオブリガート風で、むしろウィーン風なヴァイオリン・ソロの方が目立ちます。

 02.ハーマン/ピアノと管弦楽のための協奏的マカブレ 
 これも映画の素材(「戦慄の調べ(Hagover Squre)」)を基にピアノ協奏曲風に編曲した作品で、おそらくアルバム中一番有名な作品で、私のコレクションでもこれで3種目となります。本編ですが、リスト風な冒頭はさておくとして、その後現れるテーマの方は、ちょっと「幽霊と未亡人」を思わせる壮麗でロマンティックなバーナード・ハーマンらしいもの。前半はこのテーマを基に時折ラフマニノフ的な憂愁さを感じさせつつラブソディックに進行。中間部はバルトーク風にリズミックな展開で、名技性の高いパッセージも登場して盛り上がり、後半ではお約束通りテーマを再現という構成です。

 03.アレックス・ノース/トランペットのオブリガート付きビアノ協奏曲
 これは素材が映画にあるのかどうかわかりませんが、全3楽章で総演奏時間も20分近い、堂々たる協奏曲です。内容的にはジャズや現代音楽的音響を取り入れた、かなりモダンな仕上がりであり、トランペットのオブリガート付きというのも珍しいといえるでしょう。第一楽章は「ジャズ」と名付けられている通り、かなりジャズ的な響きに満ち満ちでいて、ガーシュウィンの「パリのアメリカ人」を、オネゲル風にしたような雰囲気などといったら、ノースに怒られるでしょうか。第2楽章は非常にちょっと退廃的なムードもあるロマンティックな音楽。時に無調風、ブルージーになったりもしますが、このあたりは演出の内でしょう。第3楽章は案の定バルトーク風で(笑)、全体にオケコンの最終楽章を思わせるムードです。この時代のバルトークの影響力を大きさを感じさせずにはおかない楽章ですね。

 04 ワックスマン/The Charm Bracelet
 ピアノ独奏による5つの小品集といった感じの作品。これも多分映画には関係なく独立した作品と思われます。新古典派風の乾いたユーモアを感じさせるような作品で、ワックスマンとしては意外な表情かもしれません。また、時にドイツ・ウィーン風の表情を見せ、ちょっとレーガーの小品集あたりに接近するのも、彼のルーツを感じさせます。

 05.ハーマン/ピアノのための前奏曲
 世界初録音とのことですが、わずか2分のピアノ・ソロで、新ウィーン風に退廃的な香りもする、ちょっと無調っぽい曲になっています。いったいどういう目的で書いたのでしょうね?。これも多分映画とは関係ないはずですから....。


ちなみに演奏ですが、ピアノはデビッド・ブキャナンで、オケはジェームス・セダレス指揮ニュージーランド交響楽団という組み合わせです。ほとんど無名かと思われますが、今時のピアニストやオケは、メジャーでなくとも本当にうまいので、やや軽量級な感じは散見しますが、全編に渡り安心して楽しめる演奏です。
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MAX STEINER / The Adventures Of Mark Twain (SACD)

2005年04月10日 18時55分05秒 | サウンドトラック
 マックス・スタイナーといえば、なんといっても「風と共に去りぬ」「カサブランカ(ただし、As Time Go byはスタイナーの作品ではありません)」の音楽が有名ですが、実はこの人、エーリッヒ・コルンゴールドやアルフレッド・ニューマンと並ぶハリウッド映画音楽の草分けです。例のロマンティックな旋律をゴージャスなオーケストレーションで朗々と鳴らす、あのスタイルを創始した人のひとりという訳です。

 この作品は彼が1944年に担当した「The Adventures Of Mark Twain」という作品の再録盤です。日本未公開な作品のため、もちろん私は映画を観ていませんし、内容もよくわかりませんが(あの文豪の伝記?)、アカデミー賞とっているくらいですから、代表作の1つなんでしょう。なお、演奏はウィリアム・ストロンバーグ&モスクワ交響楽団で、レーベルは最近映画音楽の再録(フィルム・ミュージック・クラシック・シリーズ)にも熱心なNaxosです。

 内容ですが、冒頭のメイン・タイトルからしてお馴染み「タラのテーマ(風と共に去りぬ)」と共通するようなスタイナーらしい朗々たるものです。スタイナーはオーストリア出身なので、この旋律も基本的にはウィーン風というか、早い話、ヨハン・シュトラウスのワルツの前奏部分みたいな感じなのですが、やや土臭く鄙びたところがあるのは映画のムードに合わせてのものなんでしょうか。ともあれアルバムにはこのテーマが、様々に形を変えて循環し、いかにも映画的な情景を彷彿とさせてくれます。

 また、全体に瑞々しい感じの曲が多く、オーケストレーションもあくまでもヴァイオリンの旋律をメインにしながらも、グロッケン等の打楽器類を多用して、立体的に仕上げているのも特徴かもしれません。同じウィーン出身のハリウッド草分けでもエーリッヒ・コルンゴールドが男性的で金管を全面に出したダイナミックさが特徴だとすると、スタイナーはそれとは対照的にヴァイオリンのメインにして、女性的に優美なところが頻繁に出すのが持ち味だと思いますが、このアルバムの調所で聴ける立体的なオーケストレーションで演出された瑞々しさなども特徴のひとつかもしれません。
 あと、印象的なのは8曲目で、お馴染みのアメリカ民謡「Oh! My Darling Clementain(雪山賛歌?)」のテーマが金管で登場するあたりですかね。スタイナーの師匠は、かのマーラーだということですが、その引用の仕方というか、唐突さがちょいマーラーを思わせると勘ぐれないでもないです。

 最後に音質ですが、このシリーズは通常のMaxos盤に比べ、低域が量感があり、マッシブな迫力も感じられるものが多いですが、このアルバムも例外ではなく、随所にデモンストレーション的HiFi効果が感じられるのが楽しいところです。
ちなみにこのディスクはSACDで、一応CD層の方も聴いてみましたが、こうした高域の打楽器を多用しているオーケストレーションだと、打楽器と弦楽器がキレイに分離してSACDの分解能の高さを痛感します。またステージの奥行きみたいなものもSACDは良く出ています。やっぱオーケストラ物でCDはSACDにかないません。
 なお、このアルバムDVD-Audio盤もあるようです。そっちの音はどうなんだろう???。

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JERRY GOLDSMITH / Star Trek - Nemesis (SACD)

2005年04月01日 00時08分11秒 | サウンドトラック
 スター・ウォーズの音楽といえば、音楽を担当するジョン・ウィリアムスは不動ですが、スタートレック・シリーズはジェリー・ゴールドスミスの他にも、2作目では「カーンの逆襲」では、かのジェームス・ホーナーがデビュー戦で担当してましたし、私は未聴ですが、デニス・マッカーシーという人もやっているようで、不動ということもないようですが、やはりジェリー・ゴールドスミスのイメージが強いですよね。

 なんでも10作目にあたるらしい、この作品では久々にジェリー・ゴールドスミスが担当しています。実はこれも私は映画そのものを観ていないのですが、とにかく音楽だけでも、充分に鑑賞に堪えうる素晴らしさだと思います。ゴールドスミスというと、「エイリアン」に代表されるような、不気味なほどの壮麗さ、ややアンダーなトーン、現代音楽的な音響美といった特徴があると思いますが、今回はそれが良質な形で横溢していて、とても聴きごたえます。

 まず注目されるのは、生オケとシンセの共演でしょう。両者を違和感なく共存させるのはけっこう至難の技だと思いますが、本作ではほぼ全曲に渡って、壮麗のオーケストラの中のワンポイント的、SE的に鏤められたシンセの音色が未来的、SF的なムードを盛り上げるのに一役買っていて極めて効果的。また、2曲目、6曲目で聴かれるバーナード・ハーマンを思わせるニューロティックというか、不気味なムードも今回は冴えに冴えてまして、このあたりゴールドスミスの非凡な音響センスの秀逸さがいかんなく発揮されているといったところでしょう。

 一方、ヒューマンな雰囲気をたたえた楽曲も不足はなく、3曲目,7曲目のロマンティックなムード、美しいストリングスに木管が絡む前半から次第に重厚な展開となり、お馴染み「スタートレックのテーマ」がちらっと顔を出す聴き応え充分な5曲目、あたりでは、映画中での人間ドラマを彷彿とさせる仕上がりといえましょう。あっ、そうそう「スタートレックのテーマ」といえば、きちんとした形で登場するのはアルバム・ラストのエンド・タイトルで、これはいかにも「それではまた次回」ってなムードでけっこう盛り上がります。

 あと、本作はSACDですが、音質はまさにSACDに相応しい、澄み切って広大な空間表現が魅力な名録音といえましょう。また、あまり出しゃばってはきませんが、シンセ音の鮮度感の高さもなかなかものです。
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The James Bond Collection

2005年03月20日 23時17分58秒 | サウンドトラック
 007シリーズのサントラといえば、最近ほぼ全作がボーナストラック入りでリマスター盤として再発され、根っからの007ファンの私は驚喜して聴きまくっている昨今なのだが、こちらはそれとは全く関係のない別のアルバムである。ニック・レーン指揮によるプラハ市立フィルハーモニー管弦楽団による演奏で、「ドクター・NO」から前作「ザ・ワールド・イズ・ノット・イナフ」までをサントラの聴き所をCD4枚組で楽しんでもらおうという趣向だ。
 このシリーズのベスト盤といえば、かつてオリジナルの主題歌のみを集めたものは数種類出ていたし、シリーズの有名どころをオケで演奏したアルバムもないではなかったが、聴いてみると、どうもオリジナルのスコアからかけ離れた金ぴかのケバいアレンジのものが多く、どうもサントラ・ファンとして満足できる代物にはお目にかかったためしがないのだが、こちらはそれなりに満足できる仕上がりだと思う。

 まずその理由として、オリジナル主題曲のオーケストラ版の演奏だけではなく、劇中のサントラとして聴き所をオリジナル・スコアにかなり忠実に再現し、それを小組曲風に各映画単位で割り振っているところがあげられる。特に「ドクター・NO」については、サントラ盤には劇中のオーケストラ演奏がほとんど収録されていないので、ニック・レーンが再現したこの組曲の存在は実に貴重だし、その他の作品についても、例えば「ゴールド・フィンガー」ならフォートノックスのシーン、「サンダーボール」「ロシア」ならあの007のセカンド・テーマといった具合に、あすこが聴きたい、ここは是非とりあげて欲しいと思うところは、各作品ともほぼ8割方押さえており、選曲面ではマニアでもかなり満足できるのだ。

 加えて音質の良さ、最近リマスター盤が出てかなり良い音質で楽しめるようになったとはいえ、初期のサントラ盤の貧弱な音質に我慢していたファンとしては、細部までクリアかつ広大なダイナミック・レンジのデジタル録音で聴くショーン・コネリー時代の名作の数々の場面は、まさに待望久しい出来事とさえいえよう。「二度死ぬ」でおそらく一番有名なロケットがスペクターに拿捕される場面の音楽やテーマ曲など、こうした理想的録音で聴くとバリーの巧緻で立体的オーケストレーションもオリジナルの数倍は映えようとというものである。

 もちろん、バランスやテンポ設定など「ちょっと違うんじゃねぇの」と思うところはないでもないし、バリー以外の人が担当した音楽については妙に冷遇されているところや、4枚組のボックスセットにしてはブックレットなしで安っぽい装丁である点なども含め、発売元のSilvaというレーベル(イタリア)の常とはいえ、やや企画にのみ頼って細部の仕上がりに雑なところがないではないから、かつて出たヒッチコック作品のアンソロジー同様、ファンから決して満点はもらえないだろうが、とりあえず75点くらいはあげられるのではないだろうか。

 そんな訳で、007シリーズのついては主題曲はベスト盤。スコアについてはこれを入手すればとりあえずシリーズの音楽の全貌を俯瞰することはできるだろう。そんな意味では便利なアルバムであり、企画ではある。このアルバムをきっかけにして、次はアメリカのVarese Sarabandeあたりで更に豪華なアルバムでも企画してもらいたものだ。(2003年9月13日)

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JOHN WILLIAMS / Superman The Movie

2005年03月17日 00時27分35秒 | サウンドトラック
 さすがにアメリカは映画大国だけあって、サントラ専門に発売しているレーベルがいくつもありますが、その中でもやはり大手といえばvarese sarabandeでしょうか。このレーベルの凄い点は、通常の新作のサントラの発売や名作の復刻はもちろんですが、元音源がみつからない作品や音が貧弱な作品のサントラ等、場合によっては比較的近年の作品まで再録音を様々な形でやってしまう点です。

 このアルバムもそうした一枚で、ターゲットになったのは、かの「スーパーマン」です。同レーベルでは歴代スーパーマン関係の音楽を集めた「Superman: The Ultimate Collection」というアンソロジーも出していますが、こちらは音楽をジョン・ウィリアムスが担当した1978年の作品のスコアを元にしたものです。この作品にはもちろん立派なオリジナル・サウンドトラック盤が存在する訳ですが、残念ながらあのアルバムは、メイン・タイトルが編集されていたり、肝心な曲が収録されていなかったりと、いろいろ不満があったものですから、そのあたりの欲求不満を解消すべく、完全版を目論んで再録音されたのがこれという訳です。

 この完全版で、なんといってもうれしかったのはファンが待望していたのがメインタイトルの完全版が実現したこと。映画ではファンファーレの後、デイリープラネット社を紹介するモノクロ映像と少年のナレーションが入って、こからそおもむろにメインタイトルに移行していった訳ですが、サントラに入っているヴァージョンや各種ポップス・オーケストラが演奏しているのは、この部分が短縮されているもので、このアルバムは購入して一聴した時は、「これだ、これだ」と大喜びしたものです。
 また、スーパーマンの地球の育て親ジョナサンの亡くなるシーンのしっとりとした音楽(これは続く「リービング・ホーム」と絶対続けて聴くべき)やロイス・レインが遭遇するヘリコプター事故の救出シーン(スーパーマンが初お目見えするシーンでもある)の、スリリングな音楽がサントラには収録されていなかったのはいかにも不可解でしたが、ここではきっちりとの演奏されていて、溜飲さがりまくりでした。
 おまけに、音質的にはオリジナルを完全に上回ったとしか思えない、ホールトーン豊かな優秀録音だった訳で(本家はややデッドで乾き気味な音だった)、わたし的にこれはもう完璧なアルバムでした。

 そんな訳で、サントラ・マニアの私にはvarese sarabandeというのは大変ありがたいレーベルです。ジョン・ウィリアムスではこれの他にも「ジョーズ」でお世話になりましたし、エーリッヒ・コルンゴールドやバーナード・ハーマンについては数知れず、他にも「エイリアン3部作」や「アレックス・ノース版2001年」などうれしくなるようなアルバムを沢山だしているのて、これからも注目したいレーベルのひとつです。


※ ちなみに「スーパーマン」のサントラは、2000年にライノから前述の不満点を全て解消した「本当に完全なサウンドトラック盤」が出ましたので、現在、varese sarabandeのスコア盤のアドバンテージは音質のみになってしまっています(涙)。
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Dave Grusin / The Cure(マイ・フレンド・フォーエバー)

2005年03月10日 17時28分54秒 | サウンドトラック
 これも380円という値段につられて購入したものです。

 デイブ・グルーシンは最近オーソドックスなジャズへ先祖返りしているようなところもありますが、映画音楽の方も年1本くらいの悠々たるペース平行して活動しているようで、この作品は1995年の同名映画を担当した時のものです。

 グルーシンの映画音楽といってもタイプはいろいろありますが、この作品は「天国から来たチャンピオン」「黄昏」とかああいった、心優しくて、ちょっと哀感のあって、雄大で....みたいな、「アメリカの誠実」路線ですね(伝わってるかいな-笑)。特にメイン・テーマとそのヴァリエーションが何回も現れる後半の楽曲は、オケとピアノ(もしくは木管)で演奏され、もう聴いているだけでも、いかにもグルーシンらしい心洗われるような感動があり、「映画の方もこのあたりで涙ぼろぼろだろうな....」と思わせるに十分な仕上がりです。
 また、おそらく映画では、ストーリーの「陽」の部分で使われているんでしょう。スティール・ギターやハーモニカをフィーチャーしたアメリカン・ルーツ・ミュージック的楽曲もいくつか納められていて、こちらはジャズ・フュージョンの名手達が演奏した極めて洗練された音楽で、前記音楽とは別の意味で聴き物となっています。

 さて、映画の方ですが、日本では「マイ・フレンド・フォーエバー」というタイトルで1995年頃、封切られた映画のようです。私は映画そのものは観ていませんが、「HIV感染者の少年と、彼を助けるべく治療法探しに奔走する少年の友情を描いたヒューマン・ドラマ」とのことで、ネットで観た方の感想など読んでみると、とにかく泣ける映画のようですし、クウォリティ的にも非常に良質なアメリカ映画の小品といった趣を感じるので、近いうちに是非DVDかなにかで観てみたいと思います。
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リヴィング・スキャット フィーチャリング 伊集加代

2005年03月07日 12時15分00秒 | サウンドトラック
 ネスカフェ・ゴールド・ブレンドのコマーシャルでもう四半世紀はお馴染みの、例のダバ・ダーって曲でスキャット・ヴォーカルをやっていたのが、伊集加代という人、CMやらジングル、バック・コーラス等で参加した曲は数千以上という典型的なスタジオ・ミュージシャンのようです。

 80年代のピチカート・ファイブあたりが出発点なんですかね。近年はモンド・ミュージックとかいって、60年代後半~70年代前半くらいのイタリア&フランスの映画音楽だとか、日本のTV&CMミュージックあたりの刹那的、享楽的な音楽が異常にもてはやされたりしていますが、これもその流れで復刻されたもので、いわば真打ち登場といったところでしょうか。

 1曲目は問題の?ネスカフェのCMでお馴染みの「めざめ」(っていうタイトルだったんだ-笑)ですが、フル・ヴァージョンで聴くとイメージがけっこう違いますね。どっちかというとスウィングル・シンガーズ風にクラシカルな感じです。なんでも、もっと古い録音で、1分くらいのショート・ヴァージョンというのもあるようですが、そっちも聴いてみたいもんです。なにしろ長い間、使われた曲なので、きっとその他にもいろいろなヴァージョンがあるんでしょう。全部収録されたアルバムなんてもそのうち出るのでは....?。

 残りの曲は当時のカバーを中心とした匿名性の高い企画物みたいなアルバムからで構成。大半がカバー作品で、アレンジはボサ・ノヴァ、ソウル、バカラックといろいろ。本場物の味付けをパクった、いわば「類似品のおもしろさ」というべきものてす。伊集加代のスキャットも、例えばダニエル・リカーリみたいなその道一筋の凄みとか美しさみたいなものではなく、「とりあえず、軽く歌ってみました」的な投げやりな軽快さが、逆に今の時代に受けているんでしょうね。
 
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バーナード・ハーマン/ヒッチコック映画音楽集 (SACD)

2005年03月07日 00時00分00秒 | サウンドトラック
 バーナード・ハーマンは映画音楽のみならず、あらゆる分野で私がもっとも好きな作曲家です。彼はオーソン・ウェルズの名作「市民ケーン」の音楽で映画音楽の分野にデビューした訳ですが、50年代以降は主にヒッチコックとのコンビで数々の名作を作っていったのは、映画に詳しい方なら既にご存じのことでしょう。
 ハーマンの作風は一口にいって、「第二次大戦後に遅れてやって来たロマン派の末裔」といったところですが、聴く者を不安な世界に誘うようなニューロティック(神経症的)な雰囲気や、ある種極限を行くようなロマンティックさを、独特なオーケストレーションで表現しているのに特徴がありました。
 
 さて、このアルバムはエサ・ペッカ・サロネンとロスアンジェルス・フィルという当代一流のクラシック・コンビがハーマンの書いたヒッチコック作品を中心に演奏したもので、こうしたアルバムが出るところをみると、ハーマンの作品も単に映画音楽という枠を超えて、古典音楽となりつつあることを感じさせます。
 選曲されたのは、「知りすぎていた男」「サイコ」「マーニー」「北北西に進路をとれ」「めまい」「引き裂かれたカーテン」といったヒッチコックの名作群の他、トリュフォーの「華氏451度」とスコセッシの「タクシー・ドライバー」なども選ばれており、さながらハーマンズ・グレイテスト・ヒッツといった様相を呈しています。ハーマンの入門にはぴったりの内容といえるでしょう。しかも、「知りすぎていた男」「引き裂かれたカーテン」については、ほとんど世界初録音といってもいいものであり、マニアにも見逃せない内容となっているあたり心憎いものがあります。

 演奏については、オリジナル・サウンド・トラックの濃厚な趣は、時代的に望むべくもありませんが、おそらくサロネンはハーマンのことが好きなんでしょう、本業の分野でも偏愛しているストラヴィンスキー同様、テンポもバランスも極めて妥当、キレのあるリズム、すっきりとした表情でスムースで流す一方、細部をおろそかにしない端正さも伺わせる解釈は、作曲者に対する愛情を感じさせます。また、ロス・フィルはいわばハリウッドのご当地オケだけあって、華やいだムードと優秀な機動力はこれらの映画音楽にぴったりだと思います。

 なお、本作品はSACDでも出ているので、CDと比べてみましたが、元音源はDSDでなく、マルチビット録音のようですから、理屈でいえばSACDの優位性はそれほどでもないハズなのですが、やはりこうした大規模なオーケストラ物だと、まるで天井が高くなったかのように聴こえるホールの残響、各楽器、特に弦楽器群の分離、そして滑らかな音の質感等といったいくつかの点で、CDというメディアでは実現できない美質が満喫できます。
 
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ジョン・バリー/フォロー・ミー

2005年03月06日 23時51分08秒 | サウンドトラック
 「落ちた偶像」「第三の男」の名匠、キャロル・リード最後の作品。確か70年年代のごくごくはじめ頃の作品だったと思います。主演はミア・ファーロウとトポルで、お話はこういうところに文章として書いてしまうと、なんかアホみたいな筋書きの「夫婦仲の復活劇」でして、その薄味さ故に「あのキャロル・リードも、もうよれよれだね」とか当時は酷評されたようですが、そのファンタジックさ故に、個人的には大好きな映画です。

 僕はこれをTVでしか観ていないんですど、最初の時より、2回目、3回目の方が良くって、多分、3回目くらいで「オレ的名画」に定着した記憶があります。この作品、ミア・ファーロウというエキセントリックなキャラあってこその設定、筋という気もしますが、ユーモラスなトポルが良かったです。とにかく、ふたりのおかげで、おかしな尾行劇もロンドンの風景も、ファンタスティックな物語へと昇華したと思います。

 あと、極めつきなのが、その音楽。007のジョン・バリーが担当した訳ですが、あのさざ波みたいな前奏と、コーラス・テーマを聴くと、それだけで思わず涙ぐんでしまいそうなリリカルな名曲で、サントラでも大半の曲がこれのヴァリエーションで構成されていたような記憶があります。ジョン・バリーといったら、なんといっても007が有名ですけど、基本的にはこういうリリカルな曲の方が性に合っていたんじゃないですかね。

 ちなみに写真は、"WALKABOUT"という作品と2in1でCD化された時のものです。これを買い逃したのは痛恨の一語ですが(笑)、早いところ、どこかで単独のフル・アルバムとしてCD化してくれないもんでしょうか。とりあえず、ん年ぶりにレコードでもひっぱりだすとしますか。


PS:それにしても、今時こんな映画作ったら、どこぞのうさんくさい人権団体が出てきて、「ストーカーを奨励してる」だの「個人の秘密が....」なんぞと、興ざめなクレームを出してきたりするんだろうなぁ。(苦笑)
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モートン・ゴールド/レコード・コンサート

2005年02月28日 00時50分58秒 | サウンドトラック
 もう10年近く前になりますが、パソ通の音楽や映画関係のフォーラムで良く話題になったネタに、「日曜洋画劇場の最後で聴こえる番組のエンドタイトルの曲は何?。」ってのがあって、あの話題が繰り返しいろいろなところで出る度に、あの番組の影響力みたいなものを痛感したものです。

 で、このネタ、よくわからないうちは、やれラフマニノフだ、いやマックス・スタイナーだ、そうではなくて神津善行だ、とか諸説ふんぷんだったんですけど(私はラフマニノフだと思っていたクチ-笑)、どうやら原曲がコール・ポーターの「ソー・イン・ラブ」ってことが判明すると、お次は当然「んじゃぁ、誰が演奏してんのさ?」ってことになり、これがなかなか分からなかったんですね。ひょっとすると、周知の事実だったかもしれないけれど、私があの演奏をアメリカのモートン・グールドが編曲・演奏しているものだと知ったのは、あれからずっと下って1年ちょい前くらいのことです。

 ある方の連絡で、オークションで復刻盤を販売していることを知り、勇んで購入しました。全部で8曲入っていたアルバムですが、他の曲はどうでも良く、お目当ての「ソー・イン・ラブ」をまっさきに聴いたものです。記憶によれば、冒頭はマンシーニの「酒とバラの日々」みたいな感じで、トロンボーンかなにかの金管で始まったように思っていたのですが、低弦だったんですね。で、あの鬱蒼としたストリングスが入ってくると、もう感無量。

 あの頃、日曜の夜っていうと、なんか、そこはかとなくブルーな感じで、この「ソー・イン・ラブ」が聴こえてくるころになると、「あ~あ、もう日曜も終わり、明日から仕事(学校)かぁ」って感じで、よく鬱な気分になったもんですけど、なんかそれが見事に甦りました。ついでに、かの番組で観た、「ガス灯」「ベニスに死す」「シャレード」「めまい」といった名画の数々まで甦ってきてしまい、しばし遠い目になったり、センチな気分になったりもしたものです。

 いや、実は今も聴いてるんですけどね。本当にこの曲、あの気分にマッチしてます。日曜洋画劇場を頻繁に観ていた頃から、もう四半世紀は過ぎようっていうのに、日曜の夜の鬱な気分は今もあまり変わりませんね(笑)。あぁ、また一週間仕事かぁ....。


◆ モートン・グールド編曲の《ソー・イン・ラヴ》 ◆
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ヘンリー・マンシーニ/アルティメット・ピンク・パンサー

2005年02月07日 22時12分09秒 | サウンドトラック
 ピーター・セラーズ主演、ブレーク・エドワーズ監督、音楽はヘンリー・マンシーニという布陣で、計6本(もあったんですね)作られた、ご存じ「ピンク・パンサー」シリーズの音楽からベスト選曲で構成されたコンピレーションです。
 ブレーク・エドワーズとマンシーニは相性が良いらしく、これらの作品の他にも、あまりといえばあまりにも有名な「酒とバラの日々」とか「ティファニーで朝食を」とかあるワケですが、私はエドワーズの監督作品というと、あのスラップスティック風味というか騒々しいドタバタ感がきらいで、どれもほとんど楽しめためしがないという人間なので、「ピンク・パンサー」シリーズもたいていは見ているはずですが、ほとんど記憶にありません。

 そんなワケなので、このシリーズ、マンシーニの音楽は大好きなのですが、シリーズ1枚、1枚をそろえる気もなれなかったので(しばらく前に出たマンシーニ・ボックスでも2作目以降の作品は冷遇されてましたし)、こういうアルバムは私にとっては朗報です。

 特にうれしかったのは、もう20年ぶりにくらいなると思いますが、久々に「ピンク・パンサー3のテーマ」が聴けたこと。例の「ピンク・パンサーのテーマ」にのって、パロディ的に「ヒッチコック劇場」だの「雨に歌えば」、「サウンド・オブ・ミュージック」あたりが出てくるのが楽しくて、パロディ好きの私としては昔から大好きな曲だったんですが、やっと聴くことができました。ついでにコーラスをフィーチャーして、これぞマンシーニ節という感じの、ビューティフルな「偉大な贈り物」を聴いたのも、20年ぶりくらいになると思います。当時はマンシーニがアコピでなくエレピを弾いているのに、モダンが印象を持ったものですが、今、聴くとフュージョン全盛期だった時代のムードを感じさせました。同じく「アンティル・ユー・ラブ・ミー」も同様。「4」の「香港の花火」や「クルーゾー警部のテーマ」あたりの曲も、「そういやぁ、こんな曲もあったよなぁ」って、懐かしかったです。できれば、ディスコのリズムであのテーマを痛快に演奏した「ピンク・パンサー4のテーマ」も聴きたかったところですが、まぁ、これだけ聴かせてくれれば、贅沢はいえません。


 それにしても、マンシーニって奥が深いです。僕は映画マニアだった、70~80年代はもっぱらイタリア的旋律美みたいな評価が定着していましたし、90年代は「ビーターガン」等に代表されるジャジーで、ダイナミックな音楽がもっぱら再評価されていたような気がします。一方、現在はというと、歴代のマンシーニのサントラ盤では一番地味なところに置かれていた、シングル・トーンのピアノ、優雅なストリングスをフィーチャーしたカクテル風におしゃれな諸曲がウケでいるみたいです。まっ、それだけ音楽の懐が広いということなんでしょうけど、そのうち「ハタリ」みたいなマンシーニの行進曲調のものが異常にウケまくったりする時代が来るのかなと思ったりすると楽しいです。

PS:マンシーニで個人的に一番再発してもらいたいのは、ジャクリーン・ビセットが主演した「シェフ殿、ご用心」だなぁ。わくわくするようなテーマと「ナターシャのテーマ」がもう一度聴きたいっす。
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「私を愛したスパイ」とカーリー・サイモン

2005年02月01日 00時10分46秒 | サウンドトラック
 007シリーズは現在も5代目ピアーズ・プロスナンを擁して続いている(その彼もそろそろ終わりだろうか?)、映画史上でも最も長寿なシリーズだと思いますが、その中でも僕が好きなのが「私を愛したスパイ」という第10作目。

 とにかく、観ていてこのくらい豪華かつうれしくなる007映画もなかったという感じでなんですよね。冒頭のスキー・シーンと水中を駆け抜けるロータスエスプリのカッコ良さに圧倒され、随所に現れるパロディににんまりし、パーバラ・バックのゴージャズな美しさにはほれぼれする。ついでにオーラスの水中要塞の場面は、不評をかこった「二度死ぬ」の阿蘇山での戦闘の復習戦ってな感じで、「おぉ、そうだろう、そうだろう、あれは早すぎたのだ」と「私だけが知っている」的なマニアックなうれしさまであって、観終わったあと、上出来のグレーテスト・ヒット・アルバムでも聴いた気分で、満腹感もひとしおだったんです。

 で、この映画で、もうひとつ忘れられないのが主題歌。カーリー・サイモンが歌う「ノーバディ・ダズ・イット・ベター」がすごく良かったんだなぁ。007シリーズの主題歌というと、ダイナミックでやや泥臭い歌い上げパターンが多かったんだけど、マービン・ハムリッシュのゴスペルを思い切り洗練させたようなメロディーも意外なら、カーリー・サイモンのソフトでウォームに歌声も意外、個人的には衝撃的ですらありましたね。思えば、007シリーズの主題歌もここで一気に流れが変わったんじゃないでしょうか。シリーズ中の名曲の1つ、「オール・タイム・ハイ」なども、この曲があってこその曲だったような気がします。

 ところで、このカーリー・サイモンって人、私にとってはなかなか縁がない人で、前述の通り「ノーバディ・ダズ・イット・ベター」だけはもの凄く好きなんですけど、他のアルバムはほんど聴いたことがないんですよね。とりあえず、彼女はこの10年くらい、時折出すスタンダード・アルバムだけは、どういうわけか購入しているんですけど、どうもオリジナル・アルバムにはなかなか手がでないんです。声や雰囲気は大好きなんですけどね。どうしてなんだろう?。「ノーバディ・ダズ・イット・ベター」を聴く度に、今度こそオリジナル・アルバムを聴いてやろう....って必ず思うんですよね。えぇ、今もそうなんですけど(笑)。
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