昨年、法務省(川上陽子法相)は7月にオウム真理教幹部ら13人に対して二回に分けて一挙に死刑を執行しました。
《大量処刑》とも言うべきこれまでに類をみない死刑執行であり、死刑に賛成であるか反対であるかを問わず、日本には「死刑」という制度が存在しているのだという当たり前の事実の重さを多くの市民があらためて実感したのではないでせうか。GGIはこれまでの死刑執行の時とは異なる何か重苦しい空気がとつぜんあたり一面に覆ったような気がいたしました。多くの市市民にとってオウム関係者の大量執行は衝撃的であったと言ってよいでありませう。
このためでありませうか、この大量執行の後、死刑に関する世論に変化が現れています。
内閣府は5年に1度、死刑制度について世論調査をしていますが、最近の調査では各回ともに、8割程度の人々が制度を「やむを得ない」と答えており、たとえば最新の2014年調査では死刑に賛成の割合が80.3 %に達していました。大半の国民が死刑に賛成あるいはやむを得ないと考えていることになります。
ところが、オウム関係者の大量執行が行われた翌月の8月14日~28日に朝日新聞が行った調査では、これまでの内閣府の調査とは少々異なった結果が現れています。調査方法や調査対象の人数など調査の条件が内閣府による調査とは異なっているものと考えられますので、この二つの調査結果を単純に比較することはできないのですが、そのことを差し引いて考えても、死刑に関する市民の考え方に、オウム関係者の大量執行の後に何らかの変化が現れているのではないかとおもわれます。
朝日の調査結果は以下のとおりです(回答者総数2051人)。
あなたは、日本に死刑という刑罰が必要だと思いますか?
•絶対にあったほうがよい977票 47.6%
•どちらかといえば、あったほうがよい237票 11.6%
•どちらともいえない61票 3.0%
•どちらかといえば、廃止すべきだ200票 9.8%
•絶対に廃止すべきだ 576票 28.1%
死刑に賛成の人とどちらかといえば賛成の人をあわせると59.2%、死刑を廃止すべきとする人とどちらかといえば廃止すべきという人をあわせると、37.9%です。オウム関係者の大量執行後でも依然として死刑に賛成している市民は全体の3分の2近くを占めており、世論調査では死刑が支持されていることに変わりはありません。
また、昨年7月29日、30日に毎日新聞が行った調査では死刑賛成は58%、昨年8月5日にNHKが行った調査では賛成は58%であったとされています
しかし、内閣府による調査では死刑に賛成が80%台でした。ですから、先に述べましたように調査の条件が異なっていますから、どの程度実際に変化が現れているかを正確に評価することは容易でないのですが、これらの調査結果から何らかの有意な変化が、死刑に賛成する市民が減少し廃止を求める市民が増えるという変化がオウム関係者の大量執行を受けて現れているのは明らかではないかと考えられます。
これまでに類を見ない「大量処刑」の報に接して、死刑に疑問を感じる市民、死刑は廃止すべきだと感じる市民が増えているのではないかと考えられます。少なくともオウム関係者に対する死刑執行を機会に死刑問題への関心がたかまりつつあると言えるのではないでせうか。
昨年はオウム関係者に対する執行も含めて計15人が執行され、一時中断されていた執行が再開された1993年以降では2008年と並んで最多の執行件数となりました。
一方、今年は天皇の代替わりの年、「慶賀」すべきとされる今年、天皇家の宗教である神道は「死」を「穢れ」として忌み嫌いますから、法務省は死刑執行を見合わせるでありませう。また来年は、これまた国民的慶賀行事とされるオリンピック開催の年でありますから、オリンピックを控えての、あるいは開催中の、死刑執行となれば、いまや世界の3分の2の国々(142カ国)が死刑を廃止している国際社会から非難を浴びかねません。このため来年は少なくともオリンピックが終了するまでは、法務省を執行を見合わせるであろうというのがGGIの希望的観測です。
死刑に反対するGGIとしましては、この一年半以上におよぶ死刑執行一時停止という絶好の空白期間を機会に、日本が何とかして死刑廃止に向けての第一歩を踏み出してほしいと願っています。
死刑問題に関しては弁護士さんの間でも意見は様々です。死刑に賛成あるいは死刑廃止に躊躇する弁護士さんも珍しくありません。弁護士さんだからと言って死刑に反対とは限らないのです。すこし以前のことですが、弁護士さんたちが何人も集まっている場で、立ち話でGGIが死刑は廃止すべきであると口にしましたら、「自分は死刑に賛成だ、必要だ」と自信を持って明言する弁護さんがいましたので驚いたことがります・・・
しかしながら、日本弁護士連合会は2016年の「人権擁護大会」で、2020年までに死刑制度の廃止を求める宣言を採択しています。2020年にはオリンピックだけではなく死刑廃止を日本に勧告している国連による刑事司法分野の最大規模の会議、「犯罪防止刑事司法会議」が京都市で開催されますので、日弁連は2020年に目標を定めているのです。
そしてわが湖国の弁護士会、滋賀弁護士会はこの日弁連の宣言に先立ち、単位弁護士会(各都道府県単位の弁護士会)のなかで最初に死刑廃止を決議しているのです!
こうした状況の中で、滋賀弁護士会が主催する(共催:日弁連)「死刑廃止の実現を考える日」と題されたシンポジウムが来る3月16日(土)午後2時から大津市内の公共施設「ピアザ淡海」で行われます(無料、予約不要、手話通訳あり、託児あり)。
滋賀弁護士会による、死刑廃止に向けての取り組みについての報告が行われた後、基調講演が行われます。講演者は弁護士の安田好弘氏(東京第二弁護士会)です。演題は「死刑制度の問題点~オウム関係者の大量執行を踏まえて」です。
安田弁護士はオウム真理教裁判で教祖の浅原彰晃の主任弁護人を務め、また和歌山毒カレー事件、光市母子殺害事件など数多くの死刑裁判で弁護を担当されてきました。新宿西口バス放火殺人事件では、死刑の求刑に対して無期懲役の判決を得ています。著書に「死刑弁護人、生きるという権利」(講談社)などがあります。
GGIは知人らと協力して数年前に安田氏の活動を追ったドキュメンタリー「死刑弁護人」(東海テレビ制作)の上映会を行ったことがあるのですが、この映画のなかで安田氏は次のように述べています
最高裁の弁護人は死刑執行まで背負う。遺体を引き取き、葬式を出す
《付き合っている人やで、「ほな、さいなら」とはいかんやないか》
死刑問題に関心をお持ちの方、賛成であっても反対であっても、よろしければ滋賀弁護士会のシンポジウムに足をお運びくださるよう、滋賀弁護士会に代わってお願い申し上げます。
今日の写真は滋賀弁護士会によるシンポジウムのチラシを撮ったものです。クリックしてご覧になってください
なもあみだぶ・なもあみだぶ・なもあみだぶ・・・
グッドナイト・グッドラック!
《大量処刑》とも言うべきこれまでに類をみない死刑執行であり、死刑に賛成であるか反対であるかを問わず、日本には「死刑」という制度が存在しているのだという当たり前の事実の重さを多くの市民があらためて実感したのではないでせうか。GGIはこれまでの死刑執行の時とは異なる何か重苦しい空気がとつぜんあたり一面に覆ったような気がいたしました。多くの市市民にとってオウム関係者の大量執行は衝撃的であったと言ってよいでありませう。
このためでありませうか、この大量執行の後、死刑に関する世論に変化が現れています。
内閣府は5年に1度、死刑制度について世論調査をしていますが、最近の調査では各回ともに、8割程度の人々が制度を「やむを得ない」と答えており、たとえば最新の2014年調査では死刑に賛成の割合が80.3 %に達していました。大半の国民が死刑に賛成あるいはやむを得ないと考えていることになります。
ところが、オウム関係者の大量執行が行われた翌月の8月14日~28日に朝日新聞が行った調査では、これまでの内閣府の調査とは少々異なった結果が現れています。調査方法や調査対象の人数など調査の条件が内閣府による調査とは異なっているものと考えられますので、この二つの調査結果を単純に比較することはできないのですが、そのことを差し引いて考えても、死刑に関する市民の考え方に、オウム関係者の大量執行の後に何らかの変化が現れているのではないかとおもわれます。
朝日の調査結果は以下のとおりです(回答者総数2051人)。
あなたは、日本に死刑という刑罰が必要だと思いますか?
•絶対にあったほうがよい977票 47.6%
•どちらかといえば、あったほうがよい237票 11.6%
•どちらともいえない61票 3.0%
•どちらかといえば、廃止すべきだ200票 9.8%
•絶対に廃止すべきだ 576票 28.1%
死刑に賛成の人とどちらかといえば賛成の人をあわせると59.2%、死刑を廃止すべきとする人とどちらかといえば廃止すべきという人をあわせると、37.9%です。オウム関係者の大量執行後でも依然として死刑に賛成している市民は全体の3分の2近くを占めており、世論調査では死刑が支持されていることに変わりはありません。
また、昨年7月29日、30日に毎日新聞が行った調査では死刑賛成は58%、昨年8月5日にNHKが行った調査では賛成は58%であったとされています
しかし、内閣府による調査では死刑に賛成が80%台でした。ですから、先に述べましたように調査の条件が異なっていますから、どの程度実際に変化が現れているかを正確に評価することは容易でないのですが、これらの調査結果から何らかの有意な変化が、死刑に賛成する市民が減少し廃止を求める市民が増えるという変化がオウム関係者の大量執行を受けて現れているのは明らかではないかと考えられます。
これまでに類を見ない「大量処刑」の報に接して、死刑に疑問を感じる市民、死刑は廃止すべきだと感じる市民が増えているのではないかと考えられます。少なくともオウム関係者に対する死刑執行を機会に死刑問題への関心がたかまりつつあると言えるのではないでせうか。
昨年はオウム関係者に対する執行も含めて計15人が執行され、一時中断されていた執行が再開された1993年以降では2008年と並んで最多の執行件数となりました。
一方、今年は天皇の代替わりの年、「慶賀」すべきとされる今年、天皇家の宗教である神道は「死」を「穢れ」として忌み嫌いますから、法務省は死刑執行を見合わせるでありませう。また来年は、これまた国民的慶賀行事とされるオリンピック開催の年でありますから、オリンピックを控えての、あるいは開催中の、死刑執行となれば、いまや世界の3分の2の国々(142カ国)が死刑を廃止している国際社会から非難を浴びかねません。このため来年は少なくともオリンピックが終了するまでは、法務省を執行を見合わせるであろうというのがGGIの希望的観測です。
死刑に反対するGGIとしましては、この一年半以上におよぶ死刑執行一時停止という絶好の空白期間を機会に、日本が何とかして死刑廃止に向けての第一歩を踏み出してほしいと願っています。
死刑問題に関しては弁護士さんの間でも意見は様々です。死刑に賛成あるいは死刑廃止に躊躇する弁護士さんも珍しくありません。弁護士さんだからと言って死刑に反対とは限らないのです。すこし以前のことですが、弁護士さんたちが何人も集まっている場で、立ち話でGGIが死刑は廃止すべきであると口にしましたら、「自分は死刑に賛成だ、必要だ」と自信を持って明言する弁護さんがいましたので驚いたことがります・・・
しかしながら、日本弁護士連合会は2016年の「人権擁護大会」で、2020年までに死刑制度の廃止を求める宣言を採択しています。2020年にはオリンピックだけではなく死刑廃止を日本に勧告している国連による刑事司法分野の最大規模の会議、「犯罪防止刑事司法会議」が京都市で開催されますので、日弁連は2020年に目標を定めているのです。
そしてわが湖国の弁護士会、滋賀弁護士会はこの日弁連の宣言に先立ち、単位弁護士会(各都道府県単位の弁護士会)のなかで最初に死刑廃止を決議しているのです!
こうした状況の中で、滋賀弁護士会が主催する(共催:日弁連)「死刑廃止の実現を考える日」と題されたシンポジウムが来る3月16日(土)午後2時から大津市内の公共施設「ピアザ淡海」で行われます(無料、予約不要、手話通訳あり、託児あり)。
滋賀弁護士会による、死刑廃止に向けての取り組みについての報告が行われた後、基調講演が行われます。講演者は弁護士の安田好弘氏(東京第二弁護士会)です。演題は「死刑制度の問題点~オウム関係者の大量執行を踏まえて」です。
安田弁護士はオウム真理教裁判で教祖の浅原彰晃の主任弁護人を務め、また和歌山毒カレー事件、光市母子殺害事件など数多くの死刑裁判で弁護を担当されてきました。新宿西口バス放火殺人事件では、死刑の求刑に対して無期懲役の判決を得ています。著書に「死刑弁護人、生きるという権利」(講談社)などがあります。
GGIは知人らと協力して数年前に安田氏の活動を追ったドキュメンタリー「死刑弁護人」(東海テレビ制作)の上映会を行ったことがあるのですが、この映画のなかで安田氏は次のように述べています
最高裁の弁護人は死刑執行まで背負う。遺体を引き取き、葬式を出す
《付き合っている人やで、「ほな、さいなら」とはいかんやないか》
死刑問題に関心をお持ちの方、賛成であっても反対であっても、よろしければ滋賀弁護士会のシンポジウムに足をお運びくださるよう、滋賀弁護士会に代わってお願い申し上げます。
今日の写真は滋賀弁護士会によるシンポジウムのチラシを撮ったものです。クリックしてご覧になってください
なもあみだぶ・なもあみだぶ・なもあみだぶ・・・
グッドナイト・グッドラック!