つつじの書・・

霧島つつじが好きです。
のんびりと過ごしています。
日々の暮らしを、少しずつ書いています。

エッセイ:百日紅

2010-10-09 11:45:39 | エッセイ
 家の前を掃く箒の音に目が覚めた。時計を見るとまだ5時前だ。
起上がってそっと見ると、お向かいの奥さんが柔らかい箒を使い、此方
に向かって百日紅の花びらを掃きとばしている、見てはいけないものを
見てしまった。

 近くの家に大きな百日紅があり、夏になると真っ赤な花をつけ、涼し
い木蔭をつくる。家を建て替えたとき、家にも欲しいと迷わずに植えた。
次の夏、白っぽい木肌に可愛いい花をつけた。

 だが、お転婆娘のようなピンクの花に手を焼きだした。一日中花びら
が落ちる。特に、雨が降った後や、風が吹いた後は遠くにまで飛んでい
き、「わが家の娘です」と言うことが直ぐに分かる。
 秋に、思い切り枝を落とすと、次の年、生命の危機とばかりに、長い
枝を伸ばして大きな花房をつける。咲き始めはそそと、少しの花びらを
落とすが、そのうちに思いっきり何時ものやんちゃが始まる。
「今年は百日紅を切る」と、夫に宣言した。「可愛そうだよ、俺が掃除を
するから」と言っていたが、3日坊主で終わった。

 友人にその話をしたら、「うちもね、何年も花をつけないので、もう切
ろうと相談していたら、その年から咲き出したの、木はわかるのよ」と言
った。私の中にも迷いがあるから、夫や、友人達に話して、反応を見て
いるのかもしれない。
 でも、一日中箒を手放さないお向かいの奥さんの事を思うと、やっぱり
切った方がいい、花が終わったら切ろう。掃除はきらいじゃないけど、
迷惑がられるのは嫌だ。

 今年の夏はとても暑い。植木の根元が乾いてポコポコしている。朝夕、
根元の土を確かめながら水遣りをしているが、秋になったら切られてし
まう百日紅には、たっぷりと水をあげたほうがいいのか、生命力を抑え
てあげた方がいいのか迷っている。

  課題【絶つ・結ぶ】
  先生の講評     植木に託した人の心の機微が繊細          

      


 【絶つ・結ぶ】   2010・9
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