エッセイ 除夜の鐘 2016年2月12日
大晦日は、近くのお寺に除夜の鐘を撞きにいく。
普段は暗い山門も、今夜は灯りが燈り厳かに見える。
石畳の列に並んでいるうちに、足元からジンジンと寒気が襲う。
着ぶくれた恰好は恥ずかしいが重装備をしてきて良かった。
鐘楼の前は檀家の人たちが準備をしてその時を待っている。
湯気が見える、甘酒を用意しているらしい。
法被を着た若い檀家さんが、大きなお盆に載せた甘酒を運んできた。
ここは男性たちで作っているからだろうか、いつもどろどろの濃い甘酒だ。
読経の後、鐘が鳴り始めた。
最初は僧侶、檀家、そして一般の人が撞く。
行列を見ながら5人程が鐘楼に上がる。
5本の綱をそれぞれが持ち合図に沿って大きく引き、打つ。
鐘の余韻に願い事を唱える、今年も終わった。
境内には長い行列ができていた。
TVの紅白歌合戦を観た人たちが急に増えたからだ。
街道をはさんだ神明宮は、初詣での人達で溢れていた、若者が多い。
それ程大きな神社ではないが七五三のお詣りやお払いをする。
鳥居をくぐり、茅の輪を八の字に回る所から明るくなる。
参道の屋台から いい匂いがする。
今は商売人とは別に、ボーイスカートや素人の団体も多い。
焼そばやたこ焼きを作る手さばきなどを見ながら、長い行列は進む。
顔見知りの人もいる。夫は少年野球のコーチをしていたことがある。
時々、「あっ 〇〇さんだ」と若者に声をかけられる。
随分前、5~6人のグループが酔いつぶれた一人を担いで歩いてきた。
行列の近くで崩れ、座り込んで介抱している。
中に息子もいた。
夫は、車で送っていくようにとお金を渡した。
息子達もどこかで、誰かの世話になっている筈だ。
境内の真ん中にある炉に薪がくばられ、大きな炎が上がる。
お詣りを済ませた人は甘酒をご馳走になり新年を祝う。
地元の人の年越しの場所だ。
つつじのつぶやき・・・・2015年の大晦日の話です。
何の憂いもない日常が早く来ますように!