つつじの書・・

霧島つつじが好きです。
のんびりと過ごしています。
日々の暮らしを、少しずつ書いています。

エッセイ 美登利寿司

2022-07-28 14:52:08 | 楽しい仲間
                                 

          先生の講評…短編小説の趣がある。おもしろい。
                   社長のことをもう少し書きたい。
                   風情、口ぐせ、仕事ぶり、社長宅・・・。



    エッセイ 美登利寿司 課題【作る・こわす】2019.5.24

  春になると誰からともなく声がかかり、小田急線の梅が丘に集まる。 
  梅が丘は元の勤め先の社長が住んでおられた所。 
  静かな住宅街にあるお宅には何度もお邪魔した。 
  思い出もあるが、静かで集まりやすい。
  改札口に十一時集合だが、十分前に行っても殆どが集まっている。
   
  昼ごはんには少し早いが、ネタの割には安いと評判の
  「美登利寿司」に行く。
  二階のテーブル席に案内された。
  メニューを見ても、なかなか決まらない。
  豪華にいこうと言う人と、そんなに食べられないよと言う人がいて可笑しい。
  でも、やっぱり全員同じ物に決めた。
  注文が決まるとやっと何時もの顔になる。 
  そして始まる。
  昨日の話、今朝の話、病気の話、孫自慢、まだ年金の話は出ない。
  独身時代に勤めた会社の友人は、今、姉妹のように遠慮がなく、
  何でも話し、お互いを思いやる。
     こんな風に十年以上が経つ。
  握りたての寿司が二つずつ運ばれてくる。最後にイカが残った。
  誰かが言った。
  「あの頃、会社の帰り、良くお寿司をご馳走になったよね」と。
 
  勤めていた会社は小さな商事会社だった。
  色の黒いぶっきらぼうな社長はまだ若く、決算は毎回黒字で
  活気があった。
  残業が続くと、よくお寿司をご馳走してくれた。
  井の頭線の渋谷駅近くは焼き鳥やの煙と、餃子の匂いがした。
  そんな中を抜け、パチンコ屋の騒音が聞こえる店の二階の
  カウンターに座ると、      
  「何でも好きなものを注文していいよ」と言う。
  「ウニ」「トロ」「イクラ」等、多分自分では注文しないと思うものも
  それぞれが言う。
  「私はトロが好き」と、何度も頼む天真爛漫な人がいた。
  いつも美味しいものを食べているのだろうと思い、羨ましかった。
  私はご馳走になることに慣れなかった。
  眼の上にある木札の値段を見ながら、「イカを下さい」なんて
  縮こまったことを言っていた。




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行ってらっしやい!

2022-07-26 13:50:28 | 楽しい仲間


土曜日に、コロナワクチン、4回目をしました。
腹痛、腕の痛み、微熱が2日続きました。

月曜日の朝はポストの足元に咲くジニア「行ってらっっしゃい」
私は布団の中から、「行ってらっしゃい」。
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エッセイ 黒豆煮豆

2022-07-16 18:12:58 | 楽しい仲間



                                   先生の講評・・・黒豆の突飛な景品。伏線が聞いている。祖母と孫の心の交流だ。


                               黒豆煮豆 課題【夏・自由課題】2019.7.12   

               週一回配達される生協で、「黒豆煮豆」を買っている。
               お節の時に出てくる黒豆と似ている。
               小さなパックに入っているので四、五回で食べてしまう。
               真っ黒な豆、グラニュー糖で煮たのかすっきりとした甘さだ。
               ヨーグルトのトッピングにも良いらしいが、未だ試していない。
               おかずが淋しい時に出すようにしているが、甘党の夫がアッと思う間もなく摘まんでしまう。
               それが何時も不満だった。
                                長い間我慢をしていたが、ついに宣戦布告をした。
               「半分残してよ」
               「あっ、悪い」と言いながら箸を止めるが、又同じような事がある。
               「はい、三っつ食べたから、私も三っつ食べよう」と小さな豆を摘まむ。
               何時迄も争いが終わらないので、二つの小皿に分けて出す様にした。

               六歳の孫が泊まった夜、得意だと言うトランプの「ババ抜き」をした。
               勝ったらご褒美を出そうと言う夫に、「何? 何?」と、肩に手をかけて夫の顔を覗き込む。
               「お金は駄目よ」と私。夫の考えることは分っている。
               「お祖母ちゃんが駄目だって」。
               急にご褒美が、思い浮かばない。
               私が子供の時は、蜜柑や干し柿が賞品だった。
               私が「黒豆一つ」と言うと、息子も孫も怪訝な顔をする。
                       すごく美味しい、黒豆を一つ食べる」、夫もそれはいいと大賛成。
               冷蔵庫から黒豆を出して、小さなカットグラスに移す。
               何か分からないご褒美につられて、「よっしゃ―、お祖母ちゃん覚悟して」。
               息子と孫は何時もしているのか、大きな掛け声で燥ぎだす。
               孫は真剣になるが、最後の所で表情が顔に出る。
               夫は負けてやるが、私は真剣勝負。
               私と長男が、大仰に口に入れると悔しがる。
               何回かの後にやっと食べられたが、変な顔をしている。
               それでも勝負に勝ちたいと、興奮し盛り上がった。

               何日か後、「お祖母ちゃん、今度は絶対勝つからね」と、電話で言ってきた。
               「待っているよ、特別に美味しい黒豆を用意しておくからね」




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