独身時代 課題【問い・答え】2016.5.27
独身時代、女性だけのアパートに住んでいた。
大家さんは粋な感じの、若しかしたら若い時水商売もしてきた感じだった。
綺麗に使ってくれる女性に限ったとか。
一階は大家さんと一部屋、二階は三部屋だった。
新しいアパートだったが何もかもこじんまりとして、部屋は四畳半、勝手は半畳、そこに流しとガス台があるだけ。
洗濯はどうしたのかと考えたら、玄関脇の植え込みの所に流しがあったのを思い出した。
私の部屋は二階の真ん中だった。
月賦で買ったシンガーミシン、小さな食器棚、抽斗には缶切りからスプーン、鋏から鉛筆まで何でも入れていた。
洋服ダンスを買うのが夢だった。
外食はお金がかかり贅沢に思え、殆んど自炊をしていた。
小さい時から家事の手伝いはしていたので、簡単な煮物や炒めものはできた。
会社には毎日お弁当を持って行った。
昨年の秋、その時隣の部屋に住んでいた友人のロッジに泊めてもらった。
越後湯沢に嫁ぎ、ロッジを経営している。
跡取りの息子さんはスキーのインストラクターもしている。
一時は随分と忙しそうだったが、何年か前ご主人が亡くなり、今は常連さんを中心に規模を小さくしている。
私が行ったのは稲刈りも終わって一番暇な時期だった。
その晩、「狭くて、小さな流し台だったね」
「家賃が大変だった」
「美味しかったあの味」。
実家から届いたと言ってご馳走になった。
何かの練り物を軽く焙り、すりおろしたショウガで食べたと言ったら忘れたと言う。
思い出話が尽きなかった。
日付が変わる頃、「明日の朝、美味しい魚沼産のご飯をご馳走するね」と言って友人は部屋の電気を消した。
先生の講評・・・つつましく清潔な独身OL時代。
夫を亡くし、ペンションを息子と経営するその後の友、
二つの生活史が時の経過を映してしみじみさせる。
物が共通の狂言回し役にした工夫がある。女性らしい感性だ。