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つつじの書・・

霧島つつじが好きです。
のんびりと過ごしています。
日々の暮らしを、少しずつ書いています。

            独身時代

2021-05-17 14:32:27 | 楽しい仲間
                   独身時代  課題【問い・答え】2016.5.27
 

          独身時代、女性だけのアパートに住んでいた。
          大家さんは粋な感じの、若しかしたら若い時水商売もしてきた感じだった。
          綺麗に使ってくれる女性に限ったとか。
          一階は大家さんと一部屋、二階は三部屋だった。
          新しいアパートだったが何もかもこじんまりとして、部屋は四畳半、勝手は半畳、そこに流しとガス台があるだけ。
          洗濯はどうしたのかと考えたら、玄関脇の植え込みの所に流しがあったのを思い出した。
          私の部屋は二階の真ん中だった。
          月賦で買ったシンガーミシン、小さな食器棚、抽斗には缶切りからスプーン、鋏から鉛筆まで何でも入れていた。
          洋服ダンスを買うのが夢だった。
          外食はお金がかかり贅沢に思え、殆んど自炊をしていた。
          小さい時から家事の手伝いはしていたので、簡単な煮物や炒めものはできた。
          会社には毎日お弁当を持って行った。
          
          昨年の秋、その時隣の部屋に住んでいた友人のロッジに泊めてもらった。
          越後湯沢に嫁ぎ、ロッジを経営している。
          跡取りの息子さんはスキーのインストラクターもしている。
          一時は随分と忙しそうだったが、何年か前ご主人が亡くなり、今は常連さんを中心に規模を小さくしている。
          私が行ったのは稲刈りも終わって一番暇な時期だった。
          その晩、「狭くて、小さな流し台だったね」
          「家賃が大変だった」
          「美味しかったあの味」。
          実家から届いたと言ってご馳走になった。
          何かの練り物を軽く焙り、すりおろしたショウガで食べたと言ったら忘れたと言う。
          思い出話が尽きなかった。
          日付が変わる頃、「明日の朝、美味しい魚沼産のご飯をご馳走するね」と言って友人は部屋の電気を消した。

          先生の講評・・・つつましく清潔な独身OL時代。
                    夫を亡くし、ペンションを息子と経営するその後の友、
                    二つの生活史が時の経過を映してしみじみさせる。
                    物が共通の狂言回し役にした工夫がある。女性らしい感性だ。


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エッセイ 五月の風

2021-05-05 10:40:03 | 楽しい仲間
              エッセイ 五月の風  課題【晴れ・曇り・雨】2017.5.26           
          
          五月、晴れた空をみると、私の中の「横浜の爽やかな風」を、又感じたいと思い始める。
          二十年以上も前、少しの間だったが夫の転勤で横浜の本牧に住んでいた。
          新しい土地で知り合いも少なかったから、足の向くまま近くを散策することが多かった。
          家の近くにワシン坂と言う坂がある。
          登った先は港の見える丘公園に出る。
          途中には大きな洋館のお屋敷が多い。
          鬱蒼とした樹木の向こうに薔薇やマーガレットの白い花などが咲く広い庭が見える。
          だらだらとした長い坂道を上がって行くと息が上がる。
          ガードレールにもたれて、遠くに見えるベイブリッチを眺めた。
          港湾に浮かぶ貨物船、コンテナ群、高速道路を走る沢山のトラック。
          私たちも若かったが、世の中が動いていた。
          
          今年も行った。乾いた風が迎えてくれた。
          今はあの坂道を上らなくてもいい。
          みなとみらい線の終点元町駅の改札を出てすぐのエレベーターに乗ると、屋上がアメリカ山公園に出る。
          そこを抜け外人墓地を右手に、その先の十字路を左に行くと港の見える丘公園に行ける。 
          庭園の薔薇が咲き始める五月は、特に大勢の人出があり賑やかだった。
          山手を足の向くまま暫く歩き、元町に降りる。
          ここの商店街はエキゾチックな洒落たお店が多くウインドショッピングは楽しい。
          来る度、立ち寄るお店がある。
          一階は個性的なタペストリーや新しいインテリア類。
          二階は中国の古い家具や骨董品が並んでいる。
          その中に背もたれの木彫りが気に入って目につけていた椅子があった。    
          五年程前から、いつ行っても売れていない。
          その日、何かざわついていると思ったら、一週間後に店を閉じると言う。
          夫が即座に、「もう見られないのだから買ったら」とけしかける。

          届いた椅子は思った通りだった、しっくりと玄関に馴染んだ。
          あの時決心してよかった。

             先生の講評・・・一読して無駄なく、きちんと収まっている。
                       「横浜の爽やかな風」。自然だけでなく、記憶、思い出、体感を表現しているから。

             つつじのつぶやき・・・4年前の5月。また、あの頃のように横浜を散策できますよう。


   
  [いらっしゃいませ!

  
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