エッセイ 秋の七草
気のおけない人たちと、近くの里山を歩いている。
今年で十六年になる。
メンバーは余り変わらず「よく続いてるね」 が合言葉だ。
折々の話から、おおよその考え方などを察し、お互いの距離を程よく空けて深入りをしない。
月に一度と言うのも丁度いい間隔かもしれない。
最近何かの時の為に、緊急連絡先の名簿を作った。
誰がどのように対応してくれるかが分かり、少しだけお互いの家族のことを知った。
集合場所は最寄りの駅が多い。
改札の前に小さなリュックを背負っておしゃべりをしているのがいつもの仲間だ。
リュックの中はお弁当と飲み物、少しのおやつ、ビニールシートは外せない。
いつでも道草をしながらゆっくりと歩く。
「秋の七草、言える?」 と誰かが言う。
すぐに萩でしょ、ススキ、女郎花などと記憶の比べっこになる。
「おすきなふくは」 と覚えると簡単よと、植物に詳しいSさんが言う。
「おは女郎花(おみなえし)、すはススキ、きは桔梗、なは撫子(なでしこ)、ふはフジバカマ、くは葛、はは萩」
すると「春の七草は」 と話題が変わる。
七草粥を何度か作ったことがあったから、その時の記憶で、セリ、ナズナ、スズナ、スズシロ、などと言ったが全部は知らない。
このくらいは覚えないとと自分の無知が恥ずかしい。
「〇〇さん、後で全部言ってね」 と宿題をいただいた。
セリ、ナズナどころではない。
胸の内でおは、女郎花(女郎花)、すはススキなどと口ずさむがなかなか全部は思い出せない。
さっき聞いたのにすぐ忘れる。
お昼ご飯は大抵程よい木陰を選び、シートを敷いて輪になって座る。
最近は買ってきたお弁当の人が多くなった。
今年は夏から何度も台風が来た。
季節の変わり目が分かりにくかったが、金木犀の香りが秋を知らせてくれる。
特別有名なところを歩いているわけではないが、日差しや風、道端の草に季節を感じるゆるやかな散策だ。
課題 【秋・自由課題】 2016年10月14日
先生の講評・・・自然の写生だけでなく、人物も点綴されている。
会話を七草だけにしぼったのも、800字の場合は賢明。