つつじの書・・

霧島つつじが好きです。
のんびりと過ごしています。
日々の暮らしを、少しずつ書いています。

エッセイ ルリ

2020-06-27 20:15:08 | エッセイ

エッセイ ルリ  課題【穏やか・乱れる】 2014・11・24 

病院の帰り、電車の窓から新しい住宅の横の畑道を見て、不意に胸の奥がつまった。
冬の晴れた日、畑道を、長い毛を風になびかせて走るルリの姿を見た様な気がした。

10年以上前、家の建替えの為、その近くにアパートを借りた。
当時、シーズーの室内犬、ルリを飼っていた。
借りた部屋は、畑道に近い、古いアパートだった。
夫は単身赴任中、私は勤めていた。
建替え中は、息子たちの事、工事、銀行の事等一番忙しい時、気を張っていたが心に余裕がなかった。
そんな頃、ルリは変わった家のトイレの場所が分からなくなり、度々粗相をした。
ある時は随分我慢をしたのか、ぐるぐる回り始め布団の上に沢山のおしっこをした。
思い出すと本当に済まなかったと思うが、お尻をかなりきつく叩いた。
その感触は今も手に残っている。

最近、私は体調が良くない。
涙目になったり、頭痛がしたりするのは眼に原因があるのではと気になっていた。
4年程前、病院で診察を受けたことがある。
白内障は問題はないが、緑内障の疑いがある。
暫く様子を見ると言うのでそのまま過ごしてきた。
緑内障は怖い病気だと言う、不安な日が続いていた。
思い切って、病院に予約を入れた。
以前の担当医は変わっていた。
いくつかの検査をした後、新しい先生は「緑内障というのはどうしてかな」と首をかしげた。
白内障は視力の数値もしっかりしているし、手術はもう少し後、視力が下がってからでもいいと言う。
涙が出るのはドライアイの様なので、目薬を出しましょうという事だった。
かなり緊張しながら都心の病院まで出てきたが、不安は消えた。
ホッとした心の底にいたルリ。
畑道を見ておセンチになったのかもしれない。
また明日から、平穏な日々が続く。

 

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エッセイ ルリ

2020-06-22 16:00:32 | エッセイ

エッセイ ルリ  課題【有縁・無縁】 2011・6・24

ルリが死んで、3年経った。
シーズーという小型の犬種で、15年生きた。
私は最初、犬を飼うのは乗り気ではなかったが、二人の男の子が時々大声で怒鳴りあい、殺伐とした空気になるのが気になっていた。
犬でも飼ったら少しは違うかも知れないと思い、近くの獣医さんに聞いてみた。
最近シーズー犬が人気だ、関節が割と丈夫で男の子が抱っこしても痛めない。
騒がしくないし、おりこうですよと教えてくれた。

シーズ犬というのが分からなかったので、図書館に行き、小型犬の本を何冊か見た。
もこもこの毛に覆われた、黒い目の可愛い写真を見て、心は決まった。
子供達に話すと喜んだ。
特に小学生の二男は、「直ぐに迎えに行きたい」とニコニコ顔で催促をした。

ルリが来てから、私達の生活は変わった。
 話題の始まりは、大体、「ルリがね」だった。
朝、「ルリ、行ってきます」と誰かが言う。
又「ただいま」の声がすると、こんな嬉しい事は無いという姿で出迎えて、家族を喜ばせた。


死ぬ前の年、こたつの端から歩き始めて、突然、ドタンと倒れた。

始めて見る姿にびっくりして抱き上げたが、しばらく固まった後に、フッと目を開けた。
その頃から、確実に老いてきた。
耳は大分前から遠くなってはいたが、よく襖にぶつかった。
「どう~したの」と、ドジをした仕草をからかっていたが、本当は目が見えなくなっていたのだ。
そして、我が儘になった。
あんなに楽しみにしていた散歩はイヤッ、嫌いなものは食べない、抱き上げると迷惑そう、ころころ転がっていた、気のいいルリでは無くなった。
体がきつかったのだろう。
だけど、その世話をする事はちっとも嫌ではなかった。
縁あって家族になった私達に、最後の我が儘をして困らせ、未練を残さないようにとも、今は思えてくる。


ルリが死んで、12年経った。
あの時、あまりに涙を流していたら、
埋葬をしてくれた人が
「お母さん(私)が死んだら、
三途の橋のたもとでルリちゃんは待っていてくれるそうですよ」
と慰めてくれました。

「ルリ、こっちはコロナと言う病気で大変なのよ」

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エッセイ とんかつ

2020-06-07 09:29:50 | エッセイ

エッセイ とんかつ 課題【会う・別れる】 2013・6・28

駅前にある肉屋さんを、一時期よく利用した。
肉は生協の物を使うので買わないが、息子たちが好きな、とんかつやコロッケなどを揚げてもらう。
店主はいつも奥の方で肉を捌いている。
目が合うと少し微笑むが「いらっしゃい」の声を聞いたことがない。
小柄な奥さんはよくしゃべる。
特に料理の事を聞くと、直ぐに3つや4つの答えくれる。
「来客があるので、揚げ物を出そうかな」、などと言うと、じゃー何時までにいらっしゃい、家に帰ってすぐに揚げられるよう用意しておくからと言ってくれる。
「ポテトサラダもお願いね」と言うと、「分かった、分かった」と嬉しそうな顔になる。
家を空けた帰り、夕飯のおかずに「とんかつを揚げて」と店に寄ると「さっきご主人が買っていったわよ」と言われたことが何度かあった。

先日、久し振りに寄った。

ガラスケースの向こうから奥さんが振り向いた。
ひどく痩せていた。
痩せているというより何か病気の顔だった。
「元気」の言葉を飲み込んで、さりげなく「痩せたね」と言った。
いつもダイエットをしなきゃあと言っていた。
包みを渡される時、何の前置きも無く「お医者さんが、何でも好きなことしなさいっていうのよ」と小さな声で言った。
喉に固いものが上がってきた。
そばにお客さんが来たので声が出なかった。
曖昧に「体、気をつけてね」と受け取った。
すると、夫が、「ちゃんと治療すれば大丈夫だよ」と口を挿んだ。
大変な事を、そんな簡単に言っちゃいけないのにと思った。

奥さんは定休日になるとウオーキングをしていた。
会うといろいろな話をしたから、大抵の事は知っていた様に思っていた。
でも今、私の知らない、つらい時間を過ごしている、話をきちんと聞けばよかった。
それを思うと顔を合わせられない。
店の前を通る時、つい奥さんの姿を探してしまう。

 

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これからどんな日常を・・・

2020-06-01 10:54:37 | 楽しい仲間

新型コロナって奴と、どう付き合ていけばいいのでしょうか?

私は朝の散歩が、唯一体力維持の原点になっています。
長いお休みもそろそろ終わりにしたいです。

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