つつじの書・・

霧島つつじが好きです。
のんびりと過ごしています。
日々の暮らしを、少しずつ書いています。

エッセイ 県営プール

2024-07-11 14:01:48 | 楽しい仲間
   先生の講評
     生活だけに即して時代の境目を描く手法が堅実。
     末尾が抽象的表現すぎる。

   つつじのつぶやき
     夫の転勤で3年ほど住んだ広島、街の中は海風と
     白い砂のせいか明るく、何時までも懐かしいところです。

県営プール 課題 表現 2010.6.25

随分前の話だが、広島市内を頻繁に走っていた路面電車は、
100円だった。
運賃が安くて便利だったので、気軽に利用して繁華街に出かけ、
週に何日かは、県営プールの水泳教室にも通っていた。
広島市民球場の隣にある、古びた大きな建物の中のプールは、
公式な大会も開く50メートルプールで、中心部が深く、
そこでは大学生達が水球の練習等をしていた。
勿論、そんな深いところで初心者は泳げない。
普段はそのプールを横に区切ってロープを張り
22メートル位のコースになっていた。
端のコースは、赤い床が沈めてあり、生徒はそこを使う。
私は習い始めたばかりだったので、その22メートルも泳げなく、
いつも水を飲んでばかりいた。
水泳教室の日は、時々気分が重たくなるが、
終わったときの爽快感が好きだったのか、
そんなに休みもしないで続いていた。

その日も、プールから上り、クロークからお風呂屋さんにあるよう
な籠を受け取り、混んだ脱衣所の隅で着替え
スノコが鳴る通路を出た。
帰りに、買い物でもするつもりだったのだろうか、
本通りのアーケード街を一人で歩いていた。

ある店の前で、大勢の人がテレビを見ていた。
小渕さんが、年号を発表している場面だった。
右手から出した、その「平成」の文字を見た時、
「あれっ」と、少し感動した。
私には男の子が二人いる。
〇平、〇平と二人とも「平」が付く名前である。
その「平」が嬉しかったのだ。
夕食の時、子供達に言った。
「〇ちゃんと〇ちゃんの名前についている平の字が、
平成って言う年号になって、昭和の代わりに使われるのよ」と。

今年、平成も22年になった。
あの時の、歩く度にカタカタとスノコの音がする
県営プールはもう無い。

コメント
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