つつじの書・・

霧島つつじが好きです。
のんびりと過ごしています。
日々の暮らしを、少しずつ書いています。

エッセイ 台風(2)

2022-04-28 15:11:04 | 楽しい仲間


           先生の講評・・・さりげない戸惑いの時間の推移が描かれているのに、読ませる力が文章にある。
                     姿を現さないMちゃんが、この文の主人公とも思える。
                      不在の描写で、存在を書く巧みなレトリックだ。


         エッセイ 台風(2) 課題【澄む・濁る】 2018.9.28
 
  Mちゃんは来なかった。
  何となくそんな気はした。
  約束しても守らないことがあると、友人から聞いてはいた。
  が、まさかこんな大事な旅行をすっぽかすとは、林さんと顔を見合わせた。
  だから、Mちゃんに何かあったのかという心配はしなかった。

  中央線の車内は混んでいた。
  通路には登山者のザックが並び、あちこちのグループの大きな笑い声が響く。
  蒸し暑い、気分が悪くなってきた。
  次の電車でも、多分Mちゃんは来ないだろう。
  二人でこれからの三日間どう過ごそうかと考え、黙って座っていた。

  夕方茅野に着き、バスに乗って蓼科湖畔まで行った。
  夕暮れの雨が降っている通りは、人が歩いていない。

  バンガローのご主人、小父さんと呼んでいるのだが、「よう来たね」と、
  日焼けした笑顔で迎えてくれた。
  三人分の予約をしたのに、一人が来られなくてと謝った。
  隣が経営するバンガローの団体客が、台風の影響で
  キャンセルになった。
  大きいな部屋だが、料金は普通の値段でいい。
  食事はこっちに食べに来ればいいと、言ってくれた。
  以前は、泊り客が共同炊事場で、夫々自炊をした。
  ここ何年か、頼めば食事も作ってくれる様になっている。

  バンガローはいつもの倍の大きさだった。
  部屋の隅には、布団が沢山積んである。
  荷物を広げ、布団を二枚重ねて敷いた。
  とに角、「ご飯を食べよう」とおじさんの家に行く。
  予約もしないで飛び入りしたのに、おばさんも何かと気を使ってくれる。

  雨が激しく降り出した。
  傘を一本借りた。
  二人でバンガローに戻ったが寒い。
  上着を持っていなかったから、布団にもぐりこんだ。
  食事をしたことで気分が軽くなり、「だけどね」と、
  又Mちゃんの話に戻る。

  次の日も、その次の日も雨が降った。
  窓から見える蓼科湖の水が濁っている。
  寒いし傘も一本しかない。
  ずーと布団にくるまっていた。


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エッセイ 台風(1)

2022-04-21 10:04:02 | 楽しい仲間


         先生の講評・・・OLシリーズ、その1。
                    はずむように働き、遊ぶ若いOLの言動がクリアに描かれている。その2は?
          つつじのつぶやき・・・Mちゃんの消息が分かりません。「Mちゃん、会いたいよ」



     エッセイ 台風(1)  課題 【薬・毒】 2018.8.24
  
  若い頃会社に勤めていたが、休みの日がとても待ち遠しかった。
  何をして遊ぼうか、何処に行こうか、誰と会おうかと、予定の引き出しが
  いっぱいあった。
  特に連休や夏休みは、決めるのに悩んだ。
  大抵友人達と一緒、皆のスケジュールにも合わせて決めた。

  ある夏、月曜日も休みが取れたので、同僚のHさん、Mちゃんと三人、
  海に行くことにした。
  土曜日から出掛けると、二泊することができる。
  上司の知り合いの、民宿に予約をした。
  会社の帰りに、あれこれ迷いながら流行だという水着と、
  初めてサングラスを買った。
  出掛ける週半ばから、遠くに台風が来ていた。
  そのニュースを聞く度ひやひやしながら、来ないよう願った。

  当日はまだ晴れてはいたので、海に行く支度をして集まった。
     台風の影響を心配しながら、予約をした宿に電話をしてみた。
  遊泳禁止になっているという。

  折角取れた休みを無駄にしたくない。
  海が駄目なら、山に行こうとなった。
  何度も行っている、蓼科湖畔のバンガローに電話をした。
  ご主人が、「予約で一杯だが、隣が空いている筈だから、
  兎に角おいで、食事はこちらで食べればいい」と言ってくれた。

  蓼科に決めて、午後の電車に乗ることにした。
  それにしても海のスタイルでは寒い。
  雨も降りそうだ。
  するとMちゃんが、
  電車に乗る迄に時間があるから、セーターと傘を取ってくる。
  列に並んで席を取っていてと言う。

  土曜日の新宿のホームは、山に行く人が沢山いた。
  Mちゃんに言われたあたりの列に並んだ。
  周りは重装備の人が多い。
  ミニスカートに、派手な帽子は場違いだ。
  冷たい風が吹き出した。
               
  もうすぐ発車時間なのに、Mちゃんは来ない。
     Hさんと何度も顔を見合わせ、Mちゃんの姿を探した。







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断捨離

2022-04-15 15:17:55 | 楽しい仲間


何年か前、ガスコンロを買い替えた時、
「ダッチオーブンが使えます」。
という言葉に惑わされ、買ってしまいました。
中の網の上に、お肉や野菜を入れて蒸し焼きにするのですが
長い時間がかかり、食卓に出したらまだ生だった、等の
失敗があって、使わないで仕舞ってありました。
思い切って、今朝、資源ごみにお願いしました。

BS朝日「うち断捨離しました」の番組みを観ていて
物を減らさなければ、そこがお掃除できないでしょという言葉。
納得! 空間づくりは大切です。







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エッセイ ハイヒール

2022-04-09 12:55:02 | 楽しい仲間
                    

                                 先生の講評・・・靴、今昔。おしゃれは見た目だけではなく、心にも力を与えるもの、それが伝わる。
                                           「若い頃、・・・」、良い出だし。
    

                              エッセイ ハイヒール 課題【口・手・足】 2019.2.8    

                   若い頃、何十年も前のこと、何時もハイヒールを履いていた。
                   ハイヒールを履いていれば、大抵の洋服が他所行きに見えた。
                   社員旅行の写真に、ハイヒールを履いたのが映っている。
                   会社には、毎日同じ靴を履いて行った。
                   何時も同じ靴を履き、踵が減れば靴屋さんで直してもらった。
                   買い物などの普段履きサンダルも、ヒールの高い物を履いた。
                   あの頃は踵が高い方が、良いと思っていたのだろうか。

                   友人の妹さんは、夜の街に勤めていた。
                   午後になると、美容院で大きく膨らんだ髪形に結う。
                   小柄な体に大きすぎると思ったがは、派手な衣装を着るのには丁度良かったのかもしれない。
                   高いヒールのサンダルを履いて、黒髪を結い上げた襟足と、色白のスッピンの顔が色っぽかった。 

                   デパートの正面に、珈琲スタンドがある。
                   歩き疲れた時、休憩をするのに利用する。
                   歩道に向かった長いテーブル席に座って、道行く人の姿を追い、ぼんやりする。

                   正月も終り、日常の暮らしに戻ったような夕暮れ。
                   幾つものデパートの紙袋と、総菜らしい袋を持った女性達が、上気したような顔で出てくる。
                   服装はお正月のような派手さはないが、それでも普段着というものでもない。
                   見ていると、殆どの人が底の平らな靴を履いている。
                   寒い時期だからか、パンツスタイルの人が多い。
                   たまにお洒落なスカートを穿いた人も、ハイヒールは履いていない。

                   そう言う私もヒールのある靴は、冠婚葬祭の時位しか履かなくなった。
                   ハイヒールを履くと、何十年も前と同じように、気持ちが華やぎ背中が伸びる気がする。


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