エッセイ・お兄ちゃんのチョコレート
もう随分前、長男が7歳、二男は2歳位の頃だったと思う。
兄からすると,5歳も離れた弟では、遊び仲間としては不足だ
ったかもしれないが、よく遊んでくれていた。
長男は、その頃、レゴブロックを使って、テレビドラマのヒー
ローだったガンダムやロボット、変身する戦闘機や車などいろ
いろな物を作った。そして、それを使ってお話の世界を作り出
し、弟を喜ばせていた。
ある冬の日の午後、外は寒く、二人は茶の間の炬燵の周りで遊
んでいた。
ブロックで何かを作っている時は、自分の世界に入っている。
弟も静かに遊んでいる。私も編み物か何かをし、テレビの音だ
けがしていたような気がする。
急に長男が、「無い、僕のが無い」と騒ぎ出した。私はびっく
りして「何がないの?」と聞いた。「僕のチョコレートが無い
」と言うのだ。
その日は、バレンタインデーで、私が、二人にプレゼントをし
たチョコレートのようである。渡す時、「3時のおやつの時に
食べようね」と約束した。長男は3時を待って、ブロック遊び
を切り上げ、チョコレートを食べようとしたら無くなっていた
のだ。
「どこに置いたの?」
「ここに置いた」
「違うところ置いたんじゃないの」
部屋中を探し、ブロックの入った箱の中も、全部ひっくり
返したが無い。炬燵をめくった。炬燵の中に弟が入っている。
「何をしてるの?、熱いから出てきなさい」やっと出てきた弟
の口の周りには、茶色のチョコレートが
べったり付いている。
「あ、僕のチョコレートを食べた」
「自分のは、どうしたの?」
「もう食べちゃった」
「バカヤロウ、僕のを返せ」
普段の、優しいお兄ちゃんの姿はなく、長男は、思い切り弟を
ぶった。ぶたれた弟は、何か悪い事をしたことが分かっている
のか、気弱に泣き声を上げた。
先生の講評
生活の1コマがノスタルジックに書いてある。
あえて、現在の時(長男・二男)を画かなかった。
その功罪は?