エッセイ・お盆 【課題・夏】
もう両親はいないが、お盆には大抵実家に行く。弟と二人だ
けの姉弟なので、ご無沙汰が続くと、何となく気にかかる。
そんな私を、弟の家族は気持ちよく迎えてくれる。
夫の休暇の都合で、お盆の前日に行く事もあり、そんな時は、
この地方独特の飾りつけを手伝う。
座敷の隅に祭壇を作るのだが、3段ほどの台座の周りを、葉
の付いた細い青竹を柱にして四角く囲む。正面に、提灯に見
立てた赤いほうずきを紐に絡ませて下げ、そこに何故か、塩
若布やゆでたうどんを数本絡ませる。普段、仏壇に納まって
いる位牌や鉦、曼荼羅等を下げ、夏野菜や果物を供える。仏
様の乗り物といわれる牛と馬も、なすときゅうりに足をつけ
て作る。
弟の家族と準備をしていると、子供の頃のお姉ちゃん癖が出
て、どうしてもあれこれ口を出してしまう。
「台座を少しずらして」
「その青竹、チョッと大きすぎるよ」
いろいろな注文をつけると、弟は「むっ」として嫌な顔をす
る。弟にしてみれば、普段は一家の主として家族をまとめて
いるし、皆もそれに慣れている。
「へへへ、ごめん、好きなようにやって」。それでも、親戚
のだれそれがどうしたとか、世間話をしているうちに気まず
い雰囲気も治まってしまう。
午後、甥や姪も加わって墓参りにいく。山際にある墓地の周
りは、夏草が生い茂っていて、もう一仕事しなければならな
い。
体格のよい茶髪の甥も、子供の頃のような笑顔で「おばさん、
毎日何してるの」なんて聞いてくる。「伯母さんは、今度ね」
とか、たわいも無い話をしながら、それでも甥たちの祖父母
の昔話を、得意になってしているうちに気が付いた、今は、
私が長老なんだ。
弟が線香をたく火をつけようとしているが、ちゃんと燃えな
い、
「ほら、あっちの細い枝を持ってきたら」
「又、命令する、子供のときからずーとだよ」
「へへ、そうだっけ」
※ 先生の講評
人物、風景描写が読ませる。
ていねいだ。
弟の顔や身体のデッサンが一言あってもよい。