エッセイ・庭の雪
今朝、東京にも雪が降った。
年末からカラカラお天気が続いて、乾燥注意報が毎日出ていたが、これでやっと
解放される。
雪が降ると、随分前に読んだ「歳時記」を題材にした中の、小さな一文を思い出す。
二月の章だったと思うが、東京は二月になると柔らかな雪が、結構積もることがあ
るという。
若いお母さんが、子供が小学校に入ったので、学校から帰ってくる午後二時まで、
パートタイムで働きに出た。
ある日、雪が降りだし結構積もった。
職場では風邪が流行っていて、何人かが休んだ。上司が「すまないが二時間だけ
延長して働いてくれないか」と言われ断れなかった。
初めて子供が帰ってくる時間にいてやれないことの不安がよぎったが、もしもの時
は、庭の片隅の、ある場所に鍵を置いておくことを教えていたので、大丈夫だろう
と仕事を終えた。
冬の夕暮れは早い。うす暗くなった雪道を買い物をして帰ってくると、家の明かりが
ついていない。庭に回ると寒いコンクリートの片隅に子供がいた。驚いて訳を聞くと、
雪が積もっていて鍵の場所が分からないという。
この話を思い出しながら、自分の中で空想を膨らませる。
子供を持つと親は強くなる。庭付きの建売住宅を買って、つつましく暮らしている。
子供が小学校に入ったら、パートに出て経済を楽にしたいと思ったのだろう。それ
を子供もわかっていて、鍵がみつからなくても言われたところで待っている。
二人は、抱き合った。と思う。子供は、お母さんは、泣いたかしら。
多分お母さんは、夕ご飯の支度をしながら、じわじわとこみ上げるものが大きかっ
たのではないだろうか。
私は切ないお話が大好きである。
サークルの新年会の一言あいさつで、どう間違ったのか
この話の一部を持ち出してしまい、どう着地しようかとし
どろもどろになったエッセイです。
今年も回線がこんがらかったつつじです。