エッセイ 土用のウナギ 【自由課題】 2017年8月25日
「ハイお土産だよ」と、夫が小さな包みを渡してくれた。
「えー買ったの」
「これを買うために昼飯を節約したよ、蕎麦屋に行って蕎麦にして、卵をつけた」
「卵をつけるとは豪勢じゃない」
七月の二十五日が土用だとテレビやラジオで話題にしている。
鰻を食べようと言うことだろう。
夫は今朝、出かけに、今日は鰻を食べたいねと言った。
最近はスーパーでも手ごろな値段で売っているが、やっぱり鰻は、お店の焼きたてが食べたい。
でも鰻は高いと思うから、「別に、食べたくない」と言った。
「土用の丑の日には『う』の付くものなら何でも言いそうよ、たとえばうどんでも」
「じゃあ久しぶりにうどんを食べよう」と蕎麦屋に行ったが、やっぱり好きなお蕎麦にしたらしい。
ウナギと言えば、評論家、大宅映子さんのトークショーを聞きに行った時、ゲストに東京大学の塚本勝巳先生が出演された。
ニホンウナギがどこで産卵するか長年追いかけて、二〇〇九年、西マリアナ海近くで、直径一、六ミリの受精卵を見つけたと言う。
あの広い海でと、その話に驚いたことがある。
又何年か前の報道で、輸入されたウナギが港から何度もトラックに積み替えられて、最後に国産ウナギとなって市場に出回っているとか。
ウナギには変わりはないが、育った所が、外国の汚染された川の水だったら困る。
絶対量が足りないのだから仕方がないが、せめて偽装だけはして欲しくない。
夫の買ってきた鰻を温め、炊き立てのご飯に載せ、たれをかける。
山椒の香りもいい。
肝吸いとはいかないが、三つ葉を散らしてお吸い物が出来た。
「やっぱり鰻だな」
「たまにはいいわね」
先生の講評・・・・・さりげない食事風景。ウナギをゲットする夫の言動がいい。
庶民の暮らしがある。
つつじのつぶやき・・・ささやかな暮らしを見てくださった先生、ありがとうございます。