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つつじの書・・

霧島つつじが好きです。
のんびりと過ごしています。
日々の暮らしを、少しずつ書いています。

エッセイ ルーちゃん

2019-01-15 10:46:49 | エッセイ

ッセイ ルーちゃん 課題【下着・上着】2018年11月1130日  

朝、玉川上水の遊歩道を散歩する。

出かける時間は大体決まっているので、顔見知りの人とは、軽い会釈をしてすれ違う。
一人で歩く男性は、なぜか、目標に向かって一生懸命歩いているように見える。

犬の散歩の人も多い。
犬はおしっこで立ち止まり、周りの匂いを嗅ぎ回る。
飼い主はそれに付きあって立ち止まる。
そんな人達と顔馴染みだ。
最初は犬の姿から飼い主の顔を覚える。
その中の一人、夫は「マテマテ君」と言っているボーダーコリーを連れた男性がいる。
犬も大きいがその人も体が大きく、はっきりした声で挨拶をしてくれる。

川に沿って一メートルほど低い所に小さな用水路が流れている。
その向こうの遊歩道をその男性は歩く。
時々犬にお座りをさせ「待て」と言って先に歩いていく。
犬は遠ざかる男性の背中を、もじもじしながら見ている。
その様子を上の歩道から時々見かけるが、夫が小さな声で「よし」というと、犬はまだ後ろ姿の男性の後を一目散に追いかけていく。
悪い夫だ。

もう一人挨拶をする人がいる。
柴犬、少し雑種が混じったルーちゃんのおじいさんだ。
少し腰を曲げてお尻のあたりに手を組み「ルーちゃん」を引っ張って歩く。

ある時、私は、手に持っていた上着を着ようと袖を通しながら手を上げたら、その姿が逆光で大きく見えたらしく、振り返ったルーちゃんに「ワワン」と吠えられてしまった。
おじいさんは吃驚し、「コラっ」と紐を引いた。
それからは何時も挨拶や軽い話をするようになった。
だが、ルーちゃんは何時までたっても打ち解けてくれない。
後ろを歩いて行くと、時々振り返って警戒する。
警戒されてもルーちゃんのお尻の毛がふさふさ揺れる後を、ゆっくりついていくのが楽しい。

最近会わないなと思ったら、ルーちゃんをカートに乗せたおじいさんを見かけた。
腰を曲げて、ゆっくり、ゆっくり歩いている。

    先生の講評・・・・・・・・飼い犬を通して人間を見る手法。
                   それぞれの人生、「犬」のスケッチが鮮やか。

     つつじのつぶやき・・・悪い夫だ。の部分は良い表現と、◎をいただきました。


          

 

 

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エッセイ 年末の旅行(5)

2018-12-27 07:55:45 | エッセイ

エッセイ 年末の旅行(5) 課題【靴・履物】2018.4.27

古都に響き渡る除夜の鐘を聞きたいと思ったことも、旅行の目的の一つだった。

今日は大晦日。

昼間歩き回って疲れてはいたが、頼んでいた年越しそばを食べてその時を待った。
なかなか時間が過ぎない。お茶を飲もうとラウンジに行った。
カウンターでは静かにお酒を飲んでいる人が多い。
いつもこんな風にゆったり時を過ごしているのがろうか。

暫くして「鳴りましたよ」とウェーターが教えてくれた。
室内ではよく聞き取りにくいので庭に出る。
確かめたわけではないが、大きく聞こえるのは近くの元興寺、遠くに聞こえるのが興福寺かもしれない。
何組かの人たちが「おめでとうございます」「二〇一八年ですね」などと声をかけてくれる。

年が明けた。

奈良ホテルが戦前からある由緒あるホテルだとは、迂闊にも知らなかった。
最近は大理石の床や、シャンデリァが煌めく近代的で大きなロビーが多いが、ここは質素にさえ見える和風のロビー、
天皇陛下御即位を祝して中央に大時計がある。15分毎に鳴るオルゴールの音を皇后さまは気にいられ、お帰りの時、戻られてもう一度お聞きになったとか。
またノーベル賞を受賞したアインシュタインが弾いたという古いピアノもある。

秋篠の宮様ご一家が来られた時、悠仁さまは廊下に飾られた年表に映っている若き日の秋篠宮さまを「あ、パパが」と言われたとか。

戦前、満州国皇帝が泊まられた時は、宴会用の器をセットで何百器も焼いたと、展示してあるところに案内をしてくれた。

先日、コーディネーター 加藤タキさんが、親交のあったオードリーヘップバーンのことを語った番組があった。
その中で、奈良ホテルに一泊の予定だったが、息子ルカ君の発熱で三泊し、その時の看病ぶりやエピソードなどを話ていた。

もう一度奈良ホテルの赤い絨毯の上を歩きたい。

   先生の好評・・・ゆったりした非日常を慈しんで書いている。
             典型的な場を選んでカットする。

 

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エッセイ 年末の旅行(4)

2018-12-20 12:53:41 | エッセイ


エッセイ 年末の旅行
(4) 課題【春・自由課題】 2018.4.1

気持ちのいい目覚めをした。
とてもいいホテルのようだ。

朝食のため、赤い絨毯が敷かれた廊下の先のロビーに行くと、豪華な食堂に案内された。
給仕の男性が私に椅子を引いてくれた。
夫が、
素早くその椅子に腰を下ろした。

「ここはレディファーストでしょ」と下を向いて笑ったら、夫も気づいて笑う。
男性も軽く笑った。

名物の茶粥が出た。
炊き合わせの野菜が一つ一つ美味しい。
目をみてうなづきあったが、椅子のことを思い出し、吹き出しそうになって困った。
何気なくよそおいながら、品よくふるまうのは難しい。

観光案内所で作ってもらったコース、西ノ京の唐招提寺からお参りした。
廬舎那仏、薬師如来、千手観音をまじかに見て手を合わせ、そこからゆっくり歩いて薬師寺に。
日光菩薩、月光菩薩にも手を合わせた。
朝早い時間だったせいか、観光客も少なく境内は閑散としている。
以前、東京の博物館で展示された時は七十万人以上の見学人で溢れたとか。

お目当ての大仏様に、夫は「これが見たかったんだよ」そして何度も「すげー、すげー」を連発する。
改めて見てみると、大きいだけではない重厚さと、何かわからない仏様のありがたさを思った。
こんな立派な像が残せる日本は凄いと思った。
特に山門の円柱の柱に、八百年以上も風雪に耐えた木の重厚さを感じ、何度も撫でてしまった。

大仏殿の北東の柱が邪気を逃がすという意味で穴が開いており、「柱くぐり」ができる。

腹這になって抜けるが、大仏様の鼻と同じ、三十センチちょっとの穴、長さは百二十センチ。
行列に並んで挑戦してみた。
でも、弱った腹筋ではズリズリとは進めず途中で引き返した。
再度挑戦しに来なければいけない。

ホテルに戻ると、部屋のテーブルの上に小さなお供えと蜜柑、鹿の置物のしつらいができていた。
明日はお正月だ。

 先生の講評・・・日常と違う体験で、年末と新年を夫婦で迎えるその楽しさが
                        素直に伝わってくる。
           長年働き連れ添った夫に愛嬌がある。

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エッセイ 年末の旅行(3)

2018-12-14 09:06:37 | エッセイ


ッセイ 年末の旅行
(3) 課題 【到着・出発】 2018年3月22日

 夕方奈良に着いた。明日からの一日半、どう観光するか、駅の案内所を訪ねた。
行きたい所、観たいものを聞かれた。
一番に観たいものは東大寺の大仏様と、以前、東京の博物館で展示された仏様も観たいと言った。
すると、遠い西ノ京の唐招提寺から出発して、最後に大仏様を観るというコースを作ってくれた。

やっと奈良を観光するのだという気持ちになってきた。 
奈良の街を知りたいと少し歩いてみたが、年末の商店街は早仕舞をしている。

 食事を済ませ、ホテルに行く道を教わった。
「大きな通りを春日大社に向かって、突き当たったら右に行く」とシンプルなものだったが、興福寺わきの通りは長い坂道だ。タクシーが来ないかと時々振り返ったが全然通らない。
歩くしかない。歩くのが嫌いな夫の不機嫌が伝わる。

 小高い森の中に、瓦葺の大きな建物が闇の中に浮かんでいる。
「まさかあそこじゃないよね」、ホテルを予約した時、ネットではそんなふうには見えなかった。

 門に奈良ホテルの看板があった。
思いがけなく立派なホテルだ。
玄関までの長いこと、車が何台も追い抜いていく。

 木造建築のクラシックなホテル。
回転ドアを押すとフロントの男性が何くれとなく世話をしてくれる。
スニーカーは履いてはいなかったが、ザックを背負って歩いてきたのが場違いのようで気遅れを感じた。

 部屋は二階の洋室だった。
私は普段、畳の生活をしている。ベットに二日間寝るのは少し気が重かった。

 カーテンを開けると、木枠にカットガラスがはめ込まれたクラシックな窓だったのでびっくりした。
外の暗闇に目を凝らすと五重の塔が見える。
調度品は落ち着いたものが多く、空調も丁度いい。ベットの硬さもいい。
そういえば、ネットに浅田真央さん宣伝のベットを使っていると出ていた。
しばらくして居心地のいい何かを感じた。

  先生の講評・・・旅行記には季節感の描写が大切。
           下線はもう少し様子を書き込みたい。
           旅の楽しみが描かれている。
           私もあのホテルに泊まりたい!

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エッセイ 年末の旅行(2)

2018-12-05 16:16:27 | エッセイ


エッセイ 年末の旅行(2) 課題【泣く・笑う】 2018年3月9日

 十二月に入って奈良に行くことにした。
半ば思いつきと言ったらいいような計画だった。
夫が年末に二日間休みがある「奈良に行こうかな」と言ったからだ。
正月休暇を使えば二泊三日の旅行はできる。

 ネットで宿の検索をした。
観光シーズンでもないのに市内の宿はどこも満室。
予算を少し上げて調べたら一つ見つかった。
勿体ないかとも考えたが予約をした。
旅費が三割引きになるジバング手帳を持っている、そ
れで補えばいいと駅に行った。

手帳を出すと年末には使えないと言う。
宿の予約をしてしまったのだから、普通に新幹線の切符を取ろうとしたら、年末のこの日は夜の遅い時間しかないという。
お正月の帰省ラッシュというものを忘れていた。
諦めかけていたら、友人が新幹線のこだまを使ったらと教えてくれた。
夫はすぐに駅に行き「朝の早いグリーン車しかなかったからそれにしたよ」と言って帰ってきた。

 朝早い出発だったから午前中に京都に着いた。
夕方までの時間を随分昔に行った清水寺から三年坂、ねねの道から知恩院、丸山公園へと記憶をたどって歩いた。

 清水寺の周りには、貸衣装の派手な柄の和服を着た外国人が大勢居たが、羽織もショールもなく、時々吹く冷たい風に身をすくめ、カメラを向けあっていた。

 小さな路地に入っていくと、すれ違う人は外国人が多い。
仕舞屋風の家の生け垣にメニューの紙が揺れている。
ドアを押すと、お店のマダムが「フォー」と指を四本立てた。
私たちの後ろに二人が続いたので四人連れだと思われたらしい。
「二人です」と言ったら、「外人さんかと思ったわ」と濃い化粧の顔が笑った。

 土地の人が、お正月の準備をしている。
三和土に水をまいたり、ガラスを拭いたり、雑巾を絞るバケツから微かに湯気が立っている。
いつもの年だったら、私もあんな風に忙しくしていただろうと思った。

先生の講評・・・旅行記が下線の部分で転調して良い。旅の時空間が日常と重なっている。

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エッセイ 年末の旅行

2018-11-28 10:22:45 | エッセイ

エッセイ 年末の旅行(1)  課題【恋・愛・憎】 2018年㋁23日

夫は昨年、「もう一度、青森の蔦温泉に行きたい」、「奈良の大仏様を観たい」と二つのことを言い始めた。
蔦温泉は若い頃に行き、温泉では一番だと言っていた。
仕事の都合で休みが取れる時が大抵夏休みだった。
私は夏に温泉は乗り気になれなかったが、あれほど言うのだからと、今年は早い内に宿の予約をし、切符の手配をした。

青森は遠いと思い込んでいたが、新幹線で行けば思ったほどのことはなかった。
二泊し、中日は奥入瀬、十和田湖巡りをしたが、シーズンを外れた観光地は人影もまばらだった。

温泉は悪くなかった。いや今、帰ってからの感想はとても良かったと心に残る。
木の浴槽は広く、天井が二階以上あるほど高い。澄んださらっとした水質は期待以上だった。
私は温泉に行っても宿の待遇などが良ければいいと考えているほうだが、行けるものなら、もう一度このお湯に浸かりたいと思う。

今年の目玉の旅行をしたから、「奈良」は気持ちから外れた。
が、夫はあきらめていなかった。
秋の行楽シーズンのニュースが流れると「奈良の大仏様」を言い出す。
その度に「一人で行って来たら」と言ってはみたが、一人では行かないと言う。

昔は二人で旅に出る、なんて本当に夢だったのに、いつの間にかワクワク感がなくなった。
何なのだろう。いつか来る別れに未練を残さないようにとの神様の仕業だろうか。
よく思春期の娘が父親を嫌うのは、潜在的に近親相姦を避けるためだという。
又組み合わせに首をかしげるようなカップルが惹かれあうのは、よい子孫を残すためと聞いたことがある。

12月に入って、私は内視鏡検査をを受け体調をくずした。
おろそかな家事をし、とげのある言葉も使った。
夫は何も言わない。

自己嫌悪になった。
今朝も寒い中、会社に行った。
感謝が足りない。
このまま年を越すのは嫌だ。
今年中に奈良に行かなければと思った。

 先生の講評・・・下線部分で、夫婦二人の時をかみしめている。
           甘く、苦い。これがキャリアの味。

 つつじのつぶやき・・・ 昨年の大きな旅行でした。
                もう一年が・・・早いですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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エッセイ モーニングコーヒー

2018-11-20 16:03:00 | エッセイ

 エッセイ モーニングコーヒー 課題【自由課題】 2017.7.14

私は小さいときから、怖いものや気持ちの悪い話を聞くと夜中に夢を見、自分の声で目を覚ますことがある。
だから寝る前は、テレビの怖い番組や、むごたらしいニュースは見ないようにしている。

夫は、ミステリーやサスペンスドラマが好きだ。
以前は残酷な場面は眼をそらして一緒に見てはいたが、録画が出来る様になったら毎日見るので、付きあいきれなくなった。

家にはテレビが一台しか無い。
夫が見始めると、それを見たくない私は居場所がなくなる。
出来るならもう一台買えばいいのだが、リビングの大きなテレビを占領したい。

「今日は何人の死体を見たの? もっとおだやかな、二人で見られる番組がいい」と言うと、「分かった」と言いながら、少しの間は違う番組にに変える。
だがコマーシャルの間、あちこちチャンネルを回し、イライラしているのが分かる。
長い年月、自分の好みのものがきまってくる。
お互いに我慢しあっていると、口をきくのがぞんざいになり会話も少なくなった。

ぎくしゃくした時は、外に出るのがいい。
子供達がいた頃、これで何度か救われた。
夫は子供を叱って気持ちが収まらない、子供も叱られたことで悲しい気持ちが納められない。
しばらくして、お互いが「もう、いいか」と言う時分に、「散歩でもして来たら」とすすめると、親子ともすっきりした顔で帰ってくる。

これを思い出したわけではないが、休日の朝、散歩に誘った。
新聞を何度も読み返していたが、しぶしぶ身支度をした。
スニーカーに履き替え外に出ると気持ちが変わったのか、「モーニングコーヒーを飲もうよ」と、お金を取りに戻った。

散歩コースから離れるが、最近モーニングコーヒーを売りにしている喫茶店が出来た。
朝早いせいかお客さんが少ない。
大きな空間に二人っきり、仲直りと言うほど何かあった訳でもないが、小さな会話が生まれた。
若いときはいつも同じものを見て一緒に居たかったあの気持ちが、微かに思い出された。

今、自我が強くなって、譲れないことが多くなった。
自由にテレビのチャンネルも回したい。

 先生の講評・・・・夫婦間の感情の変化が下線の部分に表現されてよい。
              日常の具体描写があきさせないで読ませる。
            事物に即して書いているからだろう。

 つつじのつぶやき・・・前頁の「ふくれっ面」と不仲のようなエッセイですね。
                  でも、今、別に何にも変わらない穏やかな日を過ごしています。


 

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エッセイ ふくれっ面

2018-11-10 19:16:27 | エッセイ

 エッセイ ふくれっ面  課題 【泣く・笑う・いつもの顔】2016年10月28日

 朝、寝起きが悪い。小さなことが気になる。
夫は仕事がらみの案内状を、行く気がないのにとって置く。
開けていない封書がテーブルや、座ろうとした椅子に置いてあるとイライラする。

「これ、もう捨ててもいい?」
「まだいいじゃないか、どこに置いても」。

テレビで日課の経済ニュースを見る。
私も前は一緒に見ていたが、最近つまらなくなった

新聞を読み始めたから、「他にチャンネルを回していい」と聞くと、「まだ見ている」と言う。
この辺で我慢のおが切れそうになる。
多分頬がプーと膨れている筈だ。
これから会社に行って働いてくれる人だから、きちんと送り出そうと心掛けている、だから言いたいことを我慢する。

ごみを整理するふりをして離れた。
乗っていく自転車を通りに出し、靴を揃える。
この後は「行ってらっしゃい」と送り出せば朝の役目は終わる。

今朝はもう顔を合わせたくない、外の掃除を始める。
植木に絡んだ落ち葉をゆっくりとったり、草を抜いたりしていると此方に寄ってきて「行ってきます」と言う。
顔を見ないで、小さく「行ってらっしゃい」と言った。

出かけた後を見ると、食器は流しに、椅子もきちんと戻している。多少私の不機嫌に気付いたようだ。

昼、電話があった。
「これから名古屋に行ってくる、少し遅くなる」と言う。
予定では明日の筈だ。お金は持っているのだろうか。
聞くと「少しあるけど泊まりになったらきつい」と言う。思わず「届けようか」と言った。
「そうしてくれるとありがたい」。
駅の改札口で待ち合わせをする。
急いで身支度をしてバスに乗った。

改札口で待っていた夫はにやりとした。負けの笑いだ。
私はすっかり、今朝のふくれっ面のけりがついた。

  先生の講評・・・     朝の出勤前の夫婦の一瞬、目に見えるようだ。
                 事物だけではなく心理も微細に描いている。

  つつじのつぶやき・・・ 2年前の作品です。
                 相変わらずこんな朝を過ごしています。

 

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エッセイ 谷川岳の珈琲(1)

2018-10-16 07:46:17 | エッセイ

エッセイ 谷川岳の珈琲(1) 課題【切符・証明書】  2017年9月8日

若い頃、いつも集まっていた友人達と、近くの山へ行くことが多かった。
その中の一人、安藤さんは背が高く、おしゃれな気取り屋さんだった。
体力はありそうなのに、すぐに弱気なことを言う。
山道が長く続き、足元が危なっかしい時など、皆も我慢しているのにそれを言うから、途端に「弱虫ね」となる。

「私は銀座で生まれたの、こんな所は無理よ」
「育った所は違うでしょう」
その後アテネフランセに通い、通訳になると言って会社を辞めた。

一年ほどしてから皆で会った。
見違えるように体格ががっちりとして、日焼けしている。
私たちはどこか「フランス」的な雰囲気を予想していたから驚いた。
通訳はどうしたのかと聞くと、「無理」、後は何にも聞かないでと言うように強い口調で言った。
その代り新宿の山岳会に入って登山をしていると言う。

私たちは行ったこともない、遠くの有名な山を縦走したとか、雪山にビバークする等と、歯切れよくしゃべった。
「今度一緒に谷川岳に行こうよ、沢の水で入れた美味しい珈琲を飲ませてあげる」

谷川岳とは腰が引けたが、今迄大きな顔をした手前、林さんと私が行くことになった。

その日は天気が悪く、雨と風が吹いていた。
安藤さんは大きなザックを背負ってきた。
上越線の土合駅だったか長い駅の階段を上り、改札口で「東京からです」といって切符を出した。
又長い道を歩いて山に登り始めた。
樹木の生えてない岩山に取り付いたが、強い風が下からも煽る。
背中でザックがぐらぐらと揺れる、霧で何にも見えない。

不安がる私たちに「平気よ」と言いながら暫く登った。
降りてきた男性グループに「やめた方がいい」と言われた。
何かその先のことを話をしていたが、諦めたのか下ることした。

本降りになった沢道を、それぞれが黙って歩いた。

  先生の講評
          描写に徹しているのが良い。だからこそいろいろな解釈を
          さそい、余韻が残る。フランス語通訳志望を変じて山ガールへ。
          笑えるなー、人生の選択はそんなものかもしれない。

 

 

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エッセイ パソコン

2018-09-30 12:07:48 | エッセイ


エッセイ パソコン
  課題【洗濯・掃除】 2018.9.14

月曜日の朝、パソコンが壊れた。
スイッチを入れても、最初の画面が出た後は次に移らない。
前回使った時にきちんと終了していないと時々そんなことがある。
たかをくくってマウスを動かすが変わらない。
コンセントを入れ直しコードを確かめ、キーボードとマウスの電池も変えた。

古いマニュアル本を出し、出来そうなことをいろいろ試すが画面は凍ったまま。
次はどんな手を打てばいいのかと途方に暮れた。
初めて事の重大さを感じた。

メーカーに連絡をする。
「フリーダイヤルでおつなぎします」と言われてから長い時間待たされ、やっと修理の依頼にこぎつけた。
約束の日、メーカーから若い社員がやってきた。
持ってきた器械をパソコンに繋いで、こちらの言うことを聞きながら、次々とマウスを動かす、早い。

以前のパソコンにデフラグをした経験がある。最近立ち上がりが遅いのでそれをした。
デフラグとは散らばったデータを元の場所に戻す掃除のようなものだ。
その話をすると、原因はそれが大きな負担になったのだろうと言う。
結局修理は不可能に近かった。

私はもう買い替える気でいたからそれはいいのだが、中のデータが取り出せるかが一番の問題だった。
最近大事な文書を預かっている。
全部はバックアップに取っていない。

それから長い時間、隣に座って次々に出てくる画面を見つめた。
古いデータは外付けのバックアップに在り無事だったが、最近のデータやメールが殆ど消えてしまった。

その週は、セキュリティのソフトやデジカメ、プリンター等の設定にメールアドレス、パスワードを何度も打ち込んだ。
また、新しい機種の使い方に戸惑う。
聞けば丁寧に教えてはくれる。
だが電話の向こうで、こちらの入力を待っている気配が分かり慌てる。
「すみません」と何度も何度も言った。

一回り体が縮んだような気がした。

  先生の講評・・・
         
バーチャルなそうじ余話。幸田文の世界の現代版?
         アナログなそうじ感覚との比較があると立体感が出る。

  つつじのつぶやき・・・
        先生の言われるアナログの掃除との比較、難しい。
        この後電気釜も壊れました、周りも老化が進んでいます。

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