高知発 NPO法人 土といのち

1977年7月に高知県でうまれた「高知土と生命(いのち)を守る会」を母体にした、45年の歴史をもつ共同購入の会です。

第4回「学生と考える記憶の記録と継承」

2022-02-14 09:00:00 | 連載
高知大学地域協働学部教員の森明香です。

第4回「学生と考える記憶の記録と継承」
ビキニ事件を中心に その4

対面授業が可能となった
2020年10月からの2ヶ月、
30代から70代まで計5名の方を
それぞれゲストに招き、お話を伺った。
被爆者や元日本兵のご遺族へのインタビューを重ね
働きながら語り部をする方、
労災訴訟の原告団長を務める
ビキニ被災船員のご遺族、
平和教育に注力する現役/退職した小学校教員、
ビキニ事件を取材するジャーナリストだ。
ビキニ事件や戦争体験の継承実践に
取り組むようになったそれぞれの動機は、
各ゲストが同時代の歴史的な出来事や歴史問題、
たとえばベトナム戦争や東電福島原発事故、
日本の戦争加害や従軍慰安婦問題と
どう向き合おうとしたのか、
とも連なっていた。
被害を受け傷ついた主体が、
自らの傷を晒し、
時にその傷の意味や加害との因果関係を
“証明”し認められなければ、
救済や尊厳の回復に繋がることはほぼない。
日本社会のそうした側面を
目の当たりにしていたことが、
ゲストそれぞれのお話から窺えた。

学生たちにとっては、
教科書では学び得ないものだったようだ。
ある学生はレポートに次のように書いた。
「新しく知る事実があるたびに衝撃を受け、
そして今まで知らなかった理由は何なのか、と考えた。
その理由の多くは「関心がなかった」、
そして「知る機会がなかった」からである。
何事も関心を持って知ろうとしなければ
知る機会がないことを実感するとともに、
こんなに大きな被害を生んだ出来事を
知ろうとしなければ知らないまま
生きていけることにも驚いた」。

「なかった」ことにされ、
自らの身に降りかかったことの意味を知る機会を
社会から与えられなかった人たちから見た
歴史や社会がある一方で、「
なかった」ことにする力に抗い
加勢する未体験の人たちがいる。
その事実を具体的に知り感化されたからか、
学生たちは年度末の学習成果報告会で
「答えが簡単に出ない大学の学びにくじけず」、
「携わる全ての人の力を借りながら3人で助け合い、
成長しあえる1年にしたい」と語った。

その様子を見て、
2021年度からは継承実践をする人びとにくわえ、
ビキニ被災船員さんを訪ねることにした。

※ この記事は、NPO法人土といのち『土といのち通信』2021年11月号より転載しました。
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