秋の県展が始まりました。
わたしの作品は、前期(10月17日~10月27日)に展示されています。
制作途中の作品を見てみんないろいろなことを、言ってくれました。
「棚田なん?」
「そうそう。」
「おうちへ帰ろう、みたいなの?」
「そうよ~」
「ここへからす飛ばせたいねえ。」
「それはないでしょ。」
そう、今回は春の作品の延長で、棚田をモチーフにしています。
こういう景色を見ると、不思議な感動を覚えます。
以前発掘の現場で教えてもらったのですが、大昔から、森と川のあるところに人は住み着いたそうです。そしてそこから一歩も出ることなく生きて死んでいった人がいて、わが子を広い世界に送り出した人がいて、みずから新天地を求めて出ていった人がいて、今の社会がかたちづくられてきた・・・
その原点となったふるさとには、まだ自然とともに暮らしている人がいる。 都会の喧噪に疲れた人を癒してくれる風景と人と暮らしとがあるー だからわたしは棚田の中に家が点在する風景が好きです。
ここには自然と調和しながら生産し続ける暮らしがあります。都会で人工的な物に囲まれて消費生活を営む人々よ、時には自然に還ってみませんか? そして、新たな一歩を踏み出す力を見つけませんか。 そういう意味を込めて「回帰」と題をつけました。
帰るところは故郷でなくてもいいんです。 今の自分がある原点となった「時」、「場所」、「出来事」、
あなたの光り輝いていた時代はいつですか?
ことあるごとに帰っていきたい場所はどこですか?
遠い記憶をたどって行き着く思い出は何ですか?
作品を見る人に、そんな問いかけが生まれてきたらいいなあと、夕日に輝く棚田と川とを染めてみました。
革をろうけつ染めで染めた作品ですが、完成までにはいくつかの工程を踏みます。その要所要所で綱渡り・・・まあいつものことではあります。ぎりぎりまで何とかしない、その性分はなかなか変わりませんわ。 材料の関係もあり、へたをするとタイムアップになりかねない綱渡り制作でしたが、幸運に恵まれました。
1 下絵を拡大しに行ったら、営業日のはずの土曜日が、経営者が変わって半ドンに。 あと5分遅かったら店は閉まってた。 この日拡大できなければまた数日が無駄になるところでしたがセーフ。
2 革が染め上がっていよいよパネルに貼りつけるまでになって・・・
まだパネルを作ってない。 10年に一度の体調不良で寝込んだり、奈良へ出かけたりしたものだから時間もなかったし、木材を扱う気力もない。 多少サイズは違うけれど既製のパネルを買うことにしました。 が、お目当てのP50号というサイズのパネルが、画材屋さんにない 一般的に絵画で使うのはFサイズが多いので、Pサイズは取り寄せないとないそうなのです。
数少ない画材屋さんに電話して、3軒目にやっと1枚在庫があったのを手に入れました。これがなければ、2時間ほどで大工仕事をしなければならないところでした。
3 額縁を作ります。 下地となる木枠は前日の夜、弟の助けを得てできあがりました。 時間がなくて表面をサンダーで磨く時間がありませんでした。
さて、木枠に革を巻き付ける段になって
革が足りない!
在庫ありますよ~と言って持ってきてくれたのが、微妙に色違いで
どうしよう 革を取り寄せる時間はもうありません。
結局その色違いのが一番大きな革で、何とか足りたのです。 そしてできあがってみると予想以上に作品にしっくり合って、とってもよかったんですね。 怪我の功名とはこのことです。 額縁の効果はあなどれませんからね。
4 最後にー 推奨という賞をいただきました。 すべり込みです。
いくつかの幸運が積み重なってできたわたしの作品の前であなたの幸運を祈ったら、御利益があるかも=うそ