tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

トヨタ、日鉄、鋼材値上げで合意

2022年09月01日 21時05分49秒 | 経済
原油をはじめ、資源価格の値上がり傾向が続いているのに加えて、円安傾向が強まっている状況の中で、トヨタ自動車と日本製鉄が自動車用鋼材の大幅値上げについて合意したというニュースが入ってきました。

聞いた瞬間、今の日本であるべき企業間の相互理解が進んでよかったなという安心感を
持ったところです。

流石は日本のそれぞれの産業のリーダー企業の交渉です、2~3割の値上げという事で、かつてない大幅な値上げという事ですが、日本製鉄とトヨタ自動車が合意したのですから、それぞれの企業にとっての採算も、日本経済の中での経済合理性も、きちんと計算された上での合意だろうと思ったからです。

この所、輸入原材料が値上がりしても、日本経済自体が長期不況にさいなまれ、円レートが正常化して10年近くたっても経済成長はほとんど期待できず、輸入価格の上昇を国内価格に転嫁しようとしても、値上げすれば売れなくなるという恐怖感から価格引き上げを控えてしまう傾向が強く出ていました。

政府もそれを知ってか、石油元売り業者に補助金を出して国内価格を抑えるといった誤った政策を実施するという混乱状態でした。

つまり海外価格の上昇というのは、国内政策では対応できないことが解らず、国内での正常な価格機構の働きを阻害し、経済の混乱を一層複雑化しているのです。
輸入価格の上昇は、価格機構を通じて、総ての企業や家計、つまり日本全体であまねく負担するしか対策はないのです。

政府は本来であれば、輸入価格の合理的な国内転嫁の促進を経済正常化の指針とすべきところですが、全く誤った認識から、輸入部門や財政に負担を蓄積させる結果になっているのです。

同様な形で円安の場合を考えますと、円安が一方的に続けば、輸入部門に差損が蓄積し、輸出部門に差益が蓄積することになります。
この所の円安傾向は海外資源高騰で輸入部門に負担が蓄積されている上に、更に差損が重なり、一方、輸出部門では重価格の上昇の転嫁は不十分で、更に差益が大きくなるというアンバランスを作り出していました。

日本の場合輸出入はほぼ同額ですから、価格機構を通じて価格転嫁がスムーズに行われれば、輸出部門と輸入部門の差益と差損は価格機構によって調整され、結果は円安分だけ日本の物価水準が上がることで解決するのです。

こう見てくるともうお分かりと思いますが、トヨタ自動車と日本製鉄の今回の行動は、価格機構(プライス・メカニズム)による日本経済の活動の正常化を、民間企業の代表として政府や国民の前に「こうすべきなのです」とやって見せてくれたという事なのです。

経済の国際化が進めば、国内の政策で対応出来ることと出来ない事が発生します。政府は経済合理性よりも、得票につながることが大事ですから、政策は時に歪むのでしょう。

矢張り日本は、危機にあっては民間が知恵を絞ってその解決策を考えるという伝統の国のようです。
石油危機、プラザ合意、バブル崩壊、リーマンショック、いろいろありましたが、此処までやってきたのは殆どが民間の力です。

また、此処から民間が頑張ることになるのでしょうか。トヨタと日本製鉄の行動に、知恵と勇気を得て、産業、企業、そして家計が、持てる潜在力を、委縮せずに、思い切って顕在化させることを願うところです。

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