tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

マイナス金利の功罪6 金融信仰の生んだ鬼子

2016年02月24日 10時46分32秒 | 経済
マイナス金利の功罪6 金融信仰の生んだ鬼子
 このシリーズの最後に、マイナス金利とは何でしょうか? 素直に考えれば、マイナス金利というのは「当面お金には有用性がない」ということの証明でしょう。
 家でも車でも機械でも、人間が有用と感じれば貸して賃貸料が入ります。逆に有用性はないが保存したいという場合には、管理料や修繕費を払わないと誰も管理してくれないでしょう。
 マイナス金利は有用性を失ったお金の管理料というところでしょうか。

 アメリカがリーマンショックを引き起こし、世界金融恐慌かと言われたところを「世界恐慌は金融緩和で回避可能」と信じたバーナンキFRB議長が、異次元金融緩和で乗り切ろうとしたことが事の始まりだったような気がしています。

 世界中でカネ余りになりました。おかげでビジネスチャンスの多い新興国は随分潤いましたが、そうしたコストの安い国々の製品が流入する先進国産業は圧倒的に不利で、産業は不振、低成長経済、資金需要は増えません。
 
 おカネは「価値の貯蔵」という機能を持っていますから、経済活動不振で使わないお金は金融機関に預けておけばいいはずですが、金融機関もお金の使い道(貸出先・運用先)がありません。「大事に預かってくれ」と言われれば、「管理料をいただきます」ということになるのです。

 お金の使い道がない、お金の運用先がない、お金を使ってするビジネスがない、そしてその原因はどこの国でも経済活動が不振であるということですから、これは根の深い問題です。

 こうした状況の下で、「管理料」を高く取れば、「預けないで、使う方法を探すのではないか」というのがマイナス金利の考え方の基本でしょう。
 もともと経済活動のタネがなく企業活動が不活発でカネが余っているのですから、マイナス金利にしたからといって、ビジネスチャンスが簡単に見つかるものでもなさそうです。

 実体経済の成長が金利支払いを可能にするので、その逆、金利をゼロやマイナスにすれば実体経済が成長するという仮説が成立するのには、種々述べてきましたようにそれなりの条件が必要で、条件がなければ、「時間がたつから時計の針が動く、ならば時計の針を進めれば時間がたつ」と同じ、ありえない現実になりかねません。

 検討すべき点はいろいろあるでしょう。しかし基本的な太い線だけたどればこうなるのではないでしょうか。

 「デフレ3悪」で書きましたが、デフレは金融機関の収益を圧迫します。マイナス金利はその収益悪化を預金者の負担に振り替えることです。
すでに金利の引き下げ(マイナスはないでしょうが)、保険会社の保険料値上げなどが言われています。これはさらなる消費縮小につながるでしょう。

 住宅建設のような場合には、低金利は機能するでしょう。超低金利で、来年の消費税引き上げを前に駆け込み住宅需要が起きる可能性はありそうです。これはプラス要因です。
 とはいえ、マイナス金利政策は、基本的には、金融政策過信が産んだ鬼子のようです。

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