tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

「流動性の罠」の逆襲

2016年06月13日 11時16分20秒 | 経済
「流動性の罠」の逆襲
 5月のはじめ「鳥の巣箱、スズメの逆襲」を書きましたが、スズメはその後、隣家の樋に引っ越し、巣箱は「始終空」となり、雛誕生は残念ながら不発でした。
 隣家では「ゴミや雛が落ちて来て困るんですよ」と業者が巣を撤去していました。

 ところで問題はスズメならぬ「流動性の罠」の日本経済への逆襲です。
 日銀は2月16日、マイナス金利を導入しました。2月19日から6回のシリーズで日本経済初体験のマイナス金利 について分析してみました。
 結局のところ、私の結論は「これはまともな経済政策とは言えない」というものでした。

 二回の異次元金融緩和で ドル・円レートを80円から120円に戻し、デフレ脱却を果たした日本経済を、さらに無理に押し上げようとして、新たな金融政策「マイナス金利」に踏み込んだのですが、120円以上の円安は国際世論も認めないようで、国際投機資本に先読みされて、逆に円高方向に動き、今の106円がらみになってしまいました。

 日本経済の動向はといえば、四半期GNPは、対前年同期比で 今年1-3月に入って失速気味、選挙に向かって安倍内閣は、確約した消費増税を「新しい判断」という造語で延期せざるを得なくなりました。

 はっきり言えば、日本経済の不振は「格差拡大」「将来不安」「政治不信」といった社会学的なもので、こうしたものが、金融政策で改善することはないでしょう。
 市中の余剰マネーは、健全な経済活動には向かわず、向かうとすればギャンブル経済です。

 しかし我々庶民は土地バブルの崩壊を経験し、さらにリーマンショックで株や投信は結局損するものと信じさせられています。使い道のないマネーは国債に向かっていたのですが、マイナス金利で、「国債よ、おまえもか!」になりそうです。

 かつて書きましたように、預けて預かり料(マイナス金利)を取られるのは、預け先に面倒をおかけするからです。
 マイナス金利というのは「おカネを預かっても活用できない」つまり「 お金は役に立たないもの」ということを日銀が公式に認めたようなものでしょう。

 役に立たないものをいかに増やしてみても(金融緩和してみても)経済活動が動くはずはありません。これは金融政策の理論的否定です。

 結果は、「流動性をいくら増やして経済に効果はない」という「流動性の罠」の逆襲に、日本の金融政策は立往生ということになってしまったようです。
 これをまともな状態に戻すのは容易でないかもしれません。心配しています。