tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

経済政策の前提条件:「円高回避」

2016年06月03日 09時19分49秒 | 経済
経済政策の前提条件:「円高回避」
 国会会期が終わって、マスコミによれば、「選挙戦実質スタート」だそうです。
 消費増税延期でポピュリストぶりを発揮した安倍政権ですが、残念ながら実質選挙戦第1日の昨日は東京市場は大幅反落になりました。

 1円超の円高で、日経平均は393円の下げ、解説者の発言では、株安が円安につながったなどと言っていますが、この間は、円高になるから株は下がるといっていたようでした。「卵と鶏」は時々入れ替わるようです。

 安倍さんは「アベノミクスは成功」と言っていますが、その成功は$1=¥80が120円になったことがそのすべてだという事は多くの人に一致した意見でしょう。
 したがって、109円とか108円になると、アベノミクスの効果はどんどん後戻りするわけで、これは大変です。

 安倍さんにしてみれば、日本の財政再建が遅れると巨大赤字に苦しむ日本政府の信用がますますなくなって、円安になるから「追い風」と思ったのかもしれません。 
 一方、アメリカは金利引き上げ、金融正常化に向かっていますから、傾向としてはドル高のはずで、これも日本経済に追い風という思惑でしょうか。

 ところが、この所の動きを見ていますと、FRBが昨年末最初の利上げに踏み切り、日本の方は今年2月マイナス金利を導入したにもかかわらず、円レート円高方向に向かい、110円を切るのが常態のようになっています。

 経済回復と自賛するアメリカのドルは下がり、消費増税実施もできない日本の円は高くなっているのです。一般の経済学、金融論とは全く逆な動きです。
 このままじりじり円高が進み$1=¥100がらみになれば、アベノミクスの経済効果の半分は元に戻ってしまします。

 伊勢志摩サミットで 為替問題は当然取り上げられると思っていましたが、安倍さんの「財政出動」一点張りの主張の中で、ほとんど触れられなかったようです。

 背後にはいろいろな事情があると思います。今の金融市場は、正常な市場経済前提の「学問としての金融論」で動いていうのではないようです。
 万年赤字国のアメリカは、政策金利を引き上げても、ドル高は絶対回避したいと思っているでしょう。世界の金融市場はアメリカ主導で動いていますから日本は大変です。

 日本は経済成長もままならず、財政は世界最悪クラスの借金まみれの政府ですが、国民は堅実で、増えない所得の中からもきちんと貯蓄し、その結果、ドイツに次ぐ経常黒字国になっています。

 この問題は大変根の深いもので、アベノミクス程度では決して調整されないドルと円の 底深いギャップの基底をなしています。

 安倍さんがいかに記者会見で説明しても、消費増税を延期しても、10兆円の補正予算を組んでも、多分現状は基本的には変わらないでしょう。円高に苦しむ日本経済は続きそうです。

 それでも日本人は頑張ります。苦しみながらも世界が必要とする財やサービスを真面目に几帳面に提供し続け、健全経済を維持していくでしょう。
 安倍政権はこの健気な日本国民の努力に乗っているからこそ、何とかなっているということでしょうか。
 「こんなに頑張っているのに生活は一向に良くならない・・・」 今のアベノミクスでは日本国民の苦労はこれからも続きそうです。