tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

平均賃金上昇5%で経済バランス回復か?

2022年10月12日 14時11分19秒 | 労働問題
最近の企業調査では正規社員不足の方が非正規社員不足より問題といったものもあるようです。

非正規の賃金の低さに頼り、教育訓練の手抜きをした結果でしょう。確りした製・商品やサービスを提供するには、訓練の行き届いた正規社員が必要だったという反省の結果でしょう。

長期不況の中で緊急避難のつもりの雇用・人事政策が長期になり過ぎて人材の保有に歪みが生じてしまっているのです。
非正規の正規化の問題は2013~14年の円安進行の過程でやっておくべきことだったのでしょうが、10年近く遅れてしまいました。

日本経済が競争力を取り戻すためには従業員の教育訓練が必須になります。
勿論非正規でもキチンと教育訓練をすればいいのですが、そうすれば必然的に正社員としてずっと企業にいてほしい人間になるのです。

当然賃金は引き上げなければなりません。非正規雇用で安く上げようとしたときの逆が起きるわけです。
これからこうした現象が起きざるを得なくなるでしょう、表題に掲げた平均賃金上昇の中にはこうした部分も当然入って来ます。

ところで、この所、物価が上がって来ています。長い間我慢してやりくりして来た輸入原材料などの値上がりが限界にきて一斉に製品価格に転嫁する動きが出ています。

プライス・メカニズムの機能を我慢して使わなかった事で経済停滞が起きていましたが今回の一斉値上げで関連業界は少し活性化するでしょう。

これをきっかけに日本経済に、プライス・メカニズムが正常に働くようにすれば、日本経済自体が活性化してくるでしょう。

そう考えてきますと、次にプライス・メカニズムを正常に働かせる分野は労働の対価、人件費の分野という事になるのでしょう。

物価が抑えられていたことで人件費もずっと抑えられて来ましたが、本来政府・日銀、特に日銀は毎年平均賃金を3%上げ、その内1%は生産性上昇(経済成長)で打ち消して2%の賃金インフレが発生するというのを目標にしていたのです。

ですから、今輸入物価の価格転嫁で物価が3%上がっても「2%インフレ目標は達成されていない」と異次元緩和を継続しているのでしょう。

その意味では来春闘で5%の平均賃金の上昇があれば、1%は経済成長で消され、2%は輸入インフレで消されても、後の2%は「インフレ・ターゲット」に見合うので異次元金融緩和・ゼロ金利を見直してもいいという事になるのではないでしょうか。

その後原油などの海外価格上昇が収まれば、目標の2%インフレの達成がはっきり見えるようになるという事でしょう。

プライス・メカニズムの正常な働きを想定すれば、日本経済のバランスの正常化に5%程度の人件費上昇が必要という回答が出てきます。
この辺りの平均人件費上昇は、来春闘への労使の賃上げの議論への参考にもなるのではないかと思っています。