tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

円安に慌てる政府、動かない日銀、さてどうする?

2022年10月13日 16時05分11秒 | 経済
アメリカが政策金利の大幅引き上げ(0.75%)を3回やる一方、日銀は異次元金融緩和を当分続けますと明言する中で、円安の進行に慌てた政府はドル売り円買いの為替介入に踏み切った9月23日のこのブログで「どうなってるの」と書きました。

介入は史上最高の3兆円規模とか言われましたが、市場も一瞬驚いたのでしょう145円台になっていた円レートが140円台まで円高になりましたが、1日過ぎると144円台に戻ったようです。

為替介入は「良くない事」というのは世界の常識です。幸い、アメリカもEUもこの度は「怪しからん」とは言わなかったようですが、国際投機資本はもそう何回もできないだろうと読んで、昨日にはまた145円台後半の円安になっています。

もともと、アメリカやEUの中央銀行が、インフレ抑制のために政策金利を上げたのが原因の円安ですから、日本も少しインフレになりましたと公定歩合を上げれば済むことでしょうが、日銀は動きません。

この辺りが、政府と日銀が了解のもとでやっている事か、意見が対立しているのかは解りません。マスコミは対立しているように書いている所もあります。

政府と日銀の関係は別にして、今のような場合、一体どうすれば最も合理的なのかという事をやっぱり考えておかなければならないのではないかという気がします。

問題は、日銀が、「2%のインフレ・ターゲットという目標が達成されていないのだから、達成させるまでは異次元金融緩和を続ける」と言っている事を手掛かりに考えてみますと、こんなことになるのではないでしょうか。

金利政策の役割は多目的です。マイルドインフレを起こすためにゼロ金利という政策もあるでしょう。黒田総裁ご自身がやったように為替レートを動かすためにも使えます。また、今のアメリカやEUのようにインフレを抑えるためにも勿論使えるわけです。

今の日本の場合は、海外の物価高が輸入インフレという形で入って来ています。
これまでは日本全体の雰囲気として国内製品への価格転嫁が行われにくい雰囲気があり、利益圧縮、賃金抑制などの形で輸入関連産業を中心に為替差損が皺寄せされ、国内経済活動の不活発の要因になっていました。

今起きている物価上昇の動きはアベノミクス以来のこうした現象の鬱積の反動でしょう。欧米のような行過ぎた便乗値上げ、便乗賃上げは起きないでしょうが、多少は行き過ぎる可能性も無きにしも非ずです。

その予防のための金融引き締めはあってしかるべきでしょう。
嘗ての経験で言いますと第2次石油危機の時、値上げも賃上げもほぼ合理性の範囲で、欧米のスタグフレーション化をしり目に、日本経済は安定成長を堅持し欧米を驚かせました。しかしその折も日銀は短期ですが公定歩合をきちんと引き上げています。

その伝でいけば、今、輸入インフレの予防行動としてゼロ金利をプラスにという是正には合理性があります。
同時にそれは永続的な円安防止策となり、輸入部門に差損が滞留、輸出部門に差益が蓄積という所得構造の不均等化の是正につながり、経済全体の安定に寄与するはずです。

更に適切な程度の賃金上昇が労使で合意されれば、インフレ・ターゲットの目標に近づくことも可能でしょう。

先ず政府は今迄の補助金政策をやめて、輸入原材料価格上昇の国内製品価格への合理的な転嫁を奨励すべきでしょう。財政には大きなプラスでしょう。物価の番人の日銀は便乗値上げには目を光らすべきでしょう。輸入物価の上昇に起因する範囲の国内の物価上昇であればそれは合理的なものでしょう。

輸入価格が国内価格の合理的に転嫁されれば、つまり価格機構が正常に作動すれば、不公平は起きません。便乗値上げのある諸外国に対しては国際競争力は維持強化されます。

今迄の日本経済の閉塞状態を脱出するのに、絶好の「国民の意識転換」のチャンスが来ているように思われるところです。このチャンスを、政府、日銀が巧く活用されることを願ってやみません。