tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

2023年春闘に向けて:3 政府は何でも自分でやろうとした

2022年10月01日 14時25分41秒 | 労働問題
自由主義社会の政府の仕事というのは、自由競争社会の良さを適切な範囲で生かす社会・経済環境を整備するという事でしょう。

例えて言えば自由競争を原則に置きながら、企業の独占は許さない(独占禁止法)という社会・経済の在り方です。

所が安倍政権は、過去の思うようにいかなかった経験から「決める政治」を掲げ、何でも政府(閣議決定)で決めて、あとは絶対多数で押し通すという政策を「善し」と考えていたようです。

強行採決も目立ちましたが、世界中で労使の専管事項が常識の賃金決定まで、政府が決めようとしたようです。
当時2%インフレターゲットが言われていました。これは実質経済成長が1%なら賃上げ3%、成長が2%なら賃上げ4%(輸入インフレなし)という計算です。

それで、それまでのゼロ・マイナス成長から最低1%のプラス成長を見込んで、3%の賃上げを先ず労使にやらせようということにして、労使の代表を呼んで「賃上げは3%」と言ったのが官製春闘の始まりでしょう。

労使代表はまさに、迷惑と困惑だったでしょう。
久方ぶりの大幅円安で、輸出関連企業では大きな為替差益が出ていましたし、国際競争が優位に変わる産業もあります。当然ある程度の賃上げは労使ともに考えていて、「政府に言われて賃上げ」という事ではないのですが、企業労使が話し合って出た結果について、安倍さんは「自分の手柄」とメーデーの挨拶で自画自讃しました。

こうした我田引水的な理屈付けと強い自己肯定意識による錯覚が、舶来崇拝の「働き方改革」にもつながり、今後の日本の労働問題に不必要なトラブルと失敗を引き起こすことを本気で心配するところです。

大変危険なことに、こうした傾向は「聞く耳を持つ」と言って登場した岸田総理にも伝染して来たようで、その態度は、典型的には今回の安倍国葬によって広く認識されるようになりました。

話がそれましたが、自由主義経済社会の良さは、人間の自由な精神を社会正義という概念で許される範囲まで出来るだけ広げることによって、その成長発展を促進するというところにあります。すべてを政府が決めるというのは全体主義、独裁主義で、いつかはプーチンのロシアのようになるのでしょう.

一人の知恵は大衆の知恵には到底及びません。政治主導は、自由経済の原則にはとても敵わない事が、アベノミクスで実証されたというのが現状の日本経済低迷の説明になるというのも情けない話です。

それでは2023年春闘に向けて労使は何をしたらいいか、政府はどんな環境整備をしたらいいのかを具体的に考えなければならないでしょう。

賃金交渉については、労使が日本経済と企業経営の現状についての認識を共有し、望ましい賃金決定を議論し、その実現に必要な環境整備については政府が労使の意見を聞き、適切な政策を考えるという形での、政労使三者の自由闊達なコミュニケーションと相手を信頼する協力体制がまず必要でしょう。

更に重要なのは目的の共有で、これまでの格差社会化の進行を阻止し、以前のような格差の小さい社会(一億総中流と自認できるような社会)をどう作るかが重要な共通の目的の1つになることは大変大事でしょう。

GDPの数値を増やす算段ばかりするのはやめて、国民のために良い社会を創れば、GDPは結果として自然に増えてくると考えを変えるのは如何でしょうか。