tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

イタリア、不思議なほどに柔軟な国

2022年10月26日 14時57分49秒 | 文化社会
イタリアで右派連立政権が発足しました。
首相になったジョルジャ・メローニさんは、マスコミによれば、イタリア初の女性首相という事で、イタリアというお国柄からすれば、「えぇ、初めての!」と思われる方もおられるのではないかといった感じです。

そのイタリアでマスコミの前評判と言えばメローニさんは「極右」で、第二次大戦でイタリアを率いたムッソリーニのファシスト政権の流れをくむ「イタリアの同胞」党の党首です。

掲げる主張は「自国優先主義」、極右と極左は通じるところもありで、ウクライナ侵攻問題のある中で、EUとの関係、プーチンのロシアとの関係はどうなるのか心配されているなどと言われていたようです。

連立の相手は矢張り右派の「イタリアの力」党でかつてはベルルスコー二首相を出しています。

ファシストはナチスよりも問題があるとか、自国優先という考え方は、何かトランプさんに似たものを連想そうさせるなどとロシアのウクライナ侵攻のさなかでEUの結束に問題が出ることも懸念されるなどの意見もあったようです。

所が蓋を開けてみますと、こうした見方は全くの杞憂であったようで、EUに対してイタリアの意見を強く反映すると主張しつつも「EUはわれら共通に家であり、イタリアはその一員である」と明言、西側の一員としてウクライナ支援は当然」という立場を鮮明にしたようです。

EUも世界も安心という事になったようですが、イタリアというのは不思議な柔軟性を持った国で、嘗ては共産主義者であるベルリンゲルが「ユーロコミュニズム」を唱え、この思想は一世を風靡した感すらありました。

ベルリンゲルはイタリア共産党の書記長を10年以上勤め、共産主義者でありながら、共産主義を否定するキリスト教民主主義と妥協し「歴史的妥協政策」と言われながら連立政権を生むと言った柔軟性を示しています。

その親しみやすい風貌と柔軟な思想の展開で、イタリアばかりか世界の人気を集め、今に至る「ユーロコミュニズム」は世界にその記憶をとどめる言葉になっています。

何故イタリアで、こうした柔軟な、世の中を驚かすような、斬新、特異な思想が生まれるのかはわかりませんが、こうした柔軟性が、極めて教条的な極右の思想の中で生まれて来るというのはその培養地としての、社会的伝統・文化的背景といった何かがイタリアという国、風土にあるのかもしれません。

考えてみれば、イタリアは、ルネッサンス発祥の地でありますし、新しいものでも、古いものでも、教条的なものでもリベラルなものでも、それぞれに何か良い所があれば組み合わせてみようという超柔軟的な考え方が存在しうるところなのかも知れません。

時と場合によるのかもしれませんが、リーダーにはブレない事も必要ですが、時に柔軟性が必要なこともあると改めて考えさせられたところです。