tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

人生には3つの時期:転換点は2度あります

2022年10月29日 15時50分11秒 | 経済
3つの時期というのは(一般的なパターンですが)
① 出生から就職まで 
② 就職から引退まで、
③ 引退から人間卒業まで
人間卒業後は誰にも解っていませんので、ここでの転換点には入れません。

このブログは「付加価値」概念を中心にしていますから、この3つの時期を付加価値という見地から見ますが、「出生から就職まで」は、他人の生産した付加価値で生活します。「就職から引退まで」は、自分、家族、社会のために付加価値を生産します。引退から「人間卒業まで」は、自分の生産した付加価値の蓄積と他人の生産した付加価値で生活します。

最初の転換点、付加価値の非生産者から生産者への転換は、日本では「学卒一括採用」という形で行われるのが一般的で、これは、世界の中で見ても大変上手く行っている転換方式と言われています。

ところで、この最初の転換点について、「政府の働き方改革」の中では、新卒一括採用方式について再検討の要があるように言われていますが、学生も企業もこれを辞めようという人はあまりいませんから将来、自然に変化が起きるまで、政府は口を出さない方がいいでしょう。

という事で、ここで取り上げようとしているのは第2の転換点です。

第二の転換点については今まで、企業もいろいろと苦労して考え、政府も苦労して、後追いではありますが、何とか対応しようと努力して来ています。
しかし、ここ来て、後追いの対応では、対応しきれない状況が明らかになり、それに、日銀の長期のゼロ金利政策の継続で、その限界が見えそうになって来ています。

ここで、冒頭に掲げた「人生の3つの時期」をベースにして、第2の転換点について基本的な理念を確立し、抜本的で、状況変化に柔軟に対応できるような本格的なあり方を衆知を絞って作り上げておかなければならないように思われるところです。

それには、まず問題発生の根本原因を確り見極め、それに的確に対応できるような「基本設計」が必要と考えるのが望ましい本格的アプローチでしょう。

そこで先ず、事の起こり、原因を客観的に見ますと、平均寿命が延びてきたことが原因であることは誰でもわかります。

平均寿命の推移をみますと。もはや戦後ではないと言われ、高度成長の出発点になり戦後の日本の雇用制度が固まってきた1955年には男63.6歳、女67.8歳でしたが、厚労省による2040年の予想では男83.3歳、女89.6歳です。

つまり定年55歳という戦後の定年設計の背景は、当時の感覚ですから平均寿命男63.6歳といった状況だったのでしょう。それが今後は男83.3歳、女89.6歳を前提にする必要があるという事になっているのです。

つまり起きている問題は、③引退から人間卒業までの期間が20年ほど伸びているのです。そして、この期間は「自分の生産した付加価値の蓄積と他人の生産した付加価値」で生活する期間なのです。(ここではゼロ金利、貯蓄に利子がつかない事の弊害も出て来ます)

この平均寿命の20年の伸びに対し、政府は、雇用面では、定年年齢を60歳とし、65歳までの雇用努力義務を決め、5年乃至10年の雇用延長で「付加価値生産期間」を伸ばして対応を図ってきました。

そして、社会保障の面では年金の支給開始年齢を5年遅くして何とか辻褄を合わせようと努力してきた事はご承知の通りです。

然しこれではとても対応できそうにないという事は誰が見ても歴然でしょう。「③引退から人間卒業まで」の時間の伸び20年に対して、5年10年の調整では足りません。年金は部分積立方式ですから、ここでもゼロ金利問題は深刻でしょう。
結果として、いま日本が抱えている最大の問題の1つは、ここにあるという訳です。

しかし政府は、国民に厳しいこと言うと、政権からからずり落ちる可能性が高いという惧れから、問題解決には踏み込めず、言葉では「全世代安心の社会保障システム」「100年安心」などという響きのよい言葉だけを作って、何とか出来そうなふりをしているといことではないでしょうか。

「嘘は罪」という歌がありますが、嘘はいつかはバレます。老後生活に2000万円足りないのか、3000万円足りないのか、審議会の答申を、担当大臣が受け取らないなどというバレバレの隠し立てなどをしているから年金問題が政争の具になるのです。

誰がやっても出来ない事は出来ないのですから、国民にすべて本当の事を見せ、政府も(与党も野党も)企業も、国民も、みんなで力を合わせて取り組むしかないのです。

このブログも真面目に、解決に必要なことを追ってみるつもりです。