定年再雇用の賃金の考え方(続き)
前回、日本の正規雇用従業員に対する賃金は定年時で清算がされているという制度になっているという歴史的経緯について見ました。
もともと、定年年齢は55歳でしたから、それが60歳に伸びたときから、賃金制度の改定は忙しくなりました。
当時の賃金制度のもとでは55歳時点の賃金が生涯賃金の中で最も高いわけで、前回述べましたように、その水準は、その時点での会社への貢献に比し割高になっています。定年が60歳に伸び、伸びた5年間、その割高の賃金を払えば、生涯貢献と生涯賃金のバランスが崩れますので、60歳でバランスが取れるように賃金の上昇カーブを寝かせる必要があります。
賃金構造基本調査の標準者(新卒採用で定年まで勤務)の賃金カーブの傾斜の経年変化を示したグラフなどはよく当時見られましたが、年功色は随分薄められ、賃金カーブは寝てくることになりました。
退職金の勤続年数による伸び方も、昔の幾何級数的なものから職能資格に応じたポイント制などで、60歳定年に見合ったものになりました。
定年55歳の時期にも、定年再雇用の制度はあって、55歳以降、①賃金を年々下げる、②一律に下げ、後はフラット、③一率下げ、後は多少の定昇、などの選択肢を示して労使交渉などというのもありました。
結局は「②下げてフラット」が一般的のようでしたが、それが今60~65歳の定年再雇用で踏襲されているのです。
勿論高齢者には個人差もありますが、そこで個人別に減額幅を査定するとなると、これは企業内の人間関係に影響しますから、「一律何%カット」という方式が一般的になります。減額すること自体は日本の正社員の労使関係の中では納得されています。
そこで、何%カットが合理的かという問題です。(通常勤務を前提にします)
問題になっている「賃金は減額すべきでない」も「4分の1に下げる」も、以上のような経緯から見れば妥当性を欠くでしょう。何時も指摘しますように「真理は中間にあり」なのです。
下限を考えれば、定年退職者は経験豊富ですから初任給より高いのは当然でしょう。長期不況のさなか、新卒採用をストップし、定年者を「初任給+α」で再雇用して、その方がずっと効率的と言っていた経営者もいました。
理論的に言えば、職務遂行能力が維持されている限り、生涯賃金の平均値、あるいは現行の初任給と60歳時点賃金の中間値あたりが最低限度で、それに習熟度を勘案するのが適切という指摘もあります。
正式な統計調査はないようですが、こうした観点から、常識的な減額幅は3割から5割といった数字が多いようです。(管理職を降りれば手当分は減るでしょう)
通常、定年後は、1年ごとの契約更新です、勤務態様が変われば、当然差は出ます。
結局は60歳までは清算されているという前提で、「定年退職者の職務遂行能力と勤務体制を勘案」、あるいは、「この能力の人を中途採用したら」といった視点も参考に、労使でよく話し合い、双方が納得するところで労使協定にするというのが合理的な決め方の基本でしょう。
前回、日本の正規雇用従業員に対する賃金は定年時で清算がされているという制度になっているという歴史的経緯について見ました。
もともと、定年年齢は55歳でしたから、それが60歳に伸びたときから、賃金制度の改定は忙しくなりました。
当時の賃金制度のもとでは55歳時点の賃金が生涯賃金の中で最も高いわけで、前回述べましたように、その水準は、その時点での会社への貢献に比し割高になっています。定年が60歳に伸び、伸びた5年間、その割高の賃金を払えば、生涯貢献と生涯賃金のバランスが崩れますので、60歳でバランスが取れるように賃金の上昇カーブを寝かせる必要があります。
賃金構造基本調査の標準者(新卒採用で定年まで勤務)の賃金カーブの傾斜の経年変化を示したグラフなどはよく当時見られましたが、年功色は随分薄められ、賃金カーブは寝てくることになりました。
退職金の勤続年数による伸び方も、昔の幾何級数的なものから職能資格に応じたポイント制などで、60歳定年に見合ったものになりました。
定年55歳の時期にも、定年再雇用の制度はあって、55歳以降、①賃金を年々下げる、②一律に下げ、後はフラット、③一率下げ、後は多少の定昇、などの選択肢を示して労使交渉などというのもありました。
結局は「②下げてフラット」が一般的のようでしたが、それが今60~65歳の定年再雇用で踏襲されているのです。
勿論高齢者には個人差もありますが、そこで個人別に減額幅を査定するとなると、これは企業内の人間関係に影響しますから、「一律何%カット」という方式が一般的になります。減額すること自体は日本の正社員の労使関係の中では納得されています。
そこで、何%カットが合理的かという問題です。(通常勤務を前提にします)
問題になっている「賃金は減額すべきでない」も「4分の1に下げる」も、以上のような経緯から見れば妥当性を欠くでしょう。何時も指摘しますように「真理は中間にあり」なのです。
下限を考えれば、定年退職者は経験豊富ですから初任給より高いのは当然でしょう。長期不況のさなか、新卒採用をストップし、定年者を「初任給+α」で再雇用して、その方がずっと効率的と言っていた経営者もいました。
理論的に言えば、職務遂行能力が維持されている限り、生涯賃金の平均値、あるいは現行の初任給と60歳時点賃金の中間値あたりが最低限度で、それに習熟度を勘案するのが適切という指摘もあります。
正式な統計調査はないようですが、こうした観点から、常識的な減額幅は3割から5割といった数字が多いようです。(管理職を降りれば手当分は減るでしょう)
通常、定年後は、1年ごとの契約更新です、勤務態様が変われば、当然差は出ます。
結局は60歳までは清算されているという前提で、「定年退職者の職務遂行能力と勤務体制を勘案」、あるいは、「この能力の人を中途採用したら」といった視点も参考に、労使でよく話し合い、双方が納得するところで労使協定にするというのが合理的な決め方の基本でしょう。