tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

定年再雇用の賃金の考え方

2018年04月02日 11時04分42秒 | 労働
定年再雇用の賃金の考え方
 北九州のある企業で、定年再雇用の際に賃金が75%減額され定年時の25%になったので減額が大きすぎるのではないかという事でしょうか、定年再雇用で賃金4分の1が妥当かどうかが最高裁まで争われ、会社に慰謝料の支払いを命じた判決が確定したとの事です。

 さきに、広島の企業でも定年再雇用で賃金が下がるのは同一労働同一賃金の原則に違反するという訴訟が起き、一審では勝ち、二審では負けましたが、控訴しているという事です。

 定年を境に同じ仕事をしていても、賃金が下がるというのは、確かに同一労働同一賃金の原則から言えば、おかしいでしょう。しかし、日本のほとんど会社では、定年再雇用で賃金は下がるという形になっていて(就業規則、賃金協定など)、それが常識として通用しています。

 物事は全体を見ないと判断を間違えます。一部分だけを見ておかしくても、全体を見れば適切という事はどこにでもあります。
 という事で、この問題は、なぜ定年再雇用といった問題が起きて来たかという歴史的な経緯から賃金システムの全体を見、その上で判断しないと見当違いになるのでしょう。

 日本の定年制は、かつては一般的に55歳でした。かつては平均寿命も短く、老化も早く、隠居などという慣習もありました。
 しかし平均寿命が延び、老後が長くなり、もともと働き好きの日本人です、もっと長く働きたいと思う人も増えました。

 そして、決定的なのは年金支給年齢が60歳、更に65歳になったこと、そして企業には65歳までの雇用が義務付けられるという、社会の変化に適応した制度改正が行われたことでしょう。

 もともと日本の賃金制度は年功的ですから、若い時は働きより低い賃金、定年間近では働きより高い賃金というシステムになっていて、定年時の55歳で丁度バランスが取れるという形でした。つまり生涯賃金が生涯の働きに見合うという形です。

 ですから、定年が伸び、再雇用期間が加わると、賃金体系をどう再設計するかは極めて大きな問題になりました。
 特に大手企業や金融機関などの、年功色が強かったところでは、旧定年時の賃金を払い続けたら大変ですから、賃金体系の変更には、労使ともに苦労してきています。

 その結果、先ずは年功色をいかに弱めるかが課題になり、そして、定年後再雇用の賃金をどうするかがもう一つの問題で、今それが一部でトラブルになっているという事です。
 
 これがこれまでの経緯ですが、つまり、基本的には、(勿論それぞれの企業の賃金制度が適用になる正社員の場合ですが)定年までの期間で、会社への貢献と賃金総額とは見合ったものになっていて、退職金も含めて清算されている。というのが各企業の賃金制度の前提です。

 さて、清算が終わった後の賃金水準はどうしたらいいか、というのが、定年後再雇用の賃金水準を決めるときの問題です。次回その点を中心に見ていってみましょう。