tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

円高の可能性がもたらす不安と賃上げ問題

2016年11月18日 11時16分06秒 | 経済
円高の可能性がもたらす不安と賃上げ問題
 安倍・トランプ会談が終わって記者会見がありました。より良い日米関係に向けてよい話し合いが出来たとのことですが、非公式会談なので中身には触れないという事でした。
 新しい日米関係が今後の為替レートにどんな影響を与えることになるのでしょうか。

 ところで、物価と賃金の関係に戻りますが、前回の終わりに、為替レートの問題が絡んでくると書きました。
 為替レートと賃金問題は関係ないように思いますが、実は、経済計算上は「直接の」関係があります。

 どういう関係かといいますと、例えば、10%円高になると、それはドル建てで見れば、日本の賃金も物価もともに10%上がったということになるという関係です。逆に10%円安になれば、ドル建てでは賃金も物価も10%下がるわけです。

 こう考えれば、 プラザ合意の円高で日本経済は大変苦労し、リーマンショックのさらなる円高で瀕死の日本経済になり、2発の黒田バズーカ( 異次元金融緩和)で円安になって、やっとまともな経済状態に回復したこともご理解いただけると思います。

 問題は、ご承知のように アメリカは万年赤字の国、日本は万年黒字の国です。円は世界中から信用されています。ですから、何かあったら資金は安心な円にして持っていようという事になって、円を買う人が多く、円高の可能性が何時も強いことです。

 経営者は常に円高を恐れて企業体質の強化(内部留保の積み増し)を測ります。消費者や労働組合も同じです。何時円高になるかわからない、賃金引き上げは無理できない、企業が倒産したら元も子もない、最大の防衛策は出来るだけ消費を切り詰め貯金に回すことだと考えます。

 そしてこの貯蓄志向が、経済計算では日本の黒字を直接に増やしているのです。これは勤勉で堅実指向の日本人の性格が反映したものともいわれます。結果は「貯蓄増→黒字増→(円高心配)→貯蓄増→黒字増」の悪循環です。

 それだけではありません、これに加えて、日本は超高齢化です。社会保障費は増え政府は民間から巨大な借金をしています。近い将来必ず増税になるでしょう。教育費も上がるでしょう。
 ですから、どこの家計も、貯蓄に熱心です。しかも貯蓄してもゼロ金利です。貯蓄の積み増しが必要です。結果は、 消費性向低下、賃上げをしても消費は伸びないという事になります。

 賃上げさえすれば景気が良くなるという思い込みがいかに合理性のないものかお分かりいただけるのではないでしょうか。

 貯蓄志向、消費不振の原因は大きく2つ、「先行き不安」と「 格差社会化」といわれています。おそらく誰もが実感できるところでしょう。
 今必要な経済政策は、この問題の解決に直接切り込むことなのです。このブログで繰り返し述べていますように、賃上げ奨励などとは全く違ったアプローチが必要なのです。