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tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

インフレと賃上げ、為替レート、生産性の関係

2016年11月19日 10時20分37秒 | 経済
インフレと賃上げ、為替レート、生産性の関係
 前々回、前回でインフレと賃上げと為替レートの問題については、基本的なメカニズムを見て来ましたが、今回は最も大事な生産性との関係について整理しておきたいと思います。

 個人的には日本人は多様な「生産性向上」に優れた能力を持っていると私は信じています。そして前2回述べてきましたように物価(インフレ)問題に「真正面から」「直接に」対応できるのは、生産性の向上だけです。

 例えば、1970年代前半に起きた2回の石油ショックで、原油価格は数倍に値上がりし、第一次オイルショック直後はパニック状態になり、2回の石油ショックを乗り切るためには数年かかりましたが、後から見れば、日本はその間に省エネ技術を開発、蓄積し、経済成長率よりも石油使用量の伸びの方が小さいという実績を作っています。

 最近でも、中国がネオジムの値上げや輸出制限をした際、日本企業は、ネオジムの使用量10分の1で同じ磁力の出る磁石を 開発し、さらには、ネオジムなどの希土類を使わない磁石も開発しています。

 ところで、「生産性」というのは、一般的な定義にすれば、「産出/投入」ですから上の例は、石油の生産性を向上して石油コストを下げた例、次の例は、ネオジムという原材料の生産性を上げてネオジムのコストを下げた例、ということになります。
 1坪の土地で作物が余計取れれば、土地の生産性向上、1人の人がより多くのものやサービスを生産すれば、「労働生産性」の向上です。

 という事で、賃金も1人当たりですから、賃金が上がってもその分だけ労働生産性が上がれば、賃金コストの上昇は起きません。つまり、インフレも起きないわけです。

 という事で、輸入インフレには省エネ、省資源、つまり、資源生産性の向上で、また賃金インフレには労働生産性の向上で対抗できるという事になります。
 さらに付け加えれば、円高になっても円高の分労働生産性を向上すれば、円高によるドル建てのコストアップも回避できることになります。

 しかし、現実には、賃金上昇は年にせいぜい1~2%ですが、円高は10%ぐらいの幅で平気で起こりますから、容易に生産性向上で対応できる範囲を越えます。
 賃上げは国内の労使で話し合って合理的なものにすることは可能ですが、円高は国際投機資本の思惑で勝手に起きますから制御困難です。

 為替レートの乱高下で、特に日本のような万年黒字の国が円高傾向で苦労するのはそのためです。
 為替の安定が実体経済にとっては望ましいのですが、逆に国際投機資本は為替が安定していたら仕事になりませんから、猛反対でしょう。
 余計なことを付け加えれば、これが今日の世界経済を動かすマネー資本主義の問題点です。