前回は日本経済の労働分配率は、コロナ禍の経済停滞で異常な上昇を示しましたが、その後次第にコロナ禍からの正常化で下がってきたことと、2024年に至ってそれが上昇に転じる気配が出てきた状況を見てきました。
コロナ前の日本経済が少し元気だったころの水準に戻り、2023年には国民総所得の順調な増加もあって下がり続ける状態でしたが、2024年に連合が春闘に少しづつ力を入れるようになり、経営側も収益状況の改善で、いささか余裕も出たのでしょうか、消費需要の活発化のためは賃上げも必要という意見も出たことが大きな要因だったと思います。
その背後には、いくら賃上げをしても物価の上昇で、実質賃金は2年以上にわたり毎月前年を下回り続けたという生活者サイド、家計サイドの不満がマスコミの大きなテーマに上った事もあったようです。
コロナ禍からの回復過程では、2022年にコロナ明けで蟄居生活から解放され家計も少し元気が出て、一時的に平均消費性向も上がりました。
然し、やっぱり所得が増えなければということで、賃上げ期待の意識が出たことが23年、24年さらに今年と春闘の活発化につながったのでしょう。
この辺りの労働分配率の関連指標の動きが上のグラフですが、分母の国民総所得の伸び率はコロナの2000年に向けて下がり気味だったのですが、雇用者報酬は、変動しながらですが上昇傾向に見えます。
2000年度は落ち込みましたが何とか24年の元気な賃上げまで来ています。
国民総所得の方は、安定した第一次所得収支に支えられる面もありますが傾向的には上昇傾向でしょう。
この時期はアメリカの金利政策で大幅円安になり輸出基幹産業を中心に為替差益が多かったことや、ウォーレン・バフェットの発言で日本株が注目され日経平均が4万円越えをした時期も含まれます。
赤い線の雇用者報酬は2024年春闘でやっと国民総所得(青線)の上昇ペースを微かに上回ったという所です。赤線が青線の上に出た年は労働分配率が上がった年ということになります。
いまだに問題になっている「実質賃金が前年に比べてなかなかプラスにならない」という問題を考えてみますと、現状程度の労働分配率では、どうも安定したプラスかは難しいといった感じではないでしょうか。
労働分配率向上のためには、理論的には、1つには賃金上昇率の押し上げ、もう一つは企業収益の上昇幅の縮小が必要ということになります。
企業が儲からなければ不況になるといわれる方も多いと思いますが、トランプ関税の問題や今後予想される円高などを考えれば、これからも大幅賃上げを続け企業収益はほどほどといった上昇が予想され、労働分配率の上昇は達成されそうな気配もするのですがどうでしょうか。
その時、日本経済の活況を支えるのは、消費需要の活発化による、内需中心の経済成長とになることが必要でしょうが、上手く行くでしょうか。