司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

会社法及び商業登記に関する話題を中心に,消費者問題,司法書士,京都に関する話題等々を取り上げています。

非上場株式の評価と税理士の損害賠償責任

2015-03-11 11:44:11 | 会社法(改正商法等)
 標記に関して,東京地裁平成27年1月28日判決が出ているようだ。

 週刊T&A MASTER 2015年3月9日号によれば,事案の概要は,

(1)原告会社は,被告税理士法人との間で,業務委託契約(月次決算や税務申告などに関する業務)を締結していた。

(2)原告会社は,その所有する非上場株式を他者に譲渡するにあたり,被告税理士法人にその株価の算定を依頼した。被告税理士法人が算定した株価は,1株5000円であった。そして,原告及び被告間の認識は,おそらく,この株価算定に関する業務は,上記業務委託契約でカバーされるというものであった。

(3)原告会社は,株式譲渡後,他の税理士にセカンドオピニオンを求めたところ,被告税理士法人が算定した価額よりもはるかに高いもの(1株あたり8500円)であった。

(4)よって,原告会社は,被告税理士法人に対して,「正当な価額」との差額の一部について損害賠償請求を行った。

 東京地裁は,上記業務委託契約に基づく業務は,原告会社の会計や経理に関する業務であり,株式の評価について適切な助言,指導及び説明を行う義務を負うものではないとして,原告会社の請求を棄却している。

 ん~,どうでしょうね?

 原告会社と被告税理士法人の間の業務委託契約の内容が,上記のように会計や経理に関する業務に限られるものであったとしても,原告会社が別途「株式の評価に関する業務」を発注し,被告税理士法人がそれを受託して,株価算定報告を作成し,納品しているわけである。継続的な業務委託契約とは別個の業務委託契約が成立しているのであるから,それが結果として無償であったからといって,被告税理士法人が当該業務の結果としての損害賠償責任を免れるものではないであろう。

 とはいえ,非上場株式の評価は,一筋縄ではいかないので,「5000円」と「8500円」のいずれが「正当な価額」と言えるものでもない。

 そういった意味で,被告税理士法人が損害賠償責任を負わないとした結論は,是認することができる。

 とまれ,普段付き合いがある取引先だから無償サービスでやってあげましたと言っても,痛い目に遭う可能性もある,ということである。

cf. 平成27年2月19日付け「非上場会社の新株発行(平成17年改正前商法下)が有利発行に当たらない場合(最高裁判決)」
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外れ馬券の購入代金を経費認定(最高裁判決)

2015-03-11 00:17:48 | いろいろ
最高裁平成27年3月10日第3小法廷判決
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=84934

【裁判要旨】
1 競馬の当たり馬券の払戻金が所得税法上の一時所得ではなく雑所得に当たるとされた事例
2 競馬の外れ馬券の購入代金について雑所得である当たり馬券の払戻金から所得税法上の必要経費として控除することができるとされた事例

「被告人が馬券を自動的に購入するソフトを使用して独自の条件設定と計算式に基づいてインターネットを介して長期間にわたり多数回かつ頻繁に個々の馬券の的中に着目しない網羅的な購入をして当たり馬券の払戻金を得ることにより多額の利益を恒常的に上げ,一連の馬券の購入が一体の経済活動の実態を有するといえるなどの本件事実関係の下では,払戻金は営利を目的とする継続的行為から生じた所得として所得税法上の一時所得ではなく雑所得に当たるとした原判断は正当である。」

「外れ馬券を含む全ての馬券の購入代金という費用が当たり馬券の払戻金という収入に対応するなどの本件事実関係の下では,外れ馬券の購入代金について当たり馬券の払戻金から所得税法上の必要経費として控除することができる」
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