コメント欄で御指摘のあった件。
cf. 平成27年2月13日付け『「監査役の監査の範囲に関する登記」と「役員等の責任の免除に関する規定の登記」の矛盾抵触の是正』
平成17年改正前商法及び旧商法監査特例法においては,業務監査権限を有する者の存しない旧小会社であっても,取締役会決議による責任の一部免除を行う旨の定款の定めを設けることが認められていた(旧商法監査特例法第25条は,平成17年改正前商法第266条の規定を適用除外とはしていなかった。)。
これに対し,平成26年改正会社法では,取締役会決議による一部免除に関する定款の定めは,業務監査権限を有する者が存する株式会社,すなわち監査役設置会社(会社法第2条第9号),監査等委員会設置会社又は指名委員会等設置会社においてのみ,これを置くことを認めている(会社法第426条)が,会社法施行時の経過措置規定(会社法整備法第78条)により,会社法施行日前の行為に関する責任の免除については,なお従前の例によることとされ,この点は,平成26年改正会社法整備法によっても維持(※改正されていない。)されている。よって,業務監査権限を有する者が存しない株式会社であっても,取締役会決議による責任の一部免除が引き続き可能である。
したがって,平成17年改正前商法下の旧小会社(会社法の下での「公開会社」を除く。)であって,取締役会決議による責任の一部免除を行う旨の定款の定めを設けていた株式会社においても,会社法施行日前の行為に関する責任の免除を行うための根拠規定として,当該定款の定めを残しておく必要があるということになる。
cf. 郡谷大輔編著「会社法施行前後の法律問題」(商事法務)120頁
というわけで,平成17年改正前商法下の「取締役会決議による責任の一部免除を行う旨の定款の定め」の登記については,「監査役の監査の範囲に関する登記」と矛盾抵触しないことから,有効なものとして存置することとなる。
ただし,最高裁平成20年1月28日第2小法廷判決は,「商法266条1項5号に基づく会社の取締役に対する損害賠償請求権の消滅時効期間は,商法522条所定の5年ではなく,民法167条1項により10年と解するのが相当である。」と判示している。よって,平成28年5月1日時点における訴訟の係属等の有無によって,同日以降に定款変更&定款の定めの廃止の登記について判断することになろうか。
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=35631
cf. 平成20年1月28日付け「取締役の責任、消滅時効は10年」
cf. 平成27年2月13日付け『「監査役の監査の範囲に関する登記」と「役員等の責任の免除に関する規定の登記」の矛盾抵触の是正』
平成17年改正前商法及び旧商法監査特例法においては,業務監査権限を有する者の存しない旧小会社であっても,取締役会決議による責任の一部免除を行う旨の定款の定めを設けることが認められていた(旧商法監査特例法第25条は,平成17年改正前商法第266条の規定を適用除外とはしていなかった。)。
これに対し,平成26年改正会社法では,取締役会決議による一部免除に関する定款の定めは,業務監査権限を有する者が存する株式会社,すなわち監査役設置会社(会社法第2条第9号),監査等委員会設置会社又は指名委員会等設置会社においてのみ,これを置くことを認めている(会社法第426条)が,会社法施行時の経過措置規定(会社法整備法第78条)により,会社法施行日前の行為に関する責任の免除については,なお従前の例によることとされ,この点は,平成26年改正会社法整備法によっても維持(※改正されていない。)されている。よって,業務監査権限を有する者が存しない株式会社であっても,取締役会決議による責任の一部免除が引き続き可能である。
したがって,平成17年改正前商法下の旧小会社(会社法の下での「公開会社」を除く。)であって,取締役会決議による責任の一部免除を行う旨の定款の定めを設けていた株式会社においても,会社法施行日前の行為に関する責任の免除を行うための根拠規定として,当該定款の定めを残しておく必要があるということになる。
cf. 郡谷大輔編著「会社法施行前後の法律問題」(商事法務)120頁
というわけで,平成17年改正前商法下の「取締役会決議による責任の一部免除を行う旨の定款の定め」の登記については,「監査役の監査の範囲に関する登記」と矛盾抵触しないことから,有効なものとして存置することとなる。
ただし,最高裁平成20年1月28日第2小法廷判決は,「商法266条1項5号に基づく会社の取締役に対する損害賠償請求権の消滅時効期間は,商法522条所定の5年ではなく,民法167条1項により10年と解するのが相当である。」と判示している。よって,平成28年5月1日時点における訴訟の係属等の有無によって,同日以降に定款変更&定款の定めの廃止の登記について判断することになろうか。
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=35631
cf. 平成20年1月28日付け「取締役の責任、消滅時効は10年」