税理士が弁護士法第23条の2の照会に応じて,納税義務者の確定申告書等の写しを提供したことが不法行為を構成するとされた事例として,大阪高裁平成26年8月28日判決(判例時報第2243号35頁)がある。なお,本件は,上告受理申立てがされており,未確定であるようである。
税理士法第38条の守秘義務に違反するとされたものである。
【事案の要旨】
Xは,税理士であるYに確定申告書の作成及び提出などを継続的に依頼していた。その後,Yは,税理士法人を設立し,代表社員に就任した。
某弁護士会は,同税理士法人に対し,弁護士法第23条の2に基づく照会をし,同税理士法人は,Xの承諾を得ないまま,Xの確定申告書及び総勘定元帳の各写しをCD-Rの形式で提供した。
Xは,この行為がXのプライバシー権を侵害する不法行為に当たるとして,Yに対し,損害賠償請求を行った。
第1審(京都地裁)は,Xの請求を全部棄却したので,Xが控訴。
【裁判要旨】
税理士法第38条に基づく守秘義務は,税理士業務の根幹に関わる極めて重要な義務であるから,税理士は,弁護士法第23条の2照会によって納税者のプライバシーに関する事項について報告を求められた場合,正当な理由があるときは,報告を拒絶すべきであり,それにもかかわらず照会に応じて報告をしたときは,税理士法第38条の守秘義務に違反するものというべきであり,当該納税者に対して不法行為責任を負うものと解される。
私が目にしたことがある照会書には,弁護士会の会長名の注意書が添えられており,「個人情報保護法の例外で,本人の同意を得る必要はありません。どうぞ回答してください。」とあった。仮にこの税理士が同様の注意書を見て回答したとして,敗訴が確定したら,この税理士は,弁護士会に対して,損害賠償請求をするのでは?
cf. 最高裁昭和56年4月14日第3小法廷判決
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=56331
「弁護士法二三条の二に基づき前科及び犯罪経歴の照会を受けたいわゆる政令指定都市の区長が、照会文書中に照会を必要とする事由としては「中央労働委員会、京都地方裁判所に提出するため」との記載があつたにすぎないのに、漫然と右照会に応じて前科及び犯罪経歴のすべてを報告することは、前科及び犯罪経歴については、従来通達により一般の身元照会には応じない取扱いであり、弁護士法二三条の二に基づく照会にも回答できないとの趣旨の自治省行政課長回答があつたなど、原判示の事実関係のもとにおいては、過失による違法な公権力の行使にあたる。」
税理士法第38条の守秘義務に違反するとされたものである。
【事案の要旨】
Xは,税理士であるYに確定申告書の作成及び提出などを継続的に依頼していた。その後,Yは,税理士法人を設立し,代表社員に就任した。
某弁護士会は,同税理士法人に対し,弁護士法第23条の2に基づく照会をし,同税理士法人は,Xの承諾を得ないまま,Xの確定申告書及び総勘定元帳の各写しをCD-Rの形式で提供した。
Xは,この行為がXのプライバシー権を侵害する不法行為に当たるとして,Yに対し,損害賠償請求を行った。
第1審(京都地裁)は,Xの請求を全部棄却したので,Xが控訴。
【裁判要旨】
税理士法第38条に基づく守秘義務は,税理士業務の根幹に関わる極めて重要な義務であるから,税理士は,弁護士法第23条の2照会によって納税者のプライバシーに関する事項について報告を求められた場合,正当な理由があるときは,報告を拒絶すべきであり,それにもかかわらず照会に応じて報告をしたときは,税理士法第38条の守秘義務に違反するものというべきであり,当該納税者に対して不法行為責任を負うものと解される。
私が目にしたことがある照会書には,弁護士会の会長名の注意書が添えられており,「個人情報保護法の例外で,本人の同意を得る必要はありません。どうぞ回答してください。」とあった。仮にこの税理士が同様の注意書を見て回答したとして,敗訴が確定したら,この税理士は,弁護士会に対して,損害賠償請求をするのでは?
cf. 最高裁昭和56年4月14日第3小法廷判決
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=56331
「弁護士法二三条の二に基づき前科及び犯罪経歴の照会を受けたいわゆる政令指定都市の区長が、照会文書中に照会を必要とする事由としては「中央労働委員会、京都地方裁判所に提出するため」との記載があつたにすぎないのに、漫然と右照会に応じて前科及び犯罪経歴のすべてを報告することは、前科及び犯罪経歴については、従来通達により一般の身元照会には応じない取扱いであり、弁護士法二三条の二に基づく照会にも回答できないとの趣旨の自治省行政課長回答があつたなど、原判示の事実関係のもとにおいては、過失による違法な公権力の行使にあたる。」