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Something New.

最も経済政策を理解していた総理大臣

2022-07-14 03:23:23 | 人物
今回は安倍晋三氏が総理大臣時代に推し進めた経済政策について、数量政策学者の高橋洋一氏の解説をベースに記してゆく。

高橋洋一氏から見て、安倍氏の経済政策の理解度は間違いなくピカイチだったそうである。他の国会議員とはレベルの差が歴然としていたようである。実際に国会の質問に於いては安倍氏は資料を何も見ずに対応することができたのだが、これに対してほとんどの議員は対抗できなかった。これは厳然たる事実である。

特に「マクロ経済政策」という分野である。これは一般的な普通の議員には理解できないとのこと。

マクロ経済政策には2つある。
「財政政策」「金融政策」である。

多くの人は財政政策については(間違った意味で)少し判る程度だが、金融政策についてはほどんと判らないのが実情である。高橋氏が知っている限り、金融政策をちゃんと理解した国会議員は今までに数名しか居ないそうだ。現職の議員では安倍氏だけだったのである。

だが、金融政策が判らないと根本から何もできない事になる。なので、安倍氏がいなくなってしまった今、そしてこれからが大変なことになると予想されるのである。特に金融政策はマクロ政策の基本である。高橋氏に依れば、歴代総理で金融政策を安倍氏ほど理解している人は居なかったそうだ。

安倍政権時代に有名な「アベノミクス」という政策があった。ここでは一番最初に金融政策を持ってくる。その後で財政政策があり、そして成長戦略、ということになる。

成長戦略の話はミクロ経済の話だから誰でも出来るのだが、それよりも、ということで一番最初にアベノミクスの金融政策を持ってきたのは日本の憲政史上初めてのことなのである。

世界の人から見たら驚いたことであろう。「日本もようやく判るようになったのか」と。

アベノミクスだが、実はこれは世界の常識なのである。マクロ経済政策…これが金融政策と財政政策で成り立っていて、最後にミクロ政策が来る。これが成長戦略だ。ちなみに、この3つの組み合わせは世界の標準なのである。

しかし、世界標準であるにも関わらず、これまでの日本ではなぜかこの金融政策を言う人はいなかったのだ。安倍氏が初めて総裁選でも言及したのであり、そのまま政権運営の基本に据えたのである。その意味でとても画期的なものと言えよう。

金融政策がどういうものか、ほとんどの人は判っていないようである。

「金融政策とは雇用政策である」

なぜか。

金融政策というと「インフレ率の調整だ」という言い方をするのだが、インフレ率は失業率と裏腹なので雇用政策なのである。

この「金融政策をやると雇用が良くなる」という事を初めて理解した総理大臣が安倍氏だったのである。

これは現時点でもマスコミの人間は誰も理解できてないと思われるものだ。

「なぜ金融政策が雇用政策なのか?」という質問を色々な政治家にしても恐らく答えられないであろう。しかし、安倍氏は「インフレ率と雇用は裏腹の関係で…」という事をちゃんと理解していたのだ。

「雇用政策」というものを初めて理解した総理であり、結果的には雇用が一番であることを判っていたからこそ、「歴代政権の中で最も雇用を作った総理大臣」なのである。歴代政権でこれだけ雇用を多く作った人はいないのだ。その意味ではダントツなのである。

高橋氏はアベノミクスを評価する時の話として次のような話をする。
しばしばマスコミは「インフレ率が上がらなかったじゃないか」という言い方をするのだが、そんな事はどうでもいい話であって、「雇用をきちんと作った」ということで終わりである。

雇用をきちんと作ってインフレ率が上がらなかったら、そんなに変な政策ではない、と言えるのだ。そこはみんなが見るところが全く違っていて、マスコミは「賃金がー!」などと変なことを言うのだが、それよりも「雇用を作る」事が最優先なのである。

雇用を作ってその上で賃金が上がれば良いのだ。実際に「雇用を多く作った」のは事実である。賃金については、名目賃金は上がっている。実質賃金はもう少しというところだったが、そういう意味では100点満点の内、80点以上は付けられる成績であった、というのが高橋氏から見たアベノミクスの評価である。

このような評価ができない「賃金がー!賃金がー!」という人は今でも居るであろう。だが、そういう人は雇用の話はしないのである。そもそも雇用が作れなかったら賃金も作れないのである。

それが基本であるにも関わらず「雇用の作り方」が判らない人は賃金を上げるこもできないのだ。しかし安倍氏は判っていたのである。

そういう意味では、安倍氏は経済政策は誰よりも理解していたのだ。内閣府の人よりもはるかに理解は深かったのであり、財務省の官僚ですら安倍氏の足元にも及ばないくらいであったそうだ。


安倍氏がそれほど経済政策に強くなったのはいつ頃からなのだろうか?

高橋氏が語るところでは、20年くらいかけたそうだ。安倍氏が一番最初に高橋氏に質問したのは、日本の「ゼロ金利解除」の時だったという。安倍氏が官房副長官だった時代である。

安倍氏は言った。

「高橋さん、これでいいの?」

高橋氏は

「それは間違いです」

と返すと、安倍氏は謙虚な声で「あぁそう…」と。

そこからスタートしたのだ。

安倍氏はそれから後に金融政策に多少関心を持っていたそうだが、小泉政権の時には金融政策が判っていた人は竹中平蔵氏しかいなかったのである。その竹中氏を経由して高橋氏は総理大臣に色々なことを進言したそうだが、結果から言えば、時の小泉総理はその分野に関心がなかったので、なかなかうまくいかなかったということだ。関心がない事はよく判らないのであり、結局難しい、ということになってしまう。

しかし、安倍氏はそれを理解していたのだ。それで安倍氏の第一次政権の時にはそれを駆使する間もなく体調を悪くしてしまった、ということだ。残念である。

その後、自民党が野党になった時代にも安倍氏はずっと勉強し続けていたそうである。高橋氏もしばしば安倍氏に呼ばれてレクチャーに訪れたそうだ。当時の安倍氏は体調の問題で辞められたので、議員会館を訪れる人も居なかった。従って時間はたっぷりあったので、その時に一生懸命勉強をしたということである。その熱心さ故に高橋氏に何度も繰り返し質問されたそうだ。

高橋氏は安倍氏など政治家と話をする時に日銀の動向と今後の予測や、円高についてなど、色々言うのだが、高橋氏の予測がすべて当たっていたので相手からは「高橋さんって、よく分かるね」と言ってくるので、その度に「それは普通の経済理論です」「このくらいは判らなきゃダメです」とはっきり伝えたそうである。確かに経済政策を発信する政治家がそうした経済の原理原則を知らなくては話にならないであろう。

安倍氏もそれ以降は、「金融政策を主力に据えれば雇用は創出できる」ということが分かったのだし、「雇用を作れれば選挙では大きく負けることはない」事を感じ取ってもらえた、と高橋氏は思ったそうだ。

実際、安倍総理の時代には選挙で6連勝と、負け無しであった。雇用状況が良好なので負ける要素が極めて少ないのである。あのトランプ大統領と波長が合ったのも、トランプ氏が雇用を重要視していたからである。それはすなわち金融政策の話と一緒なので、そういう意味で波長が合ったのだろう、ということだ。

実は日本の保守系の政治家は雇用の話はあまりしなかった。

高橋氏は安倍氏に対して最初に金融政策の話をした時に、雇用の話が中心なこともあって「これは左派政策の色彩が強いですよ」と言ったのだが、安倍氏はむしろ乗り気で「それはいいや」とゴキゲンな様子で受け止めたそうだ。続けて安倍氏は「(この政策は)まだ民主党はやってないよね」と言うので高橋氏は「やってませんね」と返したところ、「それならいいよ」「先にやっちゃえばいい」という調子でとても割り切っていたそうである。

そして、雇用を多く創出することができた事を高橋氏が高く評価すると、安倍氏はいつも喜んでいたそうである。

安倍氏は言った。
「そうやって見てくれる人は少ないんだよね」
「インフレ率は上がらないとか、そんな事ばかり言ってるんだよね」

それに対して高橋氏は

「インフレ率なんて別に雇用を作ってインフレ率上がらなきゃいいじゃないですか」

と、そんな感じで返したそうである。

安倍氏は続けて

「そういうふうに言ってくれる人はいないんだよね」
「雇用のところはみんな見ないんだよね」

と、このような事を語ったそうだ。


その「アベノミクス」だが、これが成功したかどうかの判断を問われたら、「雇用を創出できた」という意味では”成功”である。

一方で「賃金が上がってない」と言う向きもあるが、これは「雇用を作った後で、何年か経過すると賃金が上がる」のであって、これについては結果が出るまでの時間が足りな過ぎた事と、その間にコロナ禍になってしまった事が非常に悔やまれるところだ。


もう一つある。

高橋氏が安倍氏にもう一つ言ったのは

「消費税の増税は失敗です」

ということ。

これに対して安倍氏は

「それは判ってる。高橋さんに言われるとそう言うんだよね」

高橋氏はさらに

「それはそうですよ」
「消費税増税をやらなければ(経済政策は)100点でしたけど」

と述べた。安倍氏は

「自分が仕組んだのでないが、政治的には大変だったから」

と述懐していたそうだ。

確かにそうである。消費税の増税は一にも二にも財務省が仕組んでそうなってしまったのであり、政治的状況が大変だったのだ。日本の総理大臣は決して独裁者ではない。一人では何も出来ず、常に周囲の人間に対して根回しして合意を取っておかないと何をするにも難しいのだ。逆に首相自身はやりたくないのに、財務省に押し切られて消費税を増税させられてしまうケースも普通にある。一種の「首相あるある」である。

その裏事情を理解している高橋氏は、「それならば」ということで、「消費税増税を前提としつつ、財政出動を多くして、その消費税増税分を上回る事をやればよろしいんじゃないですか」と、そういう言い方をしたのであった。



今回、高橋氏が安倍氏のご自宅に弔問に行かれた際に、周囲の人から「お世話になりました」と言われ、さらに「アベノミクスは正しいですよね」と言うので、高橋氏は「それは当たり前です。世界の標準ですから。どこに出しても恥ずかしくないです」と述べたそうである。そして、「全く正しいのですが、日本の中のマスコミとかそういう人たちがついてこれないだけですよ」と伝えたそうだ。


世界の標準であるアベノミクスは正しい経済政策である。従ってこれは継承していくしかない、と高橋氏は考えている。












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