Altered Notes

Something New.

岸田総理のキーウ訪問案件

2023-02-27 18:01:18 | 社会・政治
2023年2月20日にアメリカのバイデン大統領がウクライナの首都キーウを訪問していたのだが、これでG7のトップリーダーの中でウクライナを訪問していないのは岸田総理だけになった。
しかもウクライナのゼレンスキー大統領は以前アメリカでバイデン大統領に会っているので、ウクライナに行っていない上にゼレンスキー氏に対面で会ってもいないG7首脳は岸田総理だけ、ということになった。

この件について数量政策学者の高橋洋一氏の解説を基調に記す。

国会開会中に行くには色々と難しいこともある。だから以前のヨーロッパ歴訪の時に訪問しておけば良かったのに、千載一遇の好機をのがしてしまった岸田総理…。言っても現在進行形の戦場に赴くことにビビってしまったか…所詮は「総理大臣になりたかっただけの男」である。腹を据えて行く勇気は無かったらしい。

ちなみに国会開会中に行く場合は、法律云々は関係ない。運用上の問題で、議長の許可を得なければいけないとか、そういった手続きが必要である。

だが、しかし…。

ウクライナ行きは予め予定を公開することはできない。当たり前だ。日本の首相とゼレンスキー大統領の居場所や行動が判ってしまうからだ。「この機会に是非攻撃して下さい」と言ってるようなものである。だから岸田総理が隠密に行動して突然ウクライナの地でゼレンスキー氏と会ったとしても、多くの国民は文句は言わないであろう。

だが、もっと障害になり得るのは、日本の首相はその行動を四六時中監視されていることである。新聞には「首相動静」というコーナーがあって、首相の一日の行動が分単位で記されている。だが、これも土曜と日曜はやや緩くなっているので、腹を据えてかかれば金曜~日曜でこっそり行って帰ってくるくらいは不可能ではない。マスコミは騒ぐかもしれないが、「家で書類整理」としておけばそれで済む事である。

そもそも、自分の国のトップの動きを分単位で記録して外部に公開している国など日本以外には無いのである。当然である。秘密管理上、問題があるのは間違いない。

バイデン大統領の場合は夜間に米軍機でポーランドまで行って、そこから汽車でウクライナ入りしたそうで、同行したマスコミの記者は二人で、全てが隠密の内に遂行されたのである。


バイデン大統領のウクライナ訪問の後で岸田総理は自身のウクライナ訪問の可能性について聞かれた時に「国会があるから行けない」と述べたそうだが、逆に国会で「いついつ行きます」などと言ったらやられに行くようなものである。間抜けが過ぎる、と。バイデン大統領だって会談が終わってから公表しているのである。


ところが、岸田総理がウクライナを訪問するのなら、国会で事前承認を得る必要がある、と主張する阿呆な政治家が居る。立憲民主党の泉健太代表である。

泉代表は2月25日に甲府市で記者団に対して「秘匿して行く必要があるのか。国会の了承を得て堂々と行くのも一つの姿だ」と述べている。立憲民主党の政治家はたいがい頭の中がお花畑の人が多い印象だが、代表からしてここまで愚鈍だとは呆れるばかりである。泉氏はウクライナが現在進行形の戦場であり、事前に訪問が明らかになれば岸田総理とゼレンスキー大統領の所在と動きがバレてしまう事になり、それはロシアにとっては格好の攻撃・暗殺のターゲットになる・・・この程度の想像力も無いのが泉健太氏なのである。彼の頭の中は馬と鹿が跳ね回っているのかもしれない。(蔑笑)

泉代表の発言が単に愚鈍であるが故のものでなければ、もう一つの可能性としては、故意に岸田総理とゼレンスキー大統領の生命に危険が及ぶ状況を故意に作り出したい意図があっての発言、ということになる。これもまたとんでもない事だが、極左姿勢を顕にする立憲民主党なら「無くはない」、かもしれない。


現在、自民党内でも岸田総理のウクライナ訪問について検討中らしいが、既に時期を失している感は強く、肝心の岸田総理本人も今までビビってウクライナに行けなかった経緯を合わせて考えると、難しいのではないだろうか。ここまで自体が拗れる前に行っておけばこんな事にはならなかったのに…今の岸田総理の気持ちは、ぺこぱのように「時を戻そう」な気分かもしれない。


ただ、このままだと岸田総理は5月に予定されているG7広島サミットで、初めてゼレンスキー氏にお目にかかる事になるだろう。他の各国首脳が「やぁやぁ」と親しくゼレンスキー氏に会う時に岸田総理だけ「初めまして」という挨拶をしなくてはならない事になる。みっともないことこの上ない。



ちなみに、安倍元総理はオリンピックの時にいきなりスーパーマリオ姿でブラジルに登場して世界中を喫驚させた実績がある。隠密行動でなし得た事だ。もしも現在の首相が安倍氏だったら、隠密でウクライナを訪問していたであろうことは間違いない。

岸田総理が隠密のアクションを取れない最大の原因は岸田氏の特技である「他人の意見を聞く」能力が最大に発揮されてしまうからである。(笑) 岸田氏は自身の事について人に相談する事が多いが、そんなことをしていたら情報は漏れるに決まっているのだ。仮にウクライナ訪問という重大な案件を相談するのなら、相談先を極端に絞ることが大切である。絞らなければ漏れるのは必須であり、漏れたらアウトなのである。

岸田総理がキーウ訪問するなら、その最大のチャンスは以前の欧州歴訪の時であった。あの時にダボス会議の日程が見当たらなかったので、高橋氏は「ウクライナに行くのかな?」と思っていたそうだ。だが、岸田氏は結局行かなかったのである。

実際にウクライナへ行ってゼレンスキー氏に会って何を話すとか、そういうことよりも「会うこと」に意味があるのであり、それこそがウクライナ支援の基本中の基本なのである。

しかし結局チャンスを活かすこともできず、小心者の岸田総理は会いに行けなかった。G7の中でもビリッケツである。このままではゼレンスキー氏がサミットに来るのも難しくなるであろうし、色々な事が岸田氏の決断力の無さとビビリによって駄目になるのだ。



もう本当に日本の総理大臣という要職を岸田文雄氏に任せるのは止めにしたほうがよろしい。「総理大臣になりたかった」だけの人物であるが故に、もう目的は果たしただろうから、この辺でお引取り頂きたいものである。











共産党の矛盾と除名された元党員の正体

2023-02-14 19:21:19 | 社会・政治
日本共産党に対して「党首公選制の導入を求めた共産党員でジャーナリストの松竹伸幸氏に対して、日本共産党は2月6日に最も重い処分に該当する「除名」を正式発表した。
この処分について、日本共産党の小池晃書記局長は
「異論を述べたから処分したわけではない」
「突然、外から攻撃する形でやってきた」
「攻撃されたら、やっぱり党をしっかり守らないといけない」
と説明している。

この件について数量政策学者の高橋洋一氏の解説を基調に記してゆく。

共産党の言論は矛盾が多く、その矛盾に気付かないところも呆れたものだが、今回の小池書記局長の発言もまた分かりやすいツッコミポイントを提供してくれている。

「外から攻撃されたら党を守らないといけない」

小池氏が述べるこの論理を正しいとするのなら

「外国から攻撃されたら日本を守らないといけない」

という論理もまた認められるべきであろう。しかし、共産党はこっちは認めないのである。(笑)
「攻撃されたら日本を守らないといけない」から反撃能力を持つべきなのであって、それが今度の防衛3文書の中に記されているのだ。共産党は「防衛3文書は駄目」と言いつつ、一方で「自分の党は守る」と言っているのだ。誰でも分かる矛盾であり、共産党のご都合主義がよく分かるというものである。ここまで来るとほとんどギャグに近い。実は共産党は爆笑コントをやっていたのではないか、と考えてしまうほどだ。小池氏をはじめ、共産党の幹部の人々は自分たちの主張が論理的に矛盾していて他者から揚げ足を取られる論理の綻びがある事にどうして気が付かないのだろうか? 普通の人ならすぐに分かる事なのだが…。おそらく驚くほど自分たちを客観視できない人たちなのだろう。そしてこれが共産党なのである。(笑)

「日本共産党が攻撃されたら守らないといけないが、日本が攻撃されたら守らなくていい」のだとしたら、それは中国共産党と同じだ。だから小池書記局長は「自分たちは中国共産党です」と宣言しているようなものなのだが、そこに気付かない共産党幹部の人々は頭が相当ヤバイと言えよう。



ロジックも滅茶苦茶な共産党だが、そもそも共産党が使う言葉には意味不明なものが多く、サンドウィッチマン富澤氏風に言うなら「ちょっと何言ってるか分からない…」レベルなのである。

例えば共産党独自の言葉で「民主集中制」というのがある。「民主主義」であるにも関わらず「集中させる」のだ。それはもう民主主義ではないのだが、これも「おかしい」とは思ってない人たちのようだ。また、共産主義政党であるにも関わらず、やたらと「民主的だ」と言い張る事も多い。だが、実際には「異論は許さない」体質であり、それが実態である。

小池氏は松竹伸幸氏が内部で事前に発言することなく、いきなり外部から提言したことが「党への攻撃」(*1)とみなしたようだが、ならば、「内部で事前に言う」事で何かが変わるのだろうか? 事前に言うことは共産党が言うところの「集中させる」に該当するが、党が「事前に言ってきなさい」とするのは「事前に言ってきたら、そこで潰す」という意味なのである。

普通なら「民主的」というのは開かれた場所で誰に気兼ねすることなく言論を発信できる事なのだが、共産党では「民主集中制」なのであり、「閉鎖的な場所で文句を言え」「言ったらそこで潰してやる」ということになるのだ。内部で文句を言ってもいいが、そこで脅迫して潰すよ、という事なのである。これが民主集中制の正体である。

昔、共産党の幹部(党内序列No.3)であった筆坂秀世氏は共産党の公選について次のように説明する。
「誰でも選挙に立つことはできる」という建前にはなっている。「建前としては立てるのだが、事前に言ってきなさい」というシステムになっているのであり、そこで一人しか立たせないような仕組みになっているのだ。(笑)・・・このようなやり方をするのが共産党なのであり、これが彼らの言う「民主主義」なのだそうだ。(笑)…だからこれを普通の民主主義と言うと誤解があるので「民主集中制」と言う言い方をするのである。なぜ民主主義で集中させるのだろうか?意味不明だが、これが共産党の民主主義であり民主集中制なのである。

このような矛盾を孕んだ共産党の体質が今回の一件で顕になってしまった・・・そういうことなのだろうと考えられる。



これでお分かりと思うが、共産党は「選挙」が大嫌いなのだ。
ちなみに、昔、AKB48が中国に進出して上海でSNH48をデビューさせたが、中国側はSNH48を日本側から一方的に取り上げて独立した存在にした。

なぜか?

当時、AKBグループには「総選挙」というものがあったからである。中国共産党としては中国国内で「選挙」が根付いてしまったら困るのだ。(笑) そこに気づいた中国は契約トラブルを引き起こしてSNH48を秋元康氏(日本側運営)から奪うことで中国独自に運営する形に無理やりもっていったのである。





今回の除名処分について、もう一つ重要な話がある。

共産党を除名された元党員の松竹伸幸氏だが、共産党から除名されたことで、松竹氏が世間の同情を引くと共に、この人物がまともな考えの持ち主なのではないか、と思い込む(誤解する)人が多いようである。

実際はどうなのだろうか?

そもそも松竹伸幸氏という人物が従来どのような主張をしてきたのか、を知ることが大切であろう。これについて、安全保障やインテリジェンスを専門に研究している江崎道朗氏の解説を基調に記してゆく。

はじめに結論を書くが、松竹伸幸氏は保守系の言論人ではない。むしろバリバリの共産主義者である。松竹氏はかねてから「党の安保政策を改めて野党共闘をすべきだ」、と主張しているのであり、その目的で立憲民主党など左派政党を取り込む為には今の共産党がとっている戦術では駄目だ、と言っているのだ。安保政策内容なんていつでも変えられるので、今は共闘体制を作ることが大事だ、と。

つまり、松竹氏は「連合政府をやるべき」という立場なのだが、一方で現在の共産党幹部は共産党単独でやりたがっていて、本気で政権を取る気が無い…ように松竹氏には見える・・・だから政権を取る現実的な手段を考えろ、という話をしているのであり、別に「共産主義自体が悪い」とは言っていないのだ。さらに、その延長上で自民党の「集団的自衛権」の話は潰せ、とまで言っているのである。

本気で共産党の政権を実現する事を目標として、それをいかに進めてゆくかを考えること…現在の政権内部に浸透工作をやるにあたって、頭の固い志位委員長体制では駄目だ、と主張しているのが松竹伸幸氏なのである。

これで分かるように、松竹伸幸氏は保守系でも中道系でもなく、ガチガチの共産主義者であり、その度合はむしろ現在の共産党幹部よりも先鋭的なのかもしれない。…なので、除名された人物だから恐らく良い事を言っているのだろう、という推測は完全にハズレである。

思えば共産党は路線闘争上等な政党である。そうでなくても、例えば「代々木系 対 反代々木系」といった路線対立・闘争が普通にあるのだ。しかし、派閥は異なっても「共産革命で日本を破壊・解体する」という目標は同じなのである。

共産党とはそのような政党であり、除名された松竹伸幸氏はむしろ先鋭的な共産主義者である事をお知りおきいただきたい。





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(*1)
共産党は「攻撃」と言うが、どう見てもただの「提言」「提案」であり、そこに攻撃性のニュアンスなど感じられないのだが、共産党にとっては自分たちが決めた事に少しでも異論が出されたら、それは共産党にとっては「攻撃」なのである。それが意味するのは、「共産党には”聞く耳がない”という事実」である。全ては「共産党が決めた通りにやりなさい」という上意下達であり、これは中国共産党のやり方と全く同じである。









「阪神・淡路大震災」は「南海トラフ巨大地震」の前兆か

2023-02-13 12:35:35 | 気象・地震
今年は1995年に発生した阪神淡路大震災から28年になる年である。また、「南海トラフ地震」という超巨大規模の地震が起きる可能性が取り沙汰されているが、阪神淡路大震災を引き起こした兵庫県南部地震が南海トラフ地震の前兆なのではないか、と言われている。その根拠と可能性はどの程度なのであろうか。これについてウェザーニューズ社の気象・地震解説担当の山口剛久氏が詳しい解説をしているのでそのビデオを紹介したい。

『「阪神・淡路大震災」は「南海トラフ巨大地震」の前兆なのか』




山口氏は下記のように説明している。


そもそも「南海トラフ」の「トラフ」というのは、「海溝よりは浅くて幅の広い、海底の溝状の地形」を表す言葉である。日本近辺には例えば「日本海溝」という非常に深い海溝があるが、それと違って「トラフ」というのは海溝ほど深くないものを指しているのである。

「南海トラフ」は2つのプレート境界面であり、フィリピン海プレートがユーラシアプレートの下に潜り込む場所である。また、過去に何度も発生している大地震であり、その周期は100年から150年ほどで、地震の強さを表すマグニチュードで言うとマグニチュード8以上のパワーを持つ地震である。



さて、阪神淡路大震災を引き起こした兵庫県南部地震が南海トラフ地震の”前兆”とされる理由について記してゆく。

南海トラフ地震はいわゆるプレート型の地震であり、これが起きれば巨大な力が発生して大きな被害がもたらされる可能性がある。近年では東日本大震災が代表的な事例だ。

このプレート型地震は海側プレートが陸側プレートの下に潜り込んでゆく事で発生するメカニズムであるが、陸側プレートが海側プレートからの強い圧力を受け受け続けていると、陸側プレート内部の浅い場所にごく狭い範囲だが、地盤にひび割れが生じて、時に局所的な崩壊が発生することがある。当然その場所では地震が発生する。

↑このメカニズムで発生した地震の一つが1995年に阪神淡路大震災を引き起こした兵庫県南部地震であるが、同様の地震を箇条書きにすると下記のようになる。


西日本のM6.5以上の内陸地震(1995年~)

1995年 兵庫県南部地震
2000年 鳥取県西部地震
2005年 福岡県西方沖地震
2016年 熊本地震



このように、M7クラスの地震がいくつも起きているのだ。



上述のように、南海トラフ地震は過去に何度も発生している。

前回は1944年と1946年であった。この時も本体地震が起きる前の数十年前から内陸地震が活発になっていたのである。


1944年と1946年の南海トラフ地震の場合に前兆となった内陸地震をリストアップすると下記のようになる。

1943年 鳥取地震
1909年 姉川地震
1925年~1927年 北丹後地震、北但馬地震



このような内陸地震が立て続けに起きていて本体地震に繋がった、という事例があるのだ。



さらにもう一つ前の1854年の南海トラフ地震の時にも同様の傾向があった事が確認されている。

それらを考慮すると、この28年間で起きている各地の内陸地震もまた次の南海トラフ地震の前兆と言える可能性があるのだ。



南海トラフ地震は、向こう20年以内で約60%程度の確率があるとされている。30年以内では70~80%にもなるのだ。次の本体地震(南海トラフ地震)の前に、もう少し西日本の内陸部でM7クラスの地震(*1)が起きる可能性もある、と山口氏は述べている。







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(*1)
もちろん阪神淡路大震災クラスの地震である。











中国気球の意味 歴史上の悪夢との類似点

2023-02-10 04:56:00 | 国際
アメリカで今月初旬に飛来が明らかになった中国製の気球について書きたい。まずは原則というか、”そもそも”のところから確認しよう。

国際的なルールとして、「国家の領空について無害通航権は無い」のである。侵入された側の国は侵入物を撃ち落とす事も許されており、安全保障上も当然のこととされている。なので、アメリカによって撃墜された後で中国が「気象観測機器や言うてるやないかい!」と気色ばんだところで、そもそも中国が悪いことに変わりはない。


今回の一連の流れの経緯をジャーナリストの長谷川幸洋氏は次のように説明している。

気球をアメリカが最初に感知したのは1月28日のことである。もちろんこの時点では世間には何ら公表されていない。

気球はアリューシャン列島からアラスカ方面にやってきた。米軍は最初は「海岸線の調査」をしているのかと推測したようである。気球はその後カナダに入っていっていった。これが1月29~30日である。

そして、31日になった時点で再びアメリカ領空に入ってきたのだ。やがて気球はアイダホ州の田舎に飛来した。ここまでアメリカ軍は静かに気球の動きを監視している。

気球はモンタナ~ノースダコタ周辺のいわゆる「核のトライアングル」と呼ばれるエリアに飛んできた。アメリカの核戦略爆撃機やICBMのサイロなどを持つ基地が3つある地域だ。驚いたことに、気球はそのトライアングルのど真ん中にやってきたのである。これでアメリカ軍は「これは明らかにおかしい」としてざわつき始め、アメリカ政府も慌てだした。これが1月31日のことである。

その頃から「上空に変なものが浮いている」事に気がついた米国民も出てきており、2月1日になった時には騒ぎが広まってきた。未だ公表されていない段階である。その時点でブリンケン国務長官らが中国の大使館の人間を呼んで確認を取るなどしてピリピリし始めていたのだ。(*1)

2月2日には各地で目撃者も多く出てきてかなりの大騒ぎになってきた。空軍で予定されていた記者会見も直前にキャンセルになるなどして各方面が慌ただしくなってきた。

その時に「これは中国の気球である」ことを特ダネで報道したのが米3大テレビ局の一つであるNBCだ。これで全米で大騒ぎになったのである。こうなるとホワイトハウスも無視し続ける訳にはいかず、2月2日になって発表をせざるを得なくなった。

その後、気球がサウスキャロライナの海岸付近まで飛んでいったところで撃墜したのだが、これを遂行する前には周辺の航空機や空港などを全て止めるなど大規模な影響が出たのである。




ここで、気球それ自体について数量政策学者の高橋洋一氏の解説を基調に記してゆく。

「気球」と言うとなんとなくほんわかしたイメージで捉えられるものだが、実は現代の気球は超ハイテクである。遠隔操作が可能で何処へでも飛ばすことができるのだ。なので、中国が言う「偏西風に流されていった」というのは真っ赤な嘘である。気流に流されて行くだけだったら中南米にまでたどり着く説明はつかないのである。(*2)

「情報収集」という事であれば偵察衛星の方が能力は高いのだが、人工衛星は速度が速すぎて同じ場所に留まる事が困難である。しかし、気球はそれができるのだ。

偵察衛星は宇宙(100Km以上)を飛行するが、今回の気球は20Km程度の高度である。(ちなみに普通の航空機は10Km程度。)

気球は速度はゆっくりで、かつ低高度なので「微弱電波を受信することができる」・・・これが重要である。上述の核のトライアングル付近に浮かんでいれば、米軍基地周辺の色々な電波を受信できるのだ。中国はそこを狙っていたものと推測されるところである。

実際、Bloombergの報道に依ると、それを裏付ける証拠が上がっているようで、中国側の「気象観測機器」という主張が嘘である事が分かる。(下記記事参照)

『中国の気球に通信信号の収集能力、人民解放軍の作業の一環-米当局者』

電波受信以外の目的であれば、例えば写真は偵察衛星からでも撮れるので、わざわざ気球を使う意味はない。推測されるとしたら、電波に依るアメリカの核に関する情報の収集が考えられる。それ以外にも、いざという時に電波を撹乱させて混乱を起こす等の目的が予想されるところだ。



実は、アメリカにとっては気球はトラウマの一つである。

どういうことか。

太平洋戦争中、日本が風船爆弾を作ってアメリカに送った(流した)ことがあるのだ。素材がこんにゃくと紙でできた素朴なものであるが、それを9000発作って飛ばしたのである。結果として1割ほどがアメリカに届いたようで、この爆弾に依ってアメリカでは亡くなった人もいた。アメリカはこの風船爆弾に恐怖を感じて、当時はひた隠しにしたのであった。

実はこの日本製風船爆弾が世界初の大陸間兵器なのである。ちなみに、細菌を入れる計画もあったらしいが、昭和天皇が「それはやめておけ」と言って止めた、という記録もある。




話を中国の気球に戻す。

アメリカは気球がアラスカにやって来た時からずっと監視していた。下手に撃ち落として、もしも細菌が入っていたら大変だからである。それで気球の動きを静かに見守った上で、それが海上に出たら落とす、という事にしたようだ。撃墜にはサイドワインダー(空対空ミサイル)が使用された。




今回の気球について、同じケースが日本で生じた場合はどうなるのだろうか。

撃墜といった破壊命令は相手が航空機の場合にのみできる行動である。だが、気球は航空機ではないので現在の法制下では撃ち落とせないのだ。早い時期の法整備が必要であろう。




次に、今回の気球の意味と歴史上の類似点について述べる。

今回のケースは、1960年代初頭の「キューバ危機」時の流れにそっくりなのである。

1960年代初期にアメリカがU2(有人偵察機)でソ連をスパイした事がある。U2は高高度で飛んだのだが、ソ連はこのU2を撃墜したのだ。

その後、ソ連はキューバにミサイルを配備した。アメリカの喉元にソ連のミサイルが配備されたらアメリカにとっては生きた心地はしないだろう。とんでもないことだ。

それで対抗策として、アメリカはキューバを海上封鎖したのである。



今回の件をそれになぞらえるとどうなるだろうか。

中国は気球でアメリカをスパイした。

アメリカはその気球を撃墜した。

アメリカは第一列島線(九州~尖閣諸島~台湾~フィリピン)に中距離ミサイル配備を打診している。(←いまここ)

中国にはミサイルに関する規制が無いので中距離ミサイル開発ではやりたい放題であった。逆に米ソはミサイル製造には互いに足枷を付けていたので存分に製造や配置はできなかったのだ。軍事バランス的には圧倒的に中国が有利である。

アメリカが第一列島線上に中距離ミサイルを配備する。こうなってくるとキューバ危機と相似形になる。

中国は台湾を海上封鎖して、制海権・制空権を中国が確保する。その一部に日本の南西諸島も入ってくる。従って自動的に「日本有事」の事態になるのである。

このような進展となる時期について、高橋氏の予想では「近い(数年以内)」と言うことだ。ちなみにキューバ危機の際は約1年くらいの間隔があった。




このような前例があるので、今回の気球の話を単なる気球の話として片付けることはできないのだ。1960年代の流れとそっくりだからである。こうした国際情勢に対してはかなり心してかからないといけないであろう。そんな大切な時期に岸田総理という無能ボンクラが日本のトップというのは非常にまずい状況である。


ちなみに、1960年代に「第三次世界大戦」「世界的核戦争」の恐怖を世界中に与えた「キューバ危機」が回避できた理由は何だったのであろうか。
・・・それは、キューバ危機でアメリカは非常に強気に出たのだが、これに対してソ連が折れてキューバのミサイルが撤去されたから、なのである。


今回、中国が台湾封鎖で強気に出たとしてもアメリカは第一列島線上に配備したミサイルの撤去はしないだろう。一悶着あるかもしれないが、最終的には中国が引っ込むものと予想される。逆に引っ込まないと本当に(マジで)大変な事態になる。中国だってアメリカと全面戦争になるのは望まないであろう。

実際に、今回の気球の件はかなり際どい話なのである。事の手順を少し間違えただけで本当にとんでもない有事になる可能性があるのだ。




最後に、気になるポイントを長谷川幸洋氏が述べていたので、それを紹介しておきたい。

今回の件、そもそも中国はなぜこんな事をしたのだろうか?
時はブリンケン国務長官訪中の直前のタイミングだったのだ。実際、今回の件で国務長官の訪中は中止・延期になった。普通ならこんなタイミングで米中関係を大きく傷つけるようなマネはしないだろう。だが中国はやった。

なぜか?

習近平主席が中国国内をコントロールしきれていない可能性がある、ということだ。仮に習近平主席がきちんとコントロールできていたのなら、ブリンケン訪中直前の今のタイミングで気球を送り込む事は絶対にしないであろう。現時点でブリンケン訪中の見通しは立っていない。ブリンケン氏自身は早く訪中したい希望を持っているようだが、アメリカ国内がそれを許さない空気になっているのである。議会もカンカンに怒っている状態だ。

さらにアメリカ国民の多くも大きな怒りを持っている。

どういうことか。

NBCが報道したように、今や全米が「中国の気球」の存在を知ったのであり、それまで中国を見くびっていたアメリカ国民も、「自分の家の上空に中国がやってきてこっちを見ていたのか?」と知って怒り心頭な状態になっているのだ。

それでなくても昨年までは「武漢コロナウィルス」に依ってアメリカ人は中国に対して「ふざけんな!」という悪感情を持っていたのだ。当時、街なかで中国人を見たら石を投げるくらいのことが実際にあったのであり、在米の中国人も静かにしていたくらいである。

そうした状況の中で今回の気球騒ぎである。アメリカ人の中国に対する感情はこれまでにないほど悪化している。

そして前述のように、思惑とは違って、事態をここまで悪化させてしまった習近平主席は中国という大きな国と組織をコントロールしきれていない可能性を疑わざるを得ないのであり、その意味でも今後の展開が憂慮されるところなのである。







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(*1)
この段階では中国側は珍しく「遺憾である」(*1a)旨を表明していた。

(*1a)
「リグレット」(残念・遺憾・後悔等々の意味)という単語を使った。

(*2)
南米コロンビアでも気球の飛来が確認されている。