Altered Notes

Something New.

筒井康隆氏の限界

2020-08-31 16:00:00 | 人物
一般的に広く見られる傾向として芸術・クリエイター方面の人間は左翼的な思想を持つ事が多く、これは洋の東西を問わない。アメリカでもハリウッド等の映画業界や音楽業界も多くは左翼的な思想を持つ人が多いことは周知の事実である。日本でも同様で、クリエイターを気取る人間は左翼的な価値観を持たないと生きていけない空気を感じるほど、である。

左翼的な思想や価値観は一種の理想論である場合が多い。ドリーマー(夢見る人)が抱く理想の世界をなんとなくイメージさせてくれるのが左翼的な思想かもしれない。筆者も昔は左翼的な考え方を持っていたのでその気持ちはよく判る。だが、国内政治や国際政治の真の実態、その知識・情報を知るようになってリアリストになると、左翼的な夢見る理想論ではどうにもならない事が自明の理として理解されるようになる。左翼的な価値観が実は本当の実態に際して全くそぐわない事が理解できてくるのだ。「そういうものではない」ということが判ってしまうのだ。逆に言えば、左翼的立場の人は実は”真に意味のある情報を持っていない人々”ということになる。無知であり、無知故の左翼思想への傾斜、ということなのである。

難しいのはこうした発見は人間一人一人が自らされるべきものであり、他人から押し付けられたり教えられたりするものではない、ということである。発見する為にはそのきっかけとなる情報や知識が必要である。それに触れる機会を持つか否かはもはや「縁」という言葉でしか表しようがないだろう。自ら真実を探求したい意志を持つ人ならいつか訪れるであろうし、そうでない人なら一生訪れる事は無いであろう。


さて、作家の筒井康隆氏である。
紹介するまでもない日本文学界の大巨匠であり、その存在はSFの世界だけにとどまらず、文学界の至宝と呼ぶに相応しい才能の持ち主であることは誰もが認めるところであろう。筆者もほぼリアルタイムで筒井氏の作品を追ってきた一人であり、大好きな作家の筆頭格である。

だが、その筒井氏もまたクリエイターにありがちな左翼的立場を当然のように取っている一人である。例えばそれを表す氏のツイッターを下記に引用する。

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筒井康隆@TsutsuiYasutaka·8月28日

しゅしょう【首相】
隠すことが多く、語彙が乏しくなり、同じことしか言えなくなる役職。

じにん【辞任】
あとは野となれ。

筒井康隆 「現代語裏辞典」より

午後2:50 · 2020年8月28日·Twitter Web App
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この日、2020年8月28日は安倍総理大臣の退陣表明があった日であり、このツイートは明らかに筒井氏の安倍政権に対する態度を内包するものであることは間違いないだろう。

このツイート内容は10年前に出版された単行本に収められた内容の一部ではあるが、筒井氏はわざわざこの8月28日の安倍総理退陣表明があったタイミングでこれを出してきているのだ。筒井氏の左翼的立場を表す発信として捉えても間違いないであろう。

筒井氏は過去にも「乱調文学大辞典」やアンブローズ・ビアスの「悪魔の辞典」を筒井流に紹介した「筒井版 悪魔の辞典」、また、今回の事例に関わる「現代語裏辞典」といった辞典形式の作品を出しており、これもまた彼の表現形式の一つとして知られるところである。

ごく一般的な意味でなら上記のツイート内容も判らないではない。しかし、この説明文章を受け取るにはいささか時代錯誤な印象もある。なぜなら、この文章によって筒井康隆氏は現代政治が置かれている状況や国際政治の中での日本といった今を生きる人間にとって必須の知識・情報を「ご存知ない」事が如実に判るからだ。

恐らく筒井康隆氏は政治も含めた世の中の動きを新聞とテレビでしか得ていないのだと思われる。新聞もテレビも全て左傾化しているのは周知の事実であり、日本のマスメディアにおいては記事の捏造・偏向・報道しない自由・左翼プロパガンダはもはや当たり前の慣習となっている。つまり新聞・テレビは事実上、左翼活動家用の機関紙と同じ実体を呈している。そこからしか情報を得ていないと筒井康隆氏のようなみっともない姿をさらしてしまうことになる。こういう人を「情報弱者」略して「情弱」と言う。

筒井氏がこの皮肉なツイートを8月28日の安倍退陣表明直後というタイミングに発信したということは、筒井氏が明らかに安倍政権への否定的感情を持っている事を表しているのは明らかである。

しかも、この文面ではパロディやブラックユーモアとしての価値すら既に失われている事に筒井康隆氏自身が気づいていない、という残念な実情が見える。本当に残念である。筒井康隆氏の時計は1970年代前半で止まってしまっているのかもしれない。当時の社会ならこの内容でも読者にアピールするものはあっただろうが、今もまだそれが通用すると思っている筒井氏は上述した現代の国内外の政治状況についての真の情報・知識を持っていないのであり、従って今の政治を評価する資格すら無い事に気づいていないのである。本来的な意味で遺憾に思う。

「政治は政策である」

突き詰めれば左翼か右翼かなどどうでもいいのだ。もっと言うなら「はじめに安倍ありき」でもないのだ。安倍総理だから全て善だと言うのは間違いであり、全て悪だというのもまた間違いである。政策を見て是々非々で評価するのが最も妥当な姿勢であることは間違いない。


安倍政権では様々な政策が施行されている。安倍政治では真っ先に名前が出てくるアベノミクスは実態を知らない人が知ったかぶりで批判・否定していたりするが、その前の民主党政権でボロボロになってしまった日本経済を立て直したのは厳然たる事実である。これはかなり思い切った政策群であり、安倍総理でないとできなかった事の一つでもあろう。(*1)

勿論、経済面では二度の消費税増税は日本経済にとって明らかにマイナスだった。あれで日本経済は冷え込む結果となり、二度目の増税時にはその直後に来た武漢コロナウィルス感染拡大に依る緊急事態宣言が重なって余計に酷い状況になった。だが、ここで重要なのは「消費税増税を安倍総理がやりたくて独断で遂行したのではない」という事実だ。

単純に考えて増税で誰が得するかと言えば財務省である。財務省官僚というのは自分達が好き勝手に使える金を増やすためにスキあらば課税・増税してやろうと虎視眈々と狙っている屑な連中である。この財務省からの増税圧力は本当に凄まじいのである。首相官邸内にも財務省プロパーな役人は少なくない。こうした連中が束になってかかってくるのだ。しかも二階幹事長のような財務省べったりな政治家も居る。

ちなみに、増税の言い訳として財務省が必ず出してくるのが「財政危機」である。「日本の借金が大変」だから「増税やむなし」という空気を作ることに一生懸命な財務省だ。マスメディアも巻き込んで(抱き込んで)そういう空気の醸成に余念がないのは周知の事実である。筒井氏のような情弱老人ならこの説にコロッと騙されるのだろう。しかしこれは完全に嘘であり、実態は全く逆である。日本の借金が大きなスケールになっているのは事実だが、その一方で日本が持っている資産もほぼ同額あるのだ。だから差し引きゼロ。問題無いのである。その証拠にIMF(国際通貨基金)も「日本の財政は大丈夫」と太鼓判を押している。


よくある誤解の一つに「日本の総理大臣はともすれば独裁国家の権力者のように自分勝手ができる」という思い込みがある。これも実情・実態を知らない左翼的立場の人が言いそうな”あるある”である。

実際には全く違う。

霞が関の官僚達からの圧力、官邸内の各勢力からの圧力、与党政治家からの圧力、それだけでなく野党政治家からもギャーギャー言われて攻撃される中で政策を遂行するのは思いのほか大変なことである。

日本の総理大臣というのは世界各国のトップの中でも最も力が弱いトップだと言われている。その通りであろう。総理大臣が何かを推し進めようと思っても関係各方面に説明し納得させなくては何もできないのである。しかも首相官邸内にすら敵はいっぱい居るのだ。左翼的立場の人がよく言う「安倍は独裁者」という印象操作は完全に間違っており、それは無知故の思い込みか、またはそういう印象操作を目論む確信犯なのである。

財務省は官僚達が自分達の欲望を推進しやすい仕組みを既に官界・政界・財界等にくまなく広げている。安倍政治に常に批判的で否定しかしないマスメディアも昨年の消費税増税には反対しなかった。それは財務省から新聞メディアに対しては軽減税率の対象とする、という甘い蜜を約束されていたからである。(*2) 財務省にかかればメディアも容易に抱き込めるのだし、そこを隠して政権を攻撃するマスメディアのなんと卑しいことか。

ついでに言うと、2020年7月から始まったレジ袋有料化も財務省にとっては一種の増税のようなものだ。無料だったものを有料化すればそれだけ財務省の歳入は増える。それだけが財務省の狙いだ。巷間言われているような環境への影響云々という理由付けは全く嘘である。レジ袋が環境に被害をもたらすパーセンテージはほとんど無視できるほど小さい。海洋での被害で言えば中国や朝鮮半島から流れてくるゴミの方がはるかに大きなウェイトを占めているのだ。



毀誉褒貶入り乱れて評価が難しいようにも思える安倍政権だが、実は相当日本の為に尽くした、と言えるであろう。それは確かなことだ。前述のように民主党政権でズタズタになった日本経済を成長軌道に戻したのは事実だ。また、雇用に於いては就職氷河期から脱却することができた。民主党政権が無神経に破壊した日米同盟を再興してアメリカ大統領からの厚い信頼を得るばかりか世界各国の首脳からの深い信頼も得ている。(*3) 日本の歴史上、これだけ国際社会の中心にいて世界各国どの方面からも頼られた首相はかつていなかった。これは厳然たる事実である。

日本がしっかりした独立国である為に最低限必要な安保法制や特定秘密保護法など国家安全の基礎の構築もされた。辞任会見が終わって、手話通訳担当者にも丁寧に頭を下げ退出するその姿勢には内側からにじみ出る品格が漂っていた。こうしたやさしさと誠実な姿勢(*4)が評価されているからこそ世界各国からの厚い信頼も勝ち得ているのである。しかし日本の左傾化したマスメディアはこうした事は絶対に書かない。

日米同盟の根幹は首脳同士の信頼関係である。トランプ大統領とゴルフ会談ができるのは安倍総理のみであり、何度も行われている。特定秘密保護法で北朝鮮情報は多数入るようになり、集団的自衛権で日米が切れ目なく守り合う体制ができた。日米同盟をここまで高めた総理大臣はいないのである。

モリカケ問題はかなり騒ぎになっていたが。これはそもそもメディアと野党によるフェイクニュースである。真相は既に明らかになっており、安倍総理には何の問題もない。森友問題では亡くなった人も居たが安倍総理とは無関係である。朝日新聞がでっち上げたフェイクニュースであり、行政関係者ならばすぐに理解できるデマである。この事案では、むしろ現場担当者を厳しく攻め立てた野党政治家に問題があったのではないか、とも言われているほどであり、最大の問題は何でもないことをさも大問題であるかのように騒ぎ立てた野党政治家と左翼マスメディアにある。これは厳然たる事実であり、この件で安倍が許せないなどと憤慨している人は左翼メディアにまんまと騙されているのだ。そもそもこうしたフェイクニュースで騒ぎ立てるのは野党とメディアがグルになって仕組んだ倒閣運動にほかならないのである。

その意味では「桜を見る会」問題も同様だ。その内容には何も問題は無いが、しかし野党とマスメディアはさも問題があるかのように騒ぎ立てて国会の貴重な時間と資源を無駄に費やした。しかもこれが論議されていた時期は武漢コロナウィルス問題で対応が迫られていた時である。野党が無駄な論議を仕掛けていたおかげで武漢コロナウィルスへの早い段階での対応がし切れなかったという側面もあるのだ。野党議員の領収書の文言がどうだ、だのといった些末などうでもいい話を針小棒大に喚きまくる姿はひたすら醜かった。これも倒閣運動であり、もう少し突っ込んで言えば、武漢コロナウィルスの感染が拡大する中で、ウィルス発生国である中国に責任問題などの関心が行かないようにするために、野党は目くらましをしたかったのではないか、という深読みをしたくなるほどであった。それほど無内容な話で騒いでいたのだ、野党とメディアは。

また、安倍総理は病気の悪化があって国民への責任を考えた上で辞任するのである。(*5) なので、一部の心無い政治家等が言うような「政権投げ出し」ではありえない。まして即日辞任ではなく、次の総理が固まるまではきちんと責任もって職をまっとうすると言っているのである。まして筒井康隆氏が記したような「あとは野となれ。」ではないことは明白である。筒井氏の文章はそもそも面白くないし皮肉にもなっていない。無価値である。それは先述のように筒井康隆氏が政治についてあまりにも無知・無教養だからであり、無知であるからこその基本的な事実誤認を元にして書かれているからである。ベースの部分で間違っているのなら、その上に構築されるブラックユーモアもまた無意味でしかない。つまり笑いはそこに生まれない。僅かでも知識があるならばブラックユーモアであろうとこのような書き方にはならないからだ。

筒井康隆氏は「首相」について「隠すことが多く、語彙が乏しくなり、同じことしか言えなくなる役職。」と記したが、どこがどのようにそうなのか、説明してほしいものである。上述のように日本の総理大臣は決して権力者とは言えない存在であり、あちこちと調整した上でなければ何もできないと言っても過言ではない。非常に難しい立場に立たされた役職である。また、首相官邸内の補佐官や秘書官の能力の問題もある。確かに情報の発信という面では不足していた部分は少なくないだろう。一つの政策を施行するにも誤解を生まない情報発信が必要だが、そこが必ずしもうまくいってなかった側面は否定できない。しかし、だから首相一人が「駄目」の烙印を押されるような問題でもない。筒井康隆氏はここが理解できていない。政治が首相一人で推し進めるものだとでも考えているのだろうか? 首相側近たちや官邸及び霞が関との関係についての知識・実態を知らない筒井康隆氏の政治に関する情報のストックはほとんど子供レベルなのか、と呆れるほど稚拙である。繰り返すが、筒井氏の文章はきちんとした知識をベースにするならば絶対にそんな書き方はできないような文言になっているのである。そして、ブラックユーモアにすらなりえていない幼稚なもので呆れるほかない。


7年8ヶ月に渡って安倍政権が運営されたが、この間、左翼野党と左翼メディアがスクラム組んで安倍政権を倒そうとしたが、結果として倒される事は無かった。その間の選挙でも成果をあげており、最後の辞任表明後の世論調査で支持率が上昇するという今までにはなかった奇跡的な展開も起きている。それは辞任をきっかけに日本国民がこの政権の価値に気がついたからであろう。

どうだろう、これらの事実は左翼野党や左翼メディアが一生懸命に仕掛け続けた倒閣運動に対する日本国民の意志の表明にほかならないのではないか。筒井康隆氏にはこうした日本の(実際の)現状が見えていないのだろう。「筒井康隆氏は盲人か」これはブラックユーモアである。(虚笑)


このように見てくると文学界の巨匠である筒井康隆氏もここが限界であった、ということだろう。
もちろんこの一事を持って筒井氏の全てが否定される訳ではなく、日本文学界の至宝たる存在(*6)であることには変わりはない。しかしスーパーマンが全ての領域においてスーパーな存在ではないのだ、という事実を我々は改めて知るところとなったのである…しかも筒井康隆氏自身の発信(ツイート)に依って…。

ツイッターがしばしば「馬鹿発見器」と呼称されるのは、例えばこのような事例が頻繁に起きているからであろう。勿論筒井氏が馬鹿だと言うつもりはない。ただ、左翼的な人々にありがちな事実に基づかない思い込みと決めつけが激しすぎることと、政治の世界に於ける真実の探求をされなかった事、さらに(恐らく、だが)新聞やテレビでしか情報を得ていないと推察される事は大変遺憾に思うところである。無知は罪である。


老境に入ってから自分を変えるのは大変なことである。まして、自分が変われるのは冒頭に書いたように「自分自身で何かを発見した時」に限られる。他人から押し付けることはできない。筒井康隆氏ご自身が何かを発見された時に彼はより良き方向に変わっていけるのであろう。僭越ながらそれを期待している。




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<2020年10月15日:追記>
2019年に「あいちトリエンナーレ2019」が開催されたが、その中の「表現の不自由展・その後」の展示内容が酷すぎたことで話題になった。マスコミは慰安婦像の件ばかり取り上げたが、実は本当に酷かったのは「昭和天皇の御真影(写真等)を燃やして、燃え殻を足で踏みつける」という醜悪な映像作品と、「大東亜戦争で戦った戦士達を愚弄して笑いものにする作品」である。これなどはどう見ても芸術作品ではなく(普通に鑑賞しても芸術的な美しさは皆無)、左翼のプロパガンダでしかないオブジェだったのである。それはこのイベントの運営にあたった人々が尽く左翼、それも極左の活動家として名の知られた人達であった事実からも容易に推定できる。彼らは芸術展の形を借りて左翼のプロパガンダを行ったのである。しかし左翼マスコミは敢えてこれら2つの展示については一切報道しなかった。なので、この事実を知らない人は非常に多い。この醜悪な展示について、筒井康隆氏はあくまでこれらを芸術作品として捉えて論評していた。ここからも筒井康隆氏が極左活動家の機関紙たる朝日新聞に深く洗脳されている事が伺えるのである。


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(*1)
筆者は安倍政権の全部を肯定する気は全く無い。例えば少子化対策は全く成果を上げていない(これは世界的に困難なテーマだが)し、武漢コロナウィルス感染拡大防止措置では初期段階で中国全土からの入国制限を実施すれば日本国内での感染拡大ももう少し押さえられたのではないか、と思われるが、その他の措置も含めてコロナ対策に於ける後手に回った対応は批判されるべきであろう。

(*2)
軽減税率を適用されている朝日新聞は「朝日新聞は消費税増税でも値上げせずに頑張ります」という趣旨の広告を打っている。ここで朝日は嘘をついている。そもそも新聞は軽減税率適用なのだから税率8%のままであり増税対象ではない。値上げする理由は何処にもないのである。にも関わらず、あたかも「税率が10%に上がったけど朝日は頑張るから値上げしない」ように見せかけているのだ。卑怯である。こんなあからさまな嘘をついて国民を騙そうとする卑しい新聞、それが朝日新聞だ。ちなみに筒井康隆氏は朝日新聞に小説を連載するなど、朝日新聞とは比較的近い位置にある人物である。仮に筒井氏が反日姿勢の朝日新聞を購読しているのなら、安倍政権について完全に完璧に間違ったイメージを刷り込まされているのは間違いないところである。

(*3)
トランプ大統領からの信頼は特に厚いものがある。そもそも国際政治について多くの情報をトランプ氏は安倍首相から学んでいる。また、欧州の首脳たちとは決してうまくいってないトランプ氏にとってアメリカとヨーロッパをつなぐ事ができるのは世界でも安倍首相だけだった。その意味ではG7先進主要七カ国にとっては安倍首相辞任はG7にとって大きな損失と言えよう。安倍首相が国際政治の中でも際立って存在感のある首脳であったのは事実である。トランプ氏だけでなく多くの国の首脳が安倍首相の見解を求めていたのは紛れもない事実である。
<以下:2020年9月4日追記>
辞任表明した安倍首相に対して世界各国の首脳から電話会談の申し込みが殺到している。まず、つい先日イギリスのジョンソン首相と電話会談をして、EU離脱が確定しているイギリスと日英新貿易協定早期妥結の方向で意見の一致をみた。イギリスにとっては通商問題等で切迫しており、ツーカーの間柄である安倍首相と今のうちに取り決めておきたいのだ。安倍首相は世界各国の首脳とツーカーの間柄なので、どの首脳ともフランクに対話ができる。安倍首相は辞任表明後もこうして精力的に仕事をしているのだが反日姿勢のマスメディアはこうした事実を全く報道しない。現在国際社会で起きているのは「安倍ロス」である。本当だ。実はこれに関して憂慮すべき問題がある。中国とアメリカの対立において両国の緩衝役となり両国にある程度以上の説得力を持つ人間は世界でも安倍首相しかいないのだ。また、かつてイランがアメリカと危機一髪の状況に陥った時にイランの最高指導者ハメネイ師が安倍氏を招いた事も思い出される。日本人にとっては安倍首相は我々の国の首相という認識だが、国際社会から見れば、いざ何かが起きた時に「安倍無しで大丈夫なのか?」という憂慮がある。だからこれに気づいた各国首脳が安倍首相との電話会談を希望しているのであり、現在その申し込みが殺到しているのだ。一説には「安倍首相は猛獣使いだ」と言われる。一筋縄では行かない個性的な各国の首脳たちは意外に安倍氏の手のひらで転がされているフシはあるのだ。だから各国首脳にとって今後の自分の仕事に支障をきたす心配があるから、だから「安倍ロス」にならざるを得ないのである。
筒井康隆氏はこうした真の実態・事実を全く知らない。全然無知無知カタツムリなのである。

(*4)
現在の中国ではウィグルやチベットを侵略した挙げ句にその地域の民族を弾圧・虐待しており、特にウィグルではウィグル人から生きたまま「臓器移植用の臓器」を取り出す、という極めて残虐な行為(殺人)を行っている。日本に滞在中のウィグル人もウィグルに残った家族が中国共産党の人質に取られて「(本人が)帰ってこなければ家族がどうなっても知らないぞ」と脅されているのが実情だ。
そんな中、今年の1月に安倍総理夫人である昭恵さんの強い希望で在日ウィグル人との会食が行われたそうである。セッティング担当はジャーナリストの有本香氏。総理は会食の現場に電話をかけてきてその場に居たウィグル人おひとりおひとりと電話で話し、直接励ましの言葉をかけられたそうだ。集まったウィグル人の皆さんは総理に励ましてもらったことで「落ち込むことも多かったが、これでまた頑張れる」と大層喜んでいたそうである。総理は幹事役の有本氏にもやさしく労いの言葉をあけた。有本氏は決して安倍総理の幇間ではない。個々の政策に応じて容赦ない批判も発信している。それでも総理は「それは構わない。今夜は雪になるみたいだから皆さん、ほどほどにね」と気遣う言葉をかけられたそうである。有本氏もこの夜のことは生涯忘れないと思ったそうだ。こうしたことはメディアでは一切書かれないし安倍総理夫妻もこうした事実を見せびらかすようなことを一切望んでいない。それほど誠実な二人である、ということだ。これが本当の姿なのである。
また、辞任にあたって世界各国の首脳からメッセージが発信されているが、いずれも温かい内容のもので、単なる外交辞令ではない心からのメッセージであることが容易に読み取れる内容になっている。それこそが安倍総理の人柄を表していると言えよう。しかし左傾化した日本のマスメディアはこうした事は一切報じないのである。

(*5)
逆にこのタイミングで辞意表明をしておかないと内閣改造の時期になってしまい、その後の秋の臨時国会をも見据えた場合、乗り切れるかどうかの判断が難しい。だったら、今辞任して後継の首相が臨時国会に臨む事が良いだろう、と安倍総理は考えたのではないだろうか。これは責任ある人間として妥当な判断と言えよう。

(*6)
筒井康隆氏の文学的な才能とパワーは言うまでもなく本当に凄い。筒井氏は文学に於ける「ジャズな人」である。これはタモリ氏の言い方だが、ジャズは「あらゆる規則をいったん外して自分で再構築して音を紡ぎなさい」という音楽である。筒井氏は文学でこれをやった(やることができた)偉大な作家だと断言できる。SF文学はそうした自由闊達な発想・思考を可能にする新たな地平を開拓した文学なのである。








「女系天皇論者」たちが目指すもの

2020-08-25 12:02:02 | 社会・政治
天皇陛下のお世継ぎ問題に関連して「女系天皇論」を主張する人が急に増えだした。女系天皇とは天皇たる親が女性である場合の呼称である。ちなみに現在までに女系天皇は存在していない。(*1)

なぜか。

日本に於いては126代に渡って男系による皇位継承が成されてきた。つまりどの代からでも男親を辿れば必ず神武天皇(初代天皇)にいきつくのである。男系であることによって権力者の皇位奪取を防止した先人の智慧はとても優れていた、と言える。

日本人は皇室が存在することで有形無形の恩恵を受けてきた歴史がある。即位の礼の際の世界各国の驚嘆がそれを物語っている。こうしたやり方で2000年の永きに渡って皇統を維持してきたのである。そして、これほどまでに長い歴史を持つ皇室は世界に類例がないのだ。

ところが、今になってお世継ぎ問題がフォーカスされるようになって、皇室を破壊してなくしたい左翼や反日勢力が「これ幸い」と、この問題を利用しようと策動を始めている。

どういうことか。

日本の左翼はかつての昔ならソ連(ソビエト連邦)にシンパシーを感じる人たちであり、現在ではその対象は中国である。現在の野党のほとんどがこの左翼傾向を持つ人たちである。また、マスメディアのほとんども左翼的立場をベースに報道している。その理由は拙稿「日本のマスコミが左傾化した本当の理由」に詳細が記されているので参考にされたい。

もちろんメディアだけでなく野党政治家のほとんども同じである。

そして、なぜ、どうして共産党をはじめとする野党の政治家や中国・韓国などは「女系天皇にこだわるのか?」という疑問が湧く。彼らは不自然なまでに「女系天皇」にさせたがっているのだ。

その理由は「皇室を消滅させられるから」である。

上述のように「男系」でお代継が成されてきたのは皇統に於ける唯一の規則である。男親を辿っていけば必ず神武天皇にいきつくのだが、内親王がご結婚されてお子様が生まれて、その男親を辿っても神武天皇には行き着かない。全く関係ない事になる。外国人と結婚すれば皇室は外国系になってしまう。そうなれば国民の心情は徐々に皇室から離れていき、やがて皇室は消滅することになる・・・左翼や中国・韓国の狙いは正にここにあるのだ。(*2)

日本を貶めて国体を破壊したい中国・韓国・左翼や反日日本人たちは、だから「女系天皇」にこだわるのである。何が何でも女系天皇を実現したいのだ。それが彼らの望みである「日本という国の破壊」に直結するからである。だから彼らは「安定的皇位継承の為」という一見もっともらしい理屈を持ち出して女系天皇を勧めようとするのだ。



「女系天皇」を言い出すのは左翼野党系の人々だけではない。政府与党内にも存在する。最近では河野太郎防衛相がこれを言い出して喫驚した。彼は外交や防衛といった側面で中国や韓国への対応の基本姿勢を見る限り「判っている」人物として多くの心ある日本人が信頼していた人物である。ところが急に「女系天皇容認」を言い出しておかしなことになってきた。なぜか旧宮家復活に反対し、Y染色体まで持ち出して女系天皇の容認を言い出している。

旧宮家ということでは、男系を受け継いでいる旧皇族の東久邇家には昭和天皇の長女・成子様が嫁がれており、今上天皇陛下の従兄弟にあたる男性が3人、悠仁親王のまた従兄弟にあたる男性が5人おられる。不思議なことに「女系天皇に固執される方々」は、なぜかこの事実に触れず避けている。彼らはどうしても“女系天皇を実現したい”のであろう。その意図は明白であり[皇室消滅→日本という国家の完全破壊]なのである。



参考資料として下記を紹介しておく。

「旧皇族には男系男子が多数~女性宮家・女系天皇は必要なし」




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(*1)
そもそも「女系天皇」という言葉は反日姿勢の強い左翼の人たちが勝手に作った造語である。今までの歴代天皇に女系天皇は存在せず、そのような概念すら存在しなかったのだ。これを正当で正統な「男系天皇」と同じ次元で論じること自体がナンセンスである。

(*2)
秋篠宮家長女の眞子さまのお相手として注目される小室圭さんであるが、もしも女系天皇の流れで女性宮家が創設された場合、小室さんは殿下となってしまう。そうなると、小室さんの子供が天皇になる可能性が出てくる。また、毎年の正月や天皇誕生日などに実施される一般参賀の際に長和殿のベランダに天皇陛下および皇族方が出御して手を振られるが、あの皇族方の列に小室圭さんも並んで国民に手を振ることになるのだ。それでいいのですか?という問題でもある。



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<2021年4月29日:追記>
4月21日に皇位継承問題を話し合う政府の有識者会議が行われた。その中で日大の古川隆久教授が「女系、女性天皇は憲法上問題ない。何千年の伝統などというのは、ちょっと筋が違うのではないか」と発言。歴史専門家と言う割には重要な事実・肝心なポイント・長い歴史の中で培われた伝統の意味と価値、それらを全然理解していない事を自ら露呈している。呆れるばかりだ。実に恥ずかしい人物である。

<2021年6月25日:追記>
左翼界隈は女性宮家創設に熱心である。これはそのまま女系天皇実現へのルートそのものだ。そもそも天皇制を廃止したい共産党がなぜ女系天皇に肯定的なのか?ここが不可思議な疑問点である。その理由は、永く続いてきた男系の血脈に亀裂を入れることで内側から皇統を潰したいという目的があるからである。極左の情報工作機関としてお馴染みの朝日新聞・毎日新聞が女系天皇を強く推しているのもそれが理由である。女性宮家創設はそのまま女系天皇実現であり、その先にあるのは日本という国家が希薄化されてやがて消滅する道である。ここは意識しておく必要がある。




危険なTikTokを激推しするフジテレビ その訳とは

2020-08-23 11:31:00 | 放送
アメリカが危険な中国製アプリケーションソフトとして米国内から締め出そうとしているTikTokだが、当ブログでも先日その危険性についてお知らせする記事を掲載した。

日本国内に於いても地方自治体が広報活動に利用することを中止するなど、TikTokの危険性については徐々にではあるが周知されつつあるようだ。

だがしかし・・・そのような状況(空気)を全く読まずにTikTokを激推しするメディアがあった。フジテレビ(CX)である。

フジテレビは2020年8月20日(木)の報道・情報番組「めざましテレビ」の中でTikTokの利用を日本国民に推奨する趣旨の特集を組んだ。その内容はTikTok自体の紹介と共にこれをアメリカが締め出そうとしている事などを伝えると同時に日本の女子中高生の「使えなくなったら嫌だ」というTikTok擁護の立場の街の声、さらに専門家の見解、などであった。

フジテレビがこの特集を組んだ目的は容易に推測可能だ。フジテレビとしてはTikTokを流行させたい、広く普及させたい、そういうスタンスであり、その為に障害となるアメリカの動きをできるだけ「大したことない」「影響はない」かのような印象操作をすること、にある。

なぜか。

それはTikTokのメーカーであるバイトダンスとフジテレビはビジネスパートナーだからである。

どういうことか。

2020年5月25日の日経クロステック(XTECH)の記事に依ると、「フジテレビがByteDanceとパートナーシップ締結、中国事業の拡大目指す:フジテレビジョンは2020年5月22日、動画配信プラットフォーム「西瓜視頻(Xigua Video)」を運営する中国のバイトダンス(ByteDance)と戦略的パートナーシップを締結した、と発表した」とある。

また、2020年5月22日のフジテレビ・プレスリリースに依ると、「エンターテインメントを通じて国際協力を促進:中国・ByteDance社傘下の西瓜視頻と戦略的パートナーシップを締結」という記事がある。このパートナーシップによってフジテレビが過去にゴールデンタイムに放送した番組などを中国全土に配信するようである。元女子アナで現在はフジテレビ・コンテンツ事業室の秋元優里氏に依れば「よりニーズにあった形で中国の視聴者ともつながれるよう、緊密な関係を築いていきたいと思っています」ということだ。ちなみにこのニュースリリースの最後に「バイトダンス社概要」という項目があるが、この会社がTikTokのメーカーである事実は一言も記されていない。やましいからであろう。その代わりに「日本を含む世界で大人気のショートムービープラットフォームなどを運営している」と記されている。失笑を禁じ得ない。TikTokという固有名詞を出すと支障があるからこそこうした回りくどい表現でお茶を濁しているのであろうことは容易に推察できる。

めざましテレビでやっていたのはこうしたビジネス的な背景があっての宣伝行為だったのだ。フジテレビはこれから中国国内でフジの番組を配信してもらうにあたって最大限の配慮をしているのであり、フジテレビとバイトダンス両社の繁栄の為に特集を組んだのは明らかであろう。つまりフジテレビは日本にとって最重要な同盟国であるアメリカが「非常に危険」として問題視しているアプリケーションソフトを国から借り受けている公共の電波を使って宣伝をしているのであり、これはフジテレビの利益(社益)には合致していても日米同盟(国益)に対しては裏切りにも匹敵する悪辣な行為と言えよう。少なくとも国から借り受けた公共の財産である「電波」を使って流すことではない。どうしてもそうしたいのならフジテレビは国から借り受けたTV電波を謹んで返上すべきであろう。この事案を看過するということは日本とアメリカとの関係にも影響が出かねない心配がある。もっとも、日米関係に影響が出て仮に関係が分断されるような事があれば、それをもっとも喜ぶのは中国であろう。そこまで考えるとフジテレビとバイトダンス社のパートナーシップが何を目指しているかがうっすらと見えてくる気がしなくもない。

「めざましテレビ」で流したTikTokを使いたい立場の街の声として女子中高生の意見が紹介されたが、これはあくまで「子供の意見」だ。フジとしてはこれが精一杯なのだろう。申し訳ないが、彼女たちはアプリで楽しみたいという”自分の欲望”しか念頭になく無知で無教養な人たちであり、その意見は今起きている国家レベルの危険、国際的な大問題に比して全く無意味で無価値である。フジテレビがTikTok締め出しに反対する意見として提示できるのはせいぜいこの程度、ということだ。

また、専門家の意見としてITジャーナリストの三上洋氏も見解を述べていたが、その内容はTikTokのセキュリティ上の危険と中国自体の凶悪性に触れず、「アメリカが中国のIT開発力向上を驚異に感じている」という趣旨のコメントであった。これは見事に本質からずれた意見であり、話を問題の核心からすり替えたと言われても仕方ないもので、明らかにフジテレビと中国に忖度するものと言える。聞いていて説得力は感じられなかった。逆に本気でこんなコメントしているのなら、専門家としては100%ポンコツである。この三上氏はフジテレビの他の番組でも時折見かけるが、やはり本当の事、本質的な問題には触れずにコメントする事が多いようである。恐らくフジテレビ側からコメント内容についてあらかじめ釘を刺されているのだろう。筆者から見れば御用専門家の一人に過ぎず、その発言内容は全く参考にならないと断言できる。


国際的なTikTok排除で中国は怒りを顕にしている。その理由は正にTikTokが諸外国の情報収集の為の道具であるからと推測されるところだ。アメリカが正に図星をついてきているからこそ中国は本気で困っている…だから怒っているのである。つまり、アメリカのTikTok排除は「効いている」ということになる。

そもそもの基本に戻って考えるならば、中国の会社というのはすべからく中国(共産党)の為に奉仕する義務を負っている。その核心は中国自身が信奉する「中華思想」の実現を目的としている。中華思想とは「中国は世界の中心であり、世界は中国のものである」という狂気に満ちた思想である。中国はこれを大真面目に信奉しその目的に従って着々と世界各国を侵略する触手を伸ばしている。(*1) 日本に対しても尖閣諸島を脅かし、沖縄で社会の分断に繋がる運動を煽り、北海道の土地を買い漁ったり、アイヌ民族の独立を画策するのも静かなる侵略の手口でありその一端である。TikTokもITという側面からの世界侵略手段の一つなのである。これは基本の情報として是非覚えておいていただきたい。



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(*1)
武漢コロナウィルスを全世界に拡散させて国際的に大きな被害を与えた中国だが、あのウィルスでさえも中国に依る世界への攻撃の一端かもしれない、という見方もある。昨年末から今年初頭にかけて中国国内では既に「武漢で新型のコロナウィルスが漏れ出て肺炎患者が急増して大変な状況になっている」ことが判明していた。それが判っていながらも中国は世界各国へ中国人が出ていく事を全く止めなかった。そのサポートをしたのが中国に抱き込まれたWHOのテドロス・アダノム事務局長である。このことで全世界がどれだけ大きな被害を受け多くの死傷者を出したかを考慮すると、習近平主席は確信犯的に中国人を世界中に送り込んだのではないか、と推測できるほどなのである。







原爆の延長上に計画されていた日本人全員滅亡作戦

2020-08-20 16:25:25 | 国際
毎年8月6日と9日には広島・長崎に於ける原爆で犠牲になった人々の追悼セレモニーが行われる。核兵器の被害にあった事は日本にとって非常に大きな事であった。

大東亜戦争当時のアメリカ大統領であったトルーマンの有名な言葉がある。

「原爆は失われたかもしれない多くのアメリカ兵の命を救った」

今でもアメリカ人の多くはこの言葉に賛同しているが、日本人の多くはこの言葉には大きな抵抗を持つであろう。一発の原爆であまりにも多くの市井の人々(非戦闘員)が亡くなっているからである。

だが、当時のアメリカが考えていたのは原爆だけではない。もしも日本がポツダム宣言を受諾せず無条件降伏していなかった場合、原爆の先に恐ろしい作戦が存在していたのだ。それは「日本人全滅計画」である。「全滅」はオーバーではなく、本当に全ての日本人を殲滅して根絶やしにしてしまう計画が実際にあったのである。

その名は「ダウンフォール作戦」。


今回は2020年8月18日配信のDHCテレビ「ニュース女子」にて紹介されたその内容をお届けする。


「ダウンフォール作戦」とはどのようなものだったのだろうか。


ダウンフォールとは滅亡という意味である。
広島と長崎に原爆が投下されたが、実は日本各地に対してさらなる原爆投下の計画があった。そして原爆だけでなく、サリン等の化学兵器で日本人を一人残らず殲滅させる、というプランもあった。それだけではなく、農地に薬剤を散布することで食料を絶って日本人を完全に抹殺する計画だったのである。

ダウンフォール作戦は下記の二つの作戦から成っている。

・オリンピック作戦
・コロネット作戦

具体的な流れとしては、まずオリンピック作戦で九州南部に上陸して占領する。そこでB29爆撃機の拠点を作って次のコロネット作戦の準備をする。

オリンピック作戦から5ヶ月後にコロネット作戦が発動される。

具体的には神奈川県相模湾と千葉県九十九里浜に上陸する。規模は107万人の兵士と1900機の航空機である。これで首都東京を挟み撃ちする形をとる。


実は日本側でもダウンフォール作戦が計画されている事を察知していた。これに対して日本軍部は一億玉砕を覚悟する。日本本土での防衛作戦である「決号作戦」で来たるべき本土決戦に挑む事になった。(実際にはポツダム宣言受諾で決号作戦は実行されなかった)

そうなると当然兵士が足りないので徴兵も強化された。60歳までの男子、40歳までの女子が徴兵されたのだが、当時の平均寿命は50歳未満だったので、事実上すべての国民(2600万人)が対象だったと言える。国民全員を本土決戦に投入しようというのである。もちろん各種の特攻兵器も総動員である。


ダウンフォール作戦が実行された場合の死傷者の想定は次の通りである。

・米軍 50万人以上
・日本 1500万人以上

相当な規模であり大きな犠牲を予想していたのである。




連合軍側に於ける「日本降伏に向けた計画と推移」は次のようなものであった。

(1)1943年11月「カイロ会談」にて方針が決定される。

(2)1945年2月のヤルタ会談直前にダウンフォール作戦の骨子が完成する。ドイツ降伏後、ソ連が日ソ不可侵条約を破って参戦申し入れ。

(3)1945年3月大都市空襲(東京・名古屋・大阪・神戸)

(4)1945年8月 原爆投下 → 日本降伏

(5)ダウンフォール作戦
大量破壊兵器や毒ガスなどによる無差別攻撃の実施。
・第1段階 1945年11月1日決行予定「オリンピック作戦」
・第2段階 1946年3月1日決行予定「コロネット作戦」



当時のアメリカはフランクリン・ルーズベルト大統領の民主党政権だった。その中でヤルタ会談を含めて日本に無条件降伏を求めて日本を徹底的に痛めるという政策を作ったメンバーの多くが実はソ連の協力者でありスパイだった。

ソ連の思惑はこうだ。アメリカに拠る日本の徹底的痛めつけで日本人がアメリカ嫌いになったところに入り込み、反米を煽ってソ連側に引き込む・・・という魂胆だったのである。

このようなシナリオをルーズベルト政権の側近たちが考えていたのであり、それが1995年に公開されたヴェノナ文書(*1)で明らかになったのである。



戦争においては、第一次世界大戦以降、国力のすべてをあげて戦う「総力戦」という概念が出てきた。国力の全てを動員して徹底的な殲滅壊滅に動く、ということだ。独ソ戦では日本以上の犠牲を実際に出している。それに対して近年ではいったん戦争が始めるとそういう壊滅的な事態になってしまう事を嫌うようになった。それ以降、大国が全面的に対決するような戦争は第二次世界大戦以降起きてない。

総力戦という形で相手を徹底的に痛めつけてしまうと、その地域・国民の全員が自分達の敵にまわる事になる。アメリカ軍は沖縄を徹底的に痛めつけたので、沖縄の人はどうしても反米になるのは必然であろう。そうなるとその後でアメリカが沖縄を利用しようと思っても色々と利用しづらくなるのだ。つまり、総力戦で相手を徹底的に痛めつけることは結果として政治的にはマイナスだということがわかってきたのである。

アメリカで当時野党だった共和党、国務省の政治家・官僚たちは、かつての独ソ戦などから学び議論し、その中で「ダウンフォール作戦で日本を徹底的に痛めつけることは、実は結果的にアメリカの国益に対してマイナスである」ことを理解し始めていたのだ。だから日本に対してダウンフォール作戦を適用することは止めた方がよろしい、という方向に動き始めていた。「原爆かダウンフォール作戦か」という選択ではない事が見えていて、言ってみればそもそも原爆も不要だった、という議論すらあったのである。


それでも原爆は広島と長崎に落とされた。
なぜか?


当時のアメリカは海軍と陸軍があった。日米戦争に於いては実は海軍が連戦連勝していたのである。ミッドウェー海戦や沖縄などで勝っている。一方、陸軍はフィリピンなどでの例を含めて連敗だったのである。アメリカ陸軍としては「日米戦争で勝てたのは海軍のおかげ」と言われるのが嫌だったのだ。陸軍は「自分達のおかげで戦争に勝てた」ということにしたかった。そこで当時陸軍が開発していた原爆が登場するのだ。いわば陸軍が突っ張った結果の原爆だが、アメリカ海軍は一貫して「原爆は不要だ」と言い続けていたし、これについての議論はかなりあったのである。



ちなみに日本の陸軍と海軍も仲が悪かった。
しかし、ラッキーなことに当時の日本も東郷外務大臣や昭和天皇はそういうことを理解していたので「早く和平交渉を進めるべきだ」としていたのである。
だが、日本に於いても陸軍は視野が狭かったので、ついつい徹底抗戦・本土決戦などと言ってしまうのであった。実際はそんなことにはならないのだが。

こうして歴史的に背景を見ると視野が狭い人が指導者になるとろくでもないことになる事が判るのである。


ダウンフォール作戦の第1段階である「オリンピック作戦」の概要は次の通りである。


[オリンピック作戦]

決行予定:1945年11月1日
上陸地点:鹿児島県志布志湾・吹上浜、宮崎県宮崎海岸
兵力  :81万人
作戦内容:九州南部を制圧して航空基地の設営などを実施。日本全土がB29の射程内になる。中距離爆撃機で関東への爆撃が容易になる。原爆や毒ガス兵器の使用。制圧予定期間は4ヶ月。



日本でも大本営の参謀であった堀江氏は「この日に来るだろう」ということをほぼ正確に予想していてアメリカ側の作戦計画とほぼ一緒だった、ということが後で判明している。


そもそも「戦争の勝敗」とは何が決め手になるのだろうか?


航空機を使って激しく爆撃しても決まらないのである。そういうことではなくて、最終的には「地上を占拠」することではじめて勝敗が決するのだ。

大量殺戮兵器がなければ一定程度の被害で収まるが、ダウンフォール作戦のような大量の兵器が出てくることになるとどうしてもそうなってしまうのである。地上を占拠するという、この作戦が是か非かではなくて、軍事ではこれをやるのが常識なのである。相手方エリアを占領することが重要なのだ。そうしないと戦争が終わらないからである。


ダウンフォール作戦の第2段階である「コロネット作戦」の概要は次の通りである。


[コロネット作戦]

決行予定:1946年3月1日
上陸地点:湘南海岸(神奈川)、九十九里浜(千葉)
兵力  :オリンピック作戦との合計で、艦船3000隻、航空機6000機 、総人員180万人
首都圏を制圧し東京を包囲し攻略する
制圧予定期間:上陸後30日で東京を包囲



ドイツは実際にこれを徹底的にやられた挙げ句に国土は分割されて西ドイツ・東ドイツとなった。
ベトナム戦争もこれが行われた。枯葉剤を撒いて徹底的にやったのだが、もの凄いレベルで抵抗された上にアメリカ国内で反戦運動が起きてしまったので、それ以上戦争を続けられなくなってしまった。その結果、ベトナムはまるまる共産主義のソ連に持っていかれたのであった。

それでいけば、日本は敗戦国になったのに分割支配されなかったのは奇跡的なのである。それはその事にアメリカ内でも常識ある人が気づいたことで変化があったのである。


戦争は戦闘員同士の正規の争いである。国際法では非戦闘員の殺戮は認められていない。しかし原爆で大きな被害を受けて普通の市井の人々が多く亡くなっている。独ソ戦でもそうだったのである。なぜそれが許されるのか不思議である。これは国際司法裁判所に訴えられるレベルの話である。広島長崎の人々はアメリカに対して訴訟できる資格がある筈だ。アメリカは国際法違反をしたからである。

ドイツでも敗戦が確定した後でドレスデン空爆(*2)があったのだ。


余談だが、歴史を見た時、もっと古い話で言えば、コロンブスの南米大陸発見がある。そこからスペインが何をやったかと言うと、南米大陸を支配する目的で自国の刑務所で服役している囚人たちを連れて行って「(新大陸の住民を)殺してこい」と命令したのだ。首何個で報酬がいくら…などとやっていたのである。ぞっとする話だが、それくらい欧米の人間は実は残虐なのである。(*3)

話を戻す。

コロネット作戦に対応する日本軍の話である。
当時の軍サイドは準備を一生懸命にやっていたが、実際に昭和天皇が「これに本当に立ち向かえるのか?」と疑問を呈して何度も軍に聞いたのだが、軍はちゃんと回答できなかった。できないのである。物資不足で既に武器が何も無い状態だからだ。


昭和天皇はどういうルートでダウンフォール作戦の情報を得たのだろうか?


実は、軍は一枚岩ではなくて、軍の中でも政治がちゃんと判っている人たちも居たのだ。いわゆる「反ソ派」の人たちだ。インテリジェンス(情報)系の人たちはソ連に対して警戒心を持っていたのだ。「アメリカと戦うことは一方的に日本をソ連に追いやることだ」と判っていたのである。なので、「ソ連に占領されないようにするためにはアメリカと戦うべきじゃない」ということがちゃんと判っている人たちが当時の軍の情報部/インテリジェンス系には結構居たのである。彼らが裏から吉田茂とか重光葵を通じて昭和天皇にそういう情報を上げていたのだった。

明治時代、日露戦争の頃から日本は本質的に北方に対しての警戒感が非常に強いのである。軍のインテリジェンスも基本的には北方向けだったのだ。



[日本の防衛体制について]

★決号作戦:「一億玉砕」をスローガンとした本土防衛の最終作戦計画

国民義勇戦闘隊:男子60歳、女子40歳までの国民全員(約2600万人)装備は各自が準備(弓、刀、農機具、竹槍など)

国土決戦教令:決戦間には傷病者の後送を行わない。戦闘中の部隊の後退を禁ずる。支援部隊であっても命令があれば突撃に参加する。敵が住民を盾にして前進してきた場合には躊躇なく攻撃する。

もし日米の両作戦(ダウンフォール作戦&決号作戦)が決行されていれば戦死者はアメリカ50万人、日本1500万人になったと推定されている。

恐ろしいのは、敵の攻撃で「一億玉砕」ではなく、自ら「一億玉砕」しに行くようなイメージになっていることだ。ほとんど自滅の形なのである。


日本陸軍の一部にはソ連大好きな人も居た。その人達は「朝鮮半島から北を全部ソ連にあげて、交換にソ連軍に来てもらって一緒にアメリカと戦おう」という訳のわからない事を言ってる奴もいたらしい。

映画「日本の一番長い日」(岡本喜八監督)では「玉音盤を奪って終戦工作をさせない」という陸軍の跳ねっ返りの参謀たちが居て、そういう連中が正に「一億玉砕」を言っていたのである。ソ連の罠にまんまとはまっていた残念な人たちである。それは「鬼畜米英」と叫んでアメリカ・イギリスがけしからん、と言ってソ連と組もうとする単純馬鹿だ。今現在でもアメリカ・イギリスが嫌いで、その関係で中国が好きだという人が日本の野党にいっぱいいるが、あれと同じである。ついでに言うと朝日新聞も同じだ。



日本軍の「決号作戦」は現実的な計画ではない。槍で戦うのはまるで戦国時代のようである。実際には兵站線がなくなった段階でその人達は「戦闘能力ゼロ」とされる。日本の場合、最終的に幸運だったのは「ちゃんと降伏できる政府があった」ということである。これが無政府状態で「北陸は海軍が治めている、東北は陸軍が握っている」といったバラバラな状態だと無理であったことは間違いない。降伏する主体がないからである。日本がきちんと近代国家として成立している事が判るのは、ちゃんとヘッドクォーターがあって、最終的には天皇陛下の御聖断を仰ぐ、という形があること。昭和天皇が「戦争を終わらせる」と決断してくれたのだ。その決断を言ってくれる人がいて、それを実行できる政府があったことがラッキーだったのである。これがもし無かったとしたら状況は混沌とするだろう。誰が誰と戦ってるのかもわからなくなって、下手したら東北地方の一部にはソ連軍が
入ってきて、南方はアメリカと共同でソ連に対抗し始めて…となると完全にベトナム戦争と同じになってしまう。または朝鮮戦争のようなものだ。それを避けられた事は本当に大きなことだったのである。


当時のアメリカに於いても、前大統領だった共和党のハーバート・フーバー(*4)がシムスン陸軍長官の顧問になっていた 。シムスン陸軍長官に対して「軍事だけでものを考えちゃ駄目だ」と言ったのだ。「戦争は政治」だから、軍部は軍の合理性だけで考えるのは間違いである。そうではなくて国際政治の大きな構造を見た時に「日本が余力がある間に日本とアメリカで和平を進めていけばアジアは自由主義陣営で維持できる(*5)」という大局観を懸命にシムスンに訴えるのだ。言っても前大統領なのでシムスンたちはフーバーの議論に押し戻されて最終的にトルーマン大統領も「余力のある日本と終戦に応じる」という決断をしたのである。日本側ももそういう構図を理解した上で決断をしたのだった。国際政治はお互いの意向を踏まえなければ進められないのである。



終戦後の対応もソ連とアメリカの評価を分けた。

当時の日本でも例えば満州でソ連に抑留された人々はソ連に対する恨みつらみが半端ない。「一生許さない」「死んでもソ連だけは許さない、と。一方で南方組(アメリカ)は一回降伏してしまったらむしろ優遇されるのである。日本の植民地に派遣されている官僚に対して巣鴨プリズンに入れる前にお土産もたせて一回帰還させてからもう一度戻らせる。それでアメリカへの評価は全く違ってくる。お土産の缶詰数十個だけでアメリカへの印象が俄然良くなってしまうのである。その後ずっと親米になったりする。こうしたところでもアメリカとソ連の違いが際立つのだ。これが何かと言えば、アメリカは戦争が政治であることをちゃんと理解していた、ということなのである。

アメリカは日本の事を考えて対応したのではなくて、自国のメリットデメリットを考えていた。しかしソ連の場合は「共産主義革命」であり「革命の輸出」を進める気満々だったのである。実はアメリカのトルーマン政権はソ連が参戦してくる方が恐怖だったのだ。日本側としても原爆よりもソ連の参戦が問題だったのである。

これらがぶつかりあっていたのであって、当時の日本のマジョリティーはこれが理解できていなかったのである。


戦争は政治である。


昭和天皇と吉田茂なども含めて日本の外務省、軍の情報(インテリジェンス)関係でこれをきちんと理解していた人たちがいてくれたからなんとかなったのである。戦争は政治であり、これを軍事の視点だけで見ていくと訳がわからなくなって思考停止になるだろう。





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(*1)
ヴェノナ文書
米英の情報機関が第二次世界大戦時のソ連の暗号を傍受・解読しまとめた極秘文書
1995年にアメリカ政府によって情報公開された

(*2)
ドレスデン爆撃
1945年2月13日~15日、第二次大戦終盤、連合国軍はドイツ東部のドレスデンに3900トンの爆弾を投下した。街の85%が破壊され、多くの一般市民が死亡した。これはイギリスの将軍が独断で決行を決定した。

(*3)
アメリカにとって原爆は降伏させるための道具でもあり実験でもあった。アメリカの科学者は原爆の威力・影響力・被害等々をつぶさに調べたかったのだ。終戦後にやってきたアメリカの諜報員が向かったのは広島・長崎であり、原爆の影響力を実地に調べたのであった。日本人は実験動物にさせられたのである。

(*4)
ハーバート・フーバー:第31代米国大統領。ルーズベルト政権が第二次世界大戦に参加することに強く反対していた。

(*5)
捏造された自虐史観でしか歴史を捉えていない人々が信じているのは「東南アジアで日本軍は嫌われているに違いない」ということ。しかし実際は逆だ。1955年にインドネシアで開催されたバンドン会議(アジアとアフリカの29カ国が参加した国際会議)があった。多くの国が欧米諸国の植民地支配から独立した国で、当時の世界人口の約半分を占めていた。ここに日本代表も恐る恐る参加したのだが、アジア・アフリカの人々は日本を歓迎した。なぜなら「自分達の地域を支配していた白人を追い出してくれたからのは日本だけ」だからである。日本は思いのほか上品だったのである。





TikTokなどの中国製品が本当に危険である理由

2020-08-18 08:38:00 | 国際
アメリカ政府は8月13日にファーウェイなど中国企業5社の製品やサービスを使う企業とアメリカ政府との取引を禁止する規則を施行した。中国製品の排除を一段と強化し機器などを通じて中国に情報が流出するリスクを回避する目的である。これで機器や部品の調達元を見直す日本企業も出てくるであろう。対象となる中国企業はファーウェイ、ZTE、ハイテラ、監視カメラ大手のハイクビジョン、ダーファテクノロジーの5社であり、アメリカは既に昨年8月からこの5社との取引を禁止している。

もう一つ、気になるニュースがある。

最近のウォール・ストリート・ジャーナルが伝えるところでは、中国系動画投稿アプリケーションソフトである「TikTok」がグーグルOS搭載のスマートフォンの識別番号を収集し、利用者の情報を追跡できるようにしていた、と報じている。利用者に無断で収集していたと見られ、グーグルの規約に違反して可能性がある、としている。TikTokは昨年11月に識別番号の収集を停止した。TikTokをめぐり、収集された個人情報が中国政府に流出する懸念が出ている。トランプ大統領は「(中国企業の)アメリカ事業をアメリカ企業に売却しなければ国内の事業展開を禁止する、としている。

これらの心配な事案に対して国際政治学者の藤井厳喜氏と元刑事で外国人犯罪等に詳しい評論家の坂東忠信氏が解説しているので、その内容を抄録の形で紹介したい。


アメリカ政府の措置は厳しい経済制裁の一貫である。日本の企業は名前が上がった中国企業5社とは売るのも買うのも駄目という事になる。中国に部品を供給している企業もそのままだとやがて制裁を食らうことになるだろう。

もちろん買うのも駄目であるが、実は中国企業が提供するサービスは既に日本に入っている。例えば文部科学省のエントランスで入館する人々の体温や顔認証のシステムなどにソフトバンクの関連会社が入っている等の事例がある。なので、この分野で中国と取引している日本企業は大幅に事業の見直しを迫られることになるだろう。

また、TikTokがスマホから収集した情報を中国政府に流していた、というのは確かな話である。

アメリカではマイクロソフトがTikTok事業を買い取るような動きが出ているが、しかしマイクロソフトもかなり親中派の企業なので、条件としては「マイクロソフトの中国事業を全部売却する」という注文がついている。そうすればTikTokを買ってアメリカで単体としてなら営業しても良い、という事のようである。

こうした動きは実質的な「中国封じ込め」である。

アメリカは「封じ込め」という言葉は使っていない。ペンス副大統領の演説では「我々の政策は中国の封じ込めではありません」としている。だが、内容を見るとやはり「封じ込め」なのである。国際ルールを守ってやってくれるのなら国際コミュニティは受け入れるのにやぶさかではないし自由貿易も賛成である、と。しかしルールを守ってくれないと困る、と。ルールを守ってくれない場合は経済制裁で「封じ込め」となるのだ。そりゃそうだろう。

8月5日のポンペオ国務長官演説が画期的だった。彼は「クリーンネットワーク」と言った。

「クリーン」とは何か?

それは「Without China」である。つまりインターネットのネットワークに於いて「中国抜き」であることが「クリーン」だ、と言っているのである。(笑)

「クリーン・キャリア」
「クリーン・ストア」
「クリーン・アプリ」
「クリーン・クラウド」
「クリーン・ケーブル」

・・・と言ったのである。

どういうことか?

「キャリア」は通信会社であり、これは中国資本が入った会社は駄目、ということ。チャイナテレコムなどは追い出される事になる。

「アプリストア」もクリーンでなければいけない。中国製アプリを販売するようなストアは駄目。

「クリーンアプリ」は、自分達が作ったアプリだが中国側が利用できなくする、ということ。

「クリーンクラウド」は安全なクラウドでなくてはいけない、と。中国のアリババやバイドゥ、テンセントなどが営業しているが、クラウドコンピューティングサービスからは中国は全部排除、となる。重要なのは「資金決済」もクラウドでやるので「クラウド排除」ということは全て排除、ということにほかならない。

最後に、興味深いのは「クリーン・ケーブル」と言っていることだ。

現在、インターネットの国際感通信の99%は海底ケーブルで接続されている。ここでも中国が新規に海底ケーブルを敷設したり、或いは既存のケーブル会社に資本参加する事を排除する。既にファーウェイなどがケーブル事業に関わっているからこそ、のことである。

なにしろ、どのような形であれ、中国が関わっているインターネットは「ダーティー(汚染されている)」である、ということだ。我々(アメリカ側)は「クリーン」でいく、と。当然日本も「クリーン」に入らなければいけない。これらの条件を全て満たした国は「クリーン・カントリー」ということになる。

だから「クリーン・カントリー」はアメリカ中心にみんなで固まってやっていこう、と。大部分の民主主義自由国家はそちらに入ってほしいが、そうではない国は中国側に行く、ということだ。

従って、今後状況は間違いなく「新・冷戦状態」になっていくであろう。

これらは日本にも適用されることなので、そういう体制をつくっていかなければならないだろう。二股掛けは「ダメ、絶対」である。

8月5日のポンペオ演説はこうした事を総体的に述べているので非常に大事なのである。


今年に入って武漢コロナウィルスの感染拡大が全社会的に被害を広げているが、感染しているのはウィルスだけではなく人間も思想感染しているし、情報流通に関しても企業が中国に感染しているのが実態だ。そうした様々な感染の形がある、と捉えた上での「クリーン」ということなのだ。そうした考えをベースに、アメリカの考えを拡散したいということだ。


「TikTok」にフォーカスした話をする。


TikTokの主な利用層は言うまもなく若年層である。では中高年世代は無関係なのだろうか?

実は若年層が入れ込むことで中高年にも大きなリスクが出ているのである。

どういうことか。


まず、TikTokがどのような状況で利用されているか、について記す。

現在、日本人のインターネットの平均利用時間は8.4分/日だそうだ。それに対してTikTokの平均利用時間は41分/日である。明らかに長い。(*1)

ここでTikTokに関わる深刻なリスクについて述べる。TikTokに自分の姿を投稿することでいったいどのようなリスクが発生するのだろうか。

まずスマホの識別番号が抜き取られている。そのスマホで映している「私」があると、スマホの識別番号とアカウントとそのアカウントを使っている本人がこれで結び付けられる。

それと中国製顔認証システムの危険性がある。中国では顔認証システムはウィグル自治区では既に実用化されているので、中国としては外国人の顔認証データも全て欲しいであろう事は火を見るより明らかである。

前述のように本人の「スマホ識別番号」「アカウント」の他に「本人の顔」というデータもすべて取られてしまうだろう。「現在地」データも同様だ。


さらに問題なのが「人間関係」を示すデータである。


例えばTikTok利用者が祖父と一緒に映ったTikTokを撮影したとする。その祖父がもしも有名人だったり中国が敵視する側の人間だった場合に、その撮影者のケータイ識別番号・アカウント・現在地などが知られた上に「その人と祖父との関係性」が中国に伝わってしまうのだ。その他にも友人と一緒に映れば撮影者と友人との関係性もバレてしまう。さらにそこからあらゆる断片的なデータを手がかりにそのユーザーにまつわる全ての人間関係が中国に伝わってしまい、全部が紐付けられてゆく、という可能性は非常に大きいのである。

必ずしも全員がそうなる訳ではないが、たまたまターゲットにされた人にはそうなる可能性が極めて高い、と言える。


アメリカでTikTokが危険だと言われ始めたのは前述のようなリスクがあるからであり、特に子どもたちの情報が流れてしまっている実態があるのだ。これは例えば誘拐といった犯罪にも使われる情報になる…といった話がアメリカ議会で議論されるようになってきたのである。親御さんにとっては相当心配な事案である。


TikTokはそういう意味ではうまく出来ていて使いやすいので引っかかる人間が多数出てきてしまうのである。面白おかしく楽しめているようで実は肝心な情報が抜かれてしまうのであり、その人の現在地まで伝わってしまうのは真に恐ろしいことである。

ある意味で、自分で「スパイを背負って歩いている」ようなものである。自分から進んでスパイに情報提供しているようなものであり、ある種の間抜け状態である。


スマホの識別番号を取られてその上でスマホ自体を乗っ取られたら危険はさらに深まることになる。ユーザー本人に気づかれずに裏でカメラ撮影してそのデータをユーザーが知らない内に流してしまえることは既に知られている大きなリスクの一つである。撮影された内容から、そこに居た人間が誰かや、風景や現在地データから割り出して、今どこの店に居るのか、といった事まで知られてしまうのである。



話を戻そう。

企業に対して「中国と関わるな」と言われても一概には難しい一面もある。中国製のパーツを使うな、と言われた場合、例えば「エレベーターの会社は中国製部品は無いので無問題である」となったとしても、エレベーター内に取り付けられた防犯カメラはどこ製ですか?という問題が出てくる。なのでエレベーターメーカーが作られたエレベーターに防犯カメラ一つ付けるにしてもちゃんとした”クリーン”なメーカーから調達しないと、それはアメリカでは駄目ですよ、となるのだ。

具体的には恐らく公共事業の入札といったところに、例えばファーウェイ製パーツが入った製品を社内で使っていると「その会社は駄目」となる。公共事業の入札は大きな単位のお金が動くので、たとえ受注できたとしても親会社・子会社・孫会社・系列会社の全てで中国製部品を一切使っていない事が大切な要件になるのである。この全てでクリーンである必要があるのだが、これが達成されるのにいったいどれくらいの時間がかかるのか。

藤井厳喜氏や坂東忠信氏たちは何年も前からこうした危険性について警鐘を鳴らしてきた。それでなくても世の中ではLINE(韓国発祥ソフト)だのカスペルスキー(ロシア製ウィルス対策ソフト)だのといった製品があるが、これらは全て軍事方面の技術が入っているのだから少なくないリスクがある。(*2) 軍事技術が入ってないのは日本くらいである。その意味では日本メーカーだけがクリーンだった、と言えるかもしれない。そういうことを考慮して使うべきだ、と言われていたのだ。

なので、そういうクリーンな会社ならアメリカが出した条件には即応できると思われる。逆にそのへんの意識が希薄で「他社も使っているから」程度の軽い認識で中国製を受け入れていた会社はこれからは対応できなくなってくるであろう。



さらに問題なのは日本の自治体である。

いくつかの地方行政府では非常にガードが甘く、TikTokを広報に利用するという事をやっていたのだが、最近では埼玉県がTikTokの危険性を認識して「TikTokと縁を切る」という決断をしたが、これは英断であった。

これは中央政府だけの問題ではなく、地方も各々気をつけるべき問題なのである。地方行政において公共事業の入札に関してもクリーンであることが最重要な条件になってくるのだ。



中国はその中華思想(中国は世界の中心であり世界は中国のものである、という思想)に依って世界への侵略を着々と進めている。その目的の為なら手段は問わず、ありとあらゆる手を使って攻撃してくる。通信機器といったハードウェアからTikTokのような娯楽ソフトウェアに至るまで、全ては中華思想実現という目的を目指す中国共産党の為に存在しているのだ。これは真実である。

悪意ある情報抜き取りを行い、各種の情報操作をかましてくるのも全ては中国共産党の野望に資する行為だ。油断も隙もないのだ。我々は本当に安穏としてはいられない…そういう時代になっているのである。



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<2020年9月12日:追記>
9月12日のロイターの報道では、「TikTok(ティックトック)の米国事業を巡って、中国政府は強制売却されるよりは閉鎖を望んでいることが複数の関係者の話で分かった。」ということだ。これが何を意味するかは明白である。

1.本来は一企業であるバイトダンスの商品であるTikTok事業の売却に中国政府がわざわざ口を出してくることで、これが中国政府の情報収集工作に関わるものであることが容易に推測できる。
2.TikTokが売却された場合、TikTokが裏で情報収集していたことが完全にバレてしまうので中国政府として困る。
3.そもそも世界各国の情報収集が目的でTikTokを世界中にばらまいたのだが、売却される事でその目的が果たせなくなる。だから自国の手を離れるくらいなら「もういらない」ということ。

だから中国政府にとってTikTok事業の売却は「マジで困る」事案なのだ。



<2020年9月14日:追記>
9月14日のブルームバーグ報道では「中国のバイトダンスはTikTokの売却または手放す場合、そのアルゴリズムは渡さないことを決定」となっている。つまりソースコードは見せない、ということ。見せたら困るからであろうことは容易に想像できる。TikTokが単なる娯楽アプリであるならそこまで渋る必要は無い筈だ。情報収集機能が組み込まれているから「バレたら困る」訳で、だからゴネているのである。TikTokがクロであることを自ら示したようなものである。


<2022年7月3日:追記>
トランプ政権で国務長官を務めたマイク・ポンペオ氏がツイッターでTikTokの危険性について述べている。
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TikTok is in the grip of the Chinese Communist Party. If your kids are on it, the Chinese government likely has their social security number, privacy data, their pictures, and more. Make no mistake, China is using and will use this private information against the American people.
[TikTokは中国共産党の支配下にあります。 あなたの子供がTikTokに興じている場合、中国政府は恐らく彼らの社会保障番号、プライバシーデータ、彼らの写真などを持って(収集して)います。 間違いなく、中国はこの個人情報をアメリカ人に対して使用しており、使用する予定です。(アメリカ人への工作に使う、という意味)]

Mike Pompeo 午前1:34 · 2022年7月3日
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TikTokにセキュリティ上の危険があることが確認されているからポンペオ氏は警報を発しているのである。



<2022年10月9日:追記>
9月下旬に、TikTokを運営する中国企業バイトダンスの従業員が、中国から米国のTikTokユーザーの非公開個人情報(携帯電話番号など)を勝手に盗み見していたことが、同社のウェブ会議の音声記録が漏洩したことで明るみに出た。案の定、である。
TikTokは中国政府が世界中の個人情報の収集用に利用しているアプリである。収集された膨大なデータはAI(人工知能)に依って解析されて西側諸国を分断させる目的で使われるのである。アメリカの報告に依れば、TikTokの動画の中で2割がフェイクニュースであって、社会の分断を煽って不安定化させるために利用されている、とのことである。




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(*1)
母数が同じかどうか不明だが、いずれにしても相対的に「長い」のは間違いないだろう。

(*2)
韓国などは国家が「(アプリを通じて)情報を抜きますよ」と明言もしているほどである。