滋賀県大津市で起きたいじめ自殺事件は各方面に波紋を広げ、影響を及ぼしている。
識者・文化人と称する人々も出てきてあれやこれやと議論が喧しい。
問題をやたらに難しく複雑に考える人が多いのだが、人間のやることの本質はシンプルで単純であることが多い。
問題は大きく分けて2つの側面がある。
1.国や県・市といった行政のシステムと学校のあり方、教育委員会の
あり方、警察機関との関わり等に関するシステマティックな側面。
2.そもそも「いじめ」を行う人間の深層心理に関わる根源的な問題。
ここでは2.の「いじめ」を行う人間心理についてシンプルな真実を念頭に考える。
もっとも1.のシステムの中にもそれを構成する人々の深層心理が事件の拡大と深化を招いた側面があり、大きな意味では2.のテーマも含まれる。
人間は誰でも心の中に「否定したい人や受け入れがたい概念・価値観」を抱いており、その否定したい対象をしばしば実在の人物に投影してしまうことがある。
判りやすい事例で言えば、殺人という行為に対しては誰でも否定的な価値観を持っている。
実際に殺人を犯した人物に対しては憎しみや悪感情を持つのが普通である。
その裏にどんな心理作用が働いているのであろうか。
ユングの深層心理学では、自分が否定したいと思っている価値観や概念を生み出す元になるものを「影(シャドウ)」という元型(アーキタイプ)と呼ぶ。
前述の事例で言えば、一般的に人は殺人犯に対して「影」元型を投影する。だから犯人への憎しみの感情を持つのである。
いじめ加害者は己の中の「影」元型をいじめ被害者に投影している。
その結果として実際のいじめの行為が発生する。
これがいじめ事件の最も根底に存在するものである。
この「影」元型は誰の深層心理の中にも存在する。
「影」の無い人間はいない。
ユングはこう言った。
「ものが塑像として見える為には光と影を必要とする」
心の中の光の部分と影の部分の両方があって、初めて人間らしい存在となれるのである。
人間の光の部分は大切だが、影の部分を単に否定して済ますのではなく心の中に良い形で影を統合してゆくことの必要性をユングは説いている。
もしも良い形で「影」を心に統合することができなかったら・・・?
そのような場合に例えば「いじめ」といった悪い形で心の外に現れてくるのである。
「いじめ」を実行して恥じないような人は「影」を己の心の中に統合することに失敗した、ということなのである。
統合できなかったからこそ、己の内側の「影」を実際の他人に投影し、相手を否定することで己の安定を得ようとする。
「影」とは己の自我が受け入れがたいものだから必死になって否定する。
それが「いじめ」という行為となって特定の人物に投影されて攻撃されてしまうのである。
「いじめ」をする心の弱い人間は大抵の場合、こずるい性格で卑怯だったりするので自分より弱い人間を「いじめ」の対象に選ぶ。
決して自分より強そうな人間をいじめたりしない。
大人でも「影」元型をうまく統合できない人が多いが、まして中学生や小学生なら未熟でありこうした陥穽にはまる危険性も大きい。
だからこそ親が躾をし学校が教育をしている筈なのだ。
それでも事件は起きた。
それは子供たちだけでなく少年を取り巻く大人社会が腐敗していた…つまり大人たちも「影」元型を統合できずに不完全な精神・心理を抱えたままになっていることを示している。
かなり情けない状態と言える。
非常にざっくりとした説明ではあるが、「いじめ」の根底にはこのような心理作用が働いているのである。
「元型」やその一つである「影」については専門書や学術サイト等で説明されているのでここでは詳しく書かないが、こうした人間心理に普遍的な作用・影響については社会的にもっともっと知られているべきである。
一般的に人はこうした深層心理の動き・作用についてあまりに無知である。
マスコミはこうした心理学の知見を少しは社会に啓蒙・普及させるべきであろう。そしてマスコミ自身も勉強すべきである。(*1)
「いじめ」問題が発生するたびにあまりに低い次元で右往左往するマスコミの姿はもはや醜悪ですらある。
いい加減、少しは勉強して欲しい。
人間というものを深く理解してもらいたい。
こうした知識・知見が人間をより良い方向へも導くのだし、誤りを犯すことの予防にもなるのである。
もっと広く社会的知られて・考えられて良い知識・概念・情報なのである。
(*2)
大切なことは、起きてしまった「いじめ」に対してどうするか(対症療法)ではなく、そもそも「いじめ」を起こさない為にどうしたらよいのか(予防法、そして社会のあり方)を常に考えるべきなのである。
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(*1)
おとなしく聞き分けの良い子供がある日突然キレて凶悪犯罪行為をするようなケースがある。
このようなケースではマスコミは必ず
「良い子なのになぜ?」
とか
「おとなしかった筈の子供がなぜ?」
などとさも意外そうな記事を書く。
しかし深層心理と元型としての「影」の作用を知っていれば意外でもなんでもなく理解できることである。
自身の「影」を一方的に抑えこんで生きてきた人はやがてある臨界点に達すると抑えられていた「影」のエネルギーが爆発するのである。
ここにも「影」元型をうまく心に統合できずに破綻した形がある。
多くの悲劇はこのような心理作用の結果発生している。
全く自明の理なのだが、無知で不勉強なマスコミにとっては「意外」で「理解を超える出来事」らしい。(蔑笑)
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(*2)
個人の深層心理における「影」の作用は社会の中に問題を発生させるのであるが、これが国家間や民族間で起こると戦争という最も悲惨な現象が起きてしまう。
これは為政者・権力者の資質の問題である。
「影」に振り回される愚かなタイプの権力者はしばしば国家を危険な状況に陥れる事がある。
現在も実際にそうした事例が世界のあちこちに起きている。
識者・文化人と称する人々も出てきてあれやこれやと議論が喧しい。
問題をやたらに難しく複雑に考える人が多いのだが、人間のやることの本質はシンプルで単純であることが多い。
問題は大きく分けて2つの側面がある。
1.国や県・市といった行政のシステムと学校のあり方、教育委員会の
あり方、警察機関との関わり等に関するシステマティックな側面。
2.そもそも「いじめ」を行う人間の深層心理に関わる根源的な問題。
ここでは2.の「いじめ」を行う人間心理についてシンプルな真実を念頭に考える。
もっとも1.のシステムの中にもそれを構成する人々の深層心理が事件の拡大と深化を招いた側面があり、大きな意味では2.のテーマも含まれる。
人間は誰でも心の中に「否定したい人や受け入れがたい概念・価値観」を抱いており、その否定したい対象をしばしば実在の人物に投影してしまうことがある。
判りやすい事例で言えば、殺人という行為に対しては誰でも否定的な価値観を持っている。
実際に殺人を犯した人物に対しては憎しみや悪感情を持つのが普通である。
その裏にどんな心理作用が働いているのであろうか。
ユングの深層心理学では、自分が否定したいと思っている価値観や概念を生み出す元になるものを「影(シャドウ)」という元型(アーキタイプ)と呼ぶ。
前述の事例で言えば、一般的に人は殺人犯に対して「影」元型を投影する。だから犯人への憎しみの感情を持つのである。
いじめ加害者は己の中の「影」元型をいじめ被害者に投影している。
その結果として実際のいじめの行為が発生する。
これがいじめ事件の最も根底に存在するものである。
この「影」元型は誰の深層心理の中にも存在する。
「影」の無い人間はいない。
ユングはこう言った。
「ものが塑像として見える為には光と影を必要とする」
心の中の光の部分と影の部分の両方があって、初めて人間らしい存在となれるのである。
人間の光の部分は大切だが、影の部分を単に否定して済ますのではなく心の中に良い形で影を統合してゆくことの必要性をユングは説いている。
もしも良い形で「影」を心に統合することができなかったら・・・?
そのような場合に例えば「いじめ」といった悪い形で心の外に現れてくるのである。
「いじめ」を実行して恥じないような人は「影」を己の心の中に統合することに失敗した、ということなのである。
統合できなかったからこそ、己の内側の「影」を実際の他人に投影し、相手を否定することで己の安定を得ようとする。
「影」とは己の自我が受け入れがたいものだから必死になって否定する。
それが「いじめ」という行為となって特定の人物に投影されて攻撃されてしまうのである。
「いじめ」をする心の弱い人間は大抵の場合、こずるい性格で卑怯だったりするので自分より弱い人間を「いじめ」の対象に選ぶ。
決して自分より強そうな人間をいじめたりしない。
大人でも「影」元型をうまく統合できない人が多いが、まして中学生や小学生なら未熟でありこうした陥穽にはまる危険性も大きい。
だからこそ親が躾をし学校が教育をしている筈なのだ。
それでも事件は起きた。
それは子供たちだけでなく少年を取り巻く大人社会が腐敗していた…つまり大人たちも「影」元型を統合できずに不完全な精神・心理を抱えたままになっていることを示している。
かなり情けない状態と言える。
非常にざっくりとした説明ではあるが、「いじめ」の根底にはこのような心理作用が働いているのである。
「元型」やその一つである「影」については専門書や学術サイト等で説明されているのでここでは詳しく書かないが、こうした人間心理に普遍的な作用・影響については社会的にもっともっと知られているべきである。
一般的に人はこうした深層心理の動き・作用についてあまりに無知である。
マスコミはこうした心理学の知見を少しは社会に啓蒙・普及させるべきであろう。そしてマスコミ自身も勉強すべきである。(*1)
「いじめ」問題が発生するたびにあまりに低い次元で右往左往するマスコミの姿はもはや醜悪ですらある。
いい加減、少しは勉強して欲しい。
人間というものを深く理解してもらいたい。
こうした知識・知見が人間をより良い方向へも導くのだし、誤りを犯すことの予防にもなるのである。
もっと広く社会的知られて・考えられて良い知識・概念・情報なのである。
(*2)
大切なことは、起きてしまった「いじめ」に対してどうするか(対症療法)ではなく、そもそも「いじめ」を起こさない為にどうしたらよいのか(予防法、そして社会のあり方)を常に考えるべきなのである。
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(*1)
おとなしく聞き分けの良い子供がある日突然キレて凶悪犯罪行為をするようなケースがある。
このようなケースではマスコミは必ず
「良い子なのになぜ?」
とか
「おとなしかった筈の子供がなぜ?」
などとさも意外そうな記事を書く。
しかし深層心理と元型としての「影」の作用を知っていれば意外でもなんでもなく理解できることである。
自身の「影」を一方的に抑えこんで生きてきた人はやがてある臨界点に達すると抑えられていた「影」のエネルギーが爆発するのである。
ここにも「影」元型をうまく心に統合できずに破綻した形がある。
多くの悲劇はこのような心理作用の結果発生している。
全く自明の理なのだが、無知で不勉強なマスコミにとっては「意外」で「理解を超える出来事」らしい。(蔑笑)
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(*2)
個人の深層心理における「影」の作用は社会の中に問題を発生させるのであるが、これが国家間や民族間で起こると戦争という最も悲惨な現象が起きてしまう。
これは為政者・権力者の資質の問題である。
「影」に振り回される愚かなタイプの権力者はしばしば国家を危険な状況に陥れる事がある。
現在も実際にそうした事例が世界のあちこちに起きている。