経団連(経済団体連合会)が2024年度税制改革に関する提言を出して、消費税の引き上げを「有力な選択肢の一つ」と指摘したことで侃々諤々の議論となっている。これはいったいどういうことなのだろうか?これについて、数量政策学者の高橋洋一氏の解説を基調にして記してゆく。
経団連は経営者達の団体である。メンバーがいわゆる一流企業のトップたちである。その中で頂点に立つのが経団連会長であり、財界総理などと呼ばれる事もある。かつては4代目会長だった
土光敏夫氏のような、しっかりした「志」を持ち、それを貫く立派な経営者(*1)も居たが、今の経団連はサラリーマンあがりの社長ばかりで目の前の利益しか見ていない卑しい連中が多く、人間的には「小物」ばっかり…そういう組織である。
それはともかく、日本を代表する経営者達の団体、というのが説明になるだろう。それが経団連である。
経団連はなぜ政治的な力を持つのだろうか?
「政治献金しているから」である。
経団連が企業からお金を集めて、経団連がまとめて自民党に政治献金するのが一般的な形である。自民党からすれば大スポンサーだ。従って経団連会長の意向は無視できないのが実情である。
また、経団連会長の権限も非常に大きいものがある。現在の税金に関する政策のほとんどは経団連の意向が反映されている、と言っても過言ではないくらい…であろう。もっとも、普通に払う税金のことであり、消費税は経団連は直接の関係はない。
経団連に関係するもので言えば、例えば法人税がある。法人税は徐々に引き下げているのだが、それは経団連の意向である。また、租税特別措置というのがあり、これはここの企業に対する税金の恩典(かかった経費には課税しない、とか)である、ここの企業にとってメリットの大きな税制が多いのが実態だ。
冒頭に記した話に戻るが、
「経団連は消費税の増税に賛成」である。
なぜか?
財務省が上手いこと取り込んだから、である。
どういうことか?
経団連が欲しがるものは何か?・・・2つある。
一つは
「社会保険料」である。
社会保険料は労使折半で払われる形になっている。だから社会保険料が上がると、労働者も大変だが経営者も大変なのだ。
財務省はここを突いた。
「社会保険料、上げなくていいですよ」
と財務省が言ったのだ。その代わりに財務省は
「消費税を社会保障に当てる」という方針を打ち出したのである。これなら経営者側は大賛成である。社会保険料負担が増えなくて済むからである。
さらに、財務省はそれ以上のメリットを経団連に与えた。
「法人税を下げます」
これである。
経団連にしてみれば
「社会保険料を上げなくて済む」「法人税は下げてくれる」とくればハッピーであり、だから
「消費税の増税」に賛成したのである。経団連には国民の負担増や苦痛など眼中にない。
もっとも、消費税を増税して景気が悪化して自社の商品の売れ行きが悪くなったらどうするのか?
そこは考えていないのが今の経団連の連中なのである。いつも目先の利益しか考えてない人たちだから、だ。(笑) 消費税の増税で景気が悪くなっても、そのダメージは会社によって違う。そこはもう考えない、というのが経団連であり加盟企業の面々なのだ。彼らはみんな「うちの会社は大丈夫」と根拠もなく思い込んでいるのだ。(笑) それよりも目先のこと、つまり「社会保険料負担は上げない」「法人税を下げてもらえる」というだけで、まるで財務省の飼い犬のように従ってしまうのである。こんな情けない人々が今の日本の大企業のトップをやっているのだ。
経団連は多くの大企業の寄せ集めである。事務局(東京の大手町にある)はあるが、そこに居るのは
「民僚」(官僚の民間版)と呼ばれる人々である。民間人なのだが、中味は官僚のような資質を持つ人々…そう考えて間違いない。そして、この人々は財務省と意思疎通ができるのである。人種が同じだから、か。年中意思疎通しているようで、いわゆるツーカーな関係と言えよう。
高橋洋一氏によれば、
「世界で消費税を社会保障目的税に使っている国は無い」
ということだ。日本だけなのであり、類例のない「おかしな制度」と言えるものだ。
普通は社会保障は社会保険料でやるものである。社会保険料でやるからちゃんと運営できる、というのが原則である。消費税を使うと社会保険の運営が危うくなる…と高橋氏は昔から警鐘を鳴らしている。
これはどうしたら正しい形に持っていけるのだろうか?
「消費税を使うと社会保険の運営がデタラメになる」
という事を国民がもっと知らないと駄目なのである。
社会保険というのは保険なので「保険料で取る」というのは当たり前の話であり、この基本を理解していなくてはならない。だが、本来これを国民に知らせるべきマスコミもここが全然理解できていないのだ。
なぜか?
マスコミ連中の頭が悪いから、である。(蔑笑)
この話は基本を知れば非常に単純であることが分かる。だが、マスコミは頭が悪いので、実態や真実を全く報道しない。いかりや長介氏風に言えば「駄目だこりゃ」な惨状を呈しているのだ。
さて、そんな経団連だが、会社とか経営者にとっては良い団体なのである。ただ、それが国民にとっても良いかどうかは別の話、となる。
大企業の経営者など、日本の中でほんの一握りしか存在しないが、その少ない連中がお金を持ちパワーを持つことで日本を動かしている、ということになるのだ。
これをどうにか変えることはできないのだろうか。高橋氏曰く「選挙だね」ということだ。
どういうことか。
経団連から政治献金を貰うよりも国民からの票を貰う方が良い、というのが正しい姿であろう。
ところが、現在はマスコミも経団連にベッタリなのでどうにもならない。マスコミにとっては大スポンサー様だからである。経団連の企業はみな大きいので広告の出稿費も大きなものになる。なので、今後は広告の流れが変わったりすると、また違ってくる可能性もある。経団連所属の企業はいわゆる重厚長大と言われる伝統的な製造業が主である。最近の新興企業は入っていないのだ。新興企業はむしろマスコミよりもネットの方に行っている。そうなると、経団連の力はだんだん相対的に少なくなってゆくであろう、と見られている。
だが、そうなると新興企業の団体の方に財務省が粉をかけてくる可能性もある。しかし、ネットは自由が多い。そういう風土のところへは財務省も行きにくいのが実情なのである。
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(*1)
財界トップでありながら食事は(ポーズではなく)メザシを食べるような質素な暮らしぶりが話題だった。「メザシの土光さん」として有名だった。昔の経営者にはしっかりとした「志」があり、人間力に優れた人物がいたのである。
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