Altered Notes

Something New.

タンチョウ ありがちな勘違い

2020-06-09 12:18:58 | 自然
北海道東部、特に釧路湿原などでよく見られる鳥として有名なのがタンチョウである。今回はこの呼名についてのちょっとした問題だが、ほぼ誰も指摘していない事実について記したい。

「タンチョウ」は元々「丹頂鶴」であり、一般的に「鶴」と言えばこの種を指すのである。ところが、社会一般で言われているところの「タンチョウ」は本来「丹頂鶴」であることを知らずに呼ばれている気がしてならない。「タンチョウ」とは「丹頂」である。知識のない一般の人たちは「タンチョウ」を「丹鳥(タンチョウ)」だと思っているのではないか、という気がするのだ。(*1)一般的に、あまりにも無造作に「タンチョウ」とだけ呼ばれるケースが多く、しかもその言い方を聞いていると鶴ではなく「丹鳥(タンチョウ)」という鳥(種)だと勘違いしているように思えて仕方ないのだ。そう考えると気になって夜も眠れないので昼寝ばかりしている。

丹頂鶴の「丹」は「赤い」という意味である。だからただ「タンチョウ(丹頂)」と言うと「頭頂部が赤い」と言う意味になる。丹頂鶴の頭頂部には羽毛がなく露出した赤い皮膚があってこれに由来する名称なのである。この皮膚の露出部分は赤く細長い丸っこい小さな突起が夥しく密集している。赤い色は血液の色だそうで、近くで見るとなかなかのインパクトがあり、一種の「閲覧注意」に該当するかもしれない。

なので、繰り返すが一般の人が「タンチョウ」と言う時、実は単に「赤い頭」と言ってるだけ・・・ということになるのだが、前述のように人々は「タンチョウ」が「丹鳥」だと勘違いしている可能性があるのでなかなか気が付かない・・・ということなのかもしれない。その意味では正式に「丹頂鶴」と呼んだ方が誤解も起こらず良いのでは、という気もする。

当の丹頂鶴は生息数が減っているようで、日本に限らず人間に依る地域開発等の影響で生息域が徐々に減る傾向にあって絶滅危惧種に指定されている鳥である。

釧路湿原などの原野を群れをなして飛行する姿は非常に美しく、以前から写真家や映像作家達の格好の被写体としても定番になっている。



------------------------



(*1)
あのタモリ氏でさえ、ブラタモリで釧路湿原を訪問した際、丹頂鶴を見て「タンチョウだよ」と発言していた。タモリ氏なら正しい認識は持っているかもしれないが、しかし読みについての説明が無い限り、「タンチョウだよ」と言われた方(林田アナや一般視聴者)は誤った認識を持つ可能性は否定できない。





空に「月が二つ見える」日が来る…かもしれない

2020-03-01 20:10:13 | 自然
宇宙のある場所での超新星爆発が近いようである。

超新星爆発とは恒星の最後の姿である。
最後の姿とは「星の死」ということである。

恒星(星)にも一生(誕生~死)というものがある。
最初は宇宙空間を漂っている水素ガスなどの物質が重力によってだんだん1箇所に集まってくる。ある程度集まってくると中心部で核融合反応が起きて星が誕生する。

ちなみに核融合反応というのは核兵器の水爆と同じ原理である。

で、そのまま時間が経過すると核融合反応はさらに進んで炭素などの元素がいろいろと生まれてきて、やがて膨大なエネルギ-を持つようになる。我々の太陽系の中心にある太陽は「←いまここ」の段階にある。

さらに時間が進んで星の晩年の頃になるとどうなるか。

恒星は終末期に近づくとだんだん膨張して赤く巨大な星になる。その過程で重い元素である鉄が出来てくる。そうすると膨張していた動きにストップがかかる。

最終的には星は自らの重さを支えきれなくなって急速に潰れて超新星爆発を起こしてその一生を終えることになる。

超新星爆発の規模はとんでもなく大きく、長期間に渡って影響が続く。
どれくらいなのか?

我々の太陽系が所属している天の川銀河(銀河全体から見るとかなり辺境地域にある)においては、有史以来数回の超新星爆発の観測記録がある。

有名なものでは新古今和歌集の選者である藤原定家が記した「明月記」という日記の中に「(西暦)1054年に牡牛座の方角に木星くらい明るい星が出現した」という趣旨の記述がある。

では、藤原定家が記したその方角を今現在観測すると何が見えるのか?

そこには「かに星雲」という”カニが手足を広げたような形”をしたガス星雲が見える。このガスは毎秒1300キロという猛スピードで広がり続けている。それで、かに星雲の今の大きさとガスが広がる速度から逆算すると900年あまり前の時点で一点に収束することが判る。

つまり、現在の「かに星雲」は、すなわち藤原定家が見て明月記に記した超新星爆発の残骸が四方八方に広がり続けている状態…であり、二つは同一のものである。


さて、ここから本題に入る。


現在の夜空、オリオン座の左上方に明るい一等星がある。
ベテルギウスである。

ベテルギウスの表面温度は比較的低く約3000度なので赤く見える。直径は14億キロである。太陽系に当て嵌めてみると木星の公転軌道すれすれのところまでに達する超巨大な恒星である。水金地火の各惑星と小惑星帯(アステロイド・ベルト)はベテルギウスに飲み込まれる…そのくらいの大きさである。

恒星が赤くなって巨大化するのは「赤色巨星」と言って、前述のように星の寿命が近い末期にあることを示している。すなわち、ベテルギウスは星の末期状態にある、ということ。ならば、ベテルギウスはいつ爆発するのだろうか。

ベテルギウスは既に星の一生の99.9%は終えているので、実はいつ爆発してもおかしくはないのである。

ベテルギウスはオリオン座にある、と書いたが、地球からの距離は650光年である。つまり、今見えているベテルギウスも実は650年前の姿である。現場ではとっくに爆発している可能性も高い。地球時間で明日とか来週爆発してもおかしくない状態にはあるのだ・・・しかしいつ爆発するかの正確な予測は極めて難しいのである。

ベテルギウスの最近の観測記録では「急速に暗くなる」という異変が見つかっているので、超新星爆発がいつ発生してもおかしくはない状態にはある。

暗い、と言ってもどの程度暗くなっているのだろうか。

ベテルギウスは一等星の中でもさらに明るい部類に属していたのだが、昨年(2019年)あたりから急速に暗くなり始めたのである。最近の観測でも明るさは往年の1/3程度であり、等級は二等星になっていて、過去50年で見ても最も暗いレベルになっている。

その一方で、ベテルギウスは膨張したり収縮したりを繰り返して明るさが変化する性質を持つ恒星ではあるので、いずれまた明るくなるだろう、という専門家の意見もある。しかし、やはり星の末期の姿であろう、という見方が今は大勢を占めているようである。


そうなると、実際にベテルギウスが超新星爆発を起こした場合、それはどのように見えるのだろうか?


ベテルギウスは地球から”近い”星なので一大天文ショーになることは必至である。


「近い」ってどのくらいだろうか?

上述したように地球からベテルギウスまでは650光年の距離である。言うまでもなく「光年」とは光の速さで何年かかるかを示す単位だ。光速で650年もかかる距離が「近い」のか?

近いのだ。我々が見ている恒星の多くは桁違いに遠いものがほとんどであり、その中では650光年は「ご近所さん」「すぐそこ」と言っても過言ではない距離である。

ご近所で起きる超新星爆発だから見た目にも派手な夜空の異変になるのだし、なんなら昼間にも見える筈である。

超新星爆発が起きると恒星(ベテルギウス)の温度は急上昇して色が青みがかってくる。爆発から1時間後には他のどの星よりも明るく輝いて誰もが夜空の異変に気がつくレベルになる。3時間後には明るさはさらに増して満月に近い明るさでギラギラ輝くようになる。この状態ではその明るさの強さ故に昼間でも十分に見えるようになり、その状態が3ヶ月続くと予想される。我々の月が見えている時なら「空に月が二つ輝く」状況になる、ということだ。これは一般の人の誰もが喫驚する状態に違いない。

しかしこれはいつまでも続くわけではなく、爆発した恒星の温度はやがて下がっていき、明るさも暗くなってくる。そして4年後には肉眼では見えなくなってオリオン座から姿を消す…ということになる。


ここで一つの心配事に気づく。


そんな「ご近所さん」な距離で超新星爆発を起こされたら地球にも大なり小なりの影響があるのではないか?

もっともな心配である。

だが、「安心して下さい。穿いてますよ。

一般的に超新星爆発では放射線の一種であるガンマ線が放出されることが判っている。国立天文台の山岡准教授の説明では「地球に届くガンマ線の量自体はそれほど多くはない」そうで、しかも「地球の大気がガードしてくれるので大した影響は無いと予測される」とのことだ。


実は地球にはガンマ線よりも大量に降り注ぐものがある。
素粒子のニュートリノである。

ニュートリノは物質を構成する最も基本的な粒子で、星の中心で爆発が始まると同時に光の速さで大量に放出されるのである。

ただ、この粒子は物質とほとんど反応はしないので人体への影響は無いのだが、稀に水の分子と衝突して光を発することがある。

ここで日本の科学技術の出番である。岐阜県の山深い場所に超大量の水を蓄えた観測施設であるスーパーカミオカンデがある。これでニュートリノを捉えようと待ち構えているのだ。

超新星爆発が起きた後、地球上で目視で爆発を確認できるよりもニュートリノの方が十数時間早く地球に到達することが判っている。すなわち、ニュートリノを観測すれば、それがそのまま兆候になるので超新星爆発が発生した事が判るのである。

なので、スーパーカミオカンデでは大量のニュートリノを捉えたら30分以内に世界中の天体望遠鏡に警報を出すことになっている。それで一斉に超新星爆発の方向にレンズを向けてもらって爆発の最初から観測する手筈になっているのである。こうすることで謎が多い超新星爆発の仕組みなどについての解明に繋げたい、という意向があるのだ。


こうしてベテルギウスが超新星爆発を起こしてやがて我々の視界から消えた場合、オリオン座はどうなるのだろうか。

「安心して下さい。穿いてますよ。」(しつこいか)

オリオン座というのは星座の一つであり、星座というのは天文学においてある領域を示しているのだ。夜空は88の領域に分けられていて、その一つ一つに星座が割り振られている。

従ってオリオン座の星の一つが消えても、その領域がオリオン座であることには変わりはないのである。