トランプ米大統領が米朝首脳会談の中止を発表したが、事態の推移に可笑しなポイントがあるのでいくつか述べる。
韓国の文在寅大統領がアメリカを訪問したが、一体何をしに行ったのかと思っていたら案の定な展開となった。
米韓首脳会談の際の文在寅大統領を見つめるトランプ大統領とペンス副大統領の目つきは非常に怖いものがあった。明らかに怒りを内包した目つきであり怒っていたのだ。それは文在寅が仲人気分で「平和だ平和だ」とヌルい事を言っているので最初からこいつは信用できない、と韓国からわざわざ来たことなど無視して憤りを感じていたのだ。おかげで文在寅大統領はメンツ丸つぶれである。
今回の米朝首脳会談中止の件はトランプ自身が日韓両首脳にも説明してある、と言っている。文在寅大統領は訪米時にそれを聞いたのかもしれないが、しかし自分の平和路線に都合の良いところだけチョイスして変な声明を言ったのかもしれない。
北朝鮮の金正恩党委員長も慌てているようで、早速北朝鮮からも声明が出されたが、その内容は平易に意訳すると「え?中止なの?」と驚いたような内容であり、「戻る用意はありますけど」とも付け加えられている。突然の豹変、低姿勢である。
結局、事態の推移全体を俯瞰して見た時に、今回「蚊帳の外」だったのは韓国ではないのか?・・・と思える展開になっている。
金正恩党委員長も喫驚したことだろう。
事態の詳細を説明するとトランプ大統領が「リビア方式ではない」と発言した直後にペンス副大統領が北朝鮮に対して「完全かつ不可逆的で検証可能な廃棄を求める」「甘いこと言ってたら厳しい軍事オプションもあるよ」「完全廃棄するまで制裁は続ける」と 原理原則を繰り返したら北朝鮮はペンス副大統領に対する悪口・罵詈雑言を繰り出してきたのだ。
この件で、トランプ大統領の手紙には「ホスタイル」という言葉が使われたのが一つの注目ポイントである。「ホスタイル」とは直訳で「敵意がある」とか「好ましくない」という意味で、日本語で意訳すると「イキっている」ような状態を表す単語である。例えば非常に尖ったラッパーが使いそうな言葉であり、どちらかと言えば下品な言葉である。それほど北朝鮮の態度がよろしくない、という事を言っているのだろう。
それで会談も準備作業は進行していたがドタキャンされた。北朝鮮の態度の硬化は、アメリカとしては単なる会談への揺さぶりを超えて、そもそもこれは会談を成功させる気がないのだろう、と判断したものと思われる。
北朝鮮の態度の豹変にトランプ大統領が激怒してグワーっと喋ったのを丁寧な言葉でリライトしたのがあの手紙であり、慇懃無礼な内容となっている。
トランプ大統領の手紙の最後には次のような事が記されている。
「この機会を逃したことは歴史的に非常に悲しい瞬間だったね。残念!」「で、気が向いたら電話か手紙してね」と記されている。「いつでも待ってるよ」と。
また、手紙には「ちなみに核兵器はあなた方が持ってるものより私達が持ってる物の方が格段にパワフルですよ」「ただ、神がこの核兵器を使わせることはないと思いますけどね」とも書かれていてアメリカの憤りが伝わる内容になっている。
また、こうした展開を見ているとどこの国が蚊帳の外に置かれたかが非常によくわかるのである。
これを受けて韓国から主に情報を受け取っている北朝鮮問題専門家などは非常に動揺しているそうである。「まさかやるとは思わなかった」ということらしい。
アメリカのメディアなどは、トランプ大統領がノーベル平和賞を意識していて席を蹴ることは難しいのではないかと書いていた。あのウォール・ストリート・ジャーナルですらそう書いていたのだ。
リビア方式を放棄するのは意外でもあったが、よく読むと全然違うことがわかる。「カダフィは死んだが、金正恩は死なないよう努力しますよ」と言ってるのだ。だから「リビア方式じゃない」と言うことらしい。
この辺、あまり意味がわからない感じである。
どういうことか。
トランプ大統領は2003年のリビアの核放棄と2010年にカダフィが排除された政変をどうも混同しているようである。リビアに於いて核廃棄が完了してからカダフィ政権は7年持ったのだ。その後、カダフィ政権は最後は内部崩壊して、カダフィ大佐自身は国民によって殴り殺された、というのが歴史的事実である。
「リビア方式放棄」といってこれは芳しくないと思っていたら、同じ会見の中で厳しいことをずっと言っていたのである。核放棄は完全かつ検証可能で不可逆的なものでなければ駄目である、と。そのあとペンス副大統領からフォロー発言があったのだが、そうしたら北朝鮮はペンス発言をつかまえて態度を悪化させて罵詈雑言のオンパレードになったのだ。
北朝鮮が「こんなのいつでもやめてやる」と言ったら、アメリカは「あ、そう、じゃ、やめましょ」となって、北朝鮮が「えーー?!!」と喫驚した、と。
どうもノーベル平和賞云々はトランプ大統領にとっては関係ないようである。その面では多くの人がトランプ大統領を読み違えていたようだ。
トランプ大統領の読みでは「これ(北朝鮮の豹変)には黒幕がいる」としている。これは「リビア方式をやめる」と言った同じ会見で言っている事だ。「北朝鮮の態度が突然変わった」と。それは金正恩が大連で習近平国家主席と二回目の会談をして、そこから態度が変わった、と語っている。
背後には中国がいる、ということで米朝対立から米中対立へと図式が変わってきたのが実態だ。米中は貿易戦争をやっている。これにどのような影響が出るか注目である。市場も荒れている(24~25日現在)。地政学リスクによる荒れは持っても1~2日くらいと言われているが、アメリカのこの先の通商問題に関する方針が変わってくる可能性があるので要注目である。
なお、中国はこの米朝首脳会談中止の発表には驚いてないらしい。事前に情報をとっていた模様である。
今後の推移に注目してゆきたい。