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日本のコロナ対応が駄目な理由

2021-08-24 22:36:22 | 社会・政治
全世界が中国武漢で発生し世界的規模で感染が拡大した武漢コロナウィルスのおかげで大変な目に遭っている。
日本では「医療崩壊」「入院できない」などの問題が叫ばれ、日本のコロナ対応が後手後手で駄目駄目だという評価が一般的になっている。

実は日本の病床数は世界一多いのである。ところが、東京都の病床約10万床の内でコロナ用に確保されているのは僅か6%にあたる6000床だけなのだ。また、東京都内の病院は650あるのだが、その内75病院(11%)だけがコロナ患者を受け入れている。9割近くの病院がコロナ患者を受け入れていない。

武漢コロナウィルスの災禍が明らかとなって以降1年半にわたって国も東京都もコロナ患者用の病床を増やす政策を実施していない。その一方で、国民に自粛と経済活動の停止を求めてばかりである。自分たちの不作為のツケを全て国民に負わせる無責任極まりない政治家・役人たちであるが、それと共に政府の分科会や医師会・医療業界にも大きな問題がある。

なぜ今の惨状に至ってしまったのか。
そこが問題である。

この核心部分について数量政策学者で経済学の専門家である高橋洋一氏の解説を参考にして記していきたいと思う。

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現在の客観的な情勢としては新規感染者は確かに増えている。重傷者も新規感染者が増えているので、それなりに増加している。但し、死者はあまり増えていない。一般的にデルタ株の時には感染者が増える傾向にある。それでも死亡者がそれほど増えていないのはワクチン接種が進んでいる事に依るものであろう。特に亡くなりやすいのは高齢者であるが、この年齢層はワクチンがカバーしているので想定ほどは増えていないのである。

政府の分科会もマスメディアも「新規感染者数」を軸にして議論しているのだが、いつまでこの軸を続けるのか、という見方も出てきている。それでも現在は新規感染者数を軸にしている以上は、それに基づいて緊急事態宣言も出さざるを得ない…政府の分科会はそういう方針でいるようだ。

しかし、だ。

分科会から出てくるのは国民に対する行動制限ばかりである。

その理由を推測すると・・・
まず、基本的に分科会をマネージメントしているのは厚労省の役人である。そして、分科会に参加しているのは基本的には医師会関係の人物である。これは医師会の要請として「自分たちの医療体制に手を付けないで患者の方を減らす」ということを重視した結果である。

この「自分たちの医療体制に手を付けないで患者の方を減らす」というスタンスが問題なのだ。(*1)

普通に捉えるならば、患者が増加している時には「医療体制を拡充する」という考え方がある。だが、分科会では最初からそれをターゲットにしていなかったのである。最初から、だ。1年間やってきてずーっとそのまんまなのだ。

一番最初の時、つまり相手(ウィルス)の正体がよく判らない時には新規感染者を抑える手立ても必要であろうが、同時に医療体制拡充もある程度はできる筈なのである。具体的には補正予算の中に「医療体制の強化費」という名目の補助金が1兆5千億円もあったのだ。補正予算作る時に高橋氏は「これは重要だから」と念押しして作った予算だ。

ところが、である。

せっかく付けたこの補正予算1.5兆円はほとんど使われることはなかった。通常であれば、補助金を予算化したのだから、使わない、というのは解せないことである。

これが意味するところは、最初から「医療体制の拡充はしないでコロナの感染を抑える」事を重視していた、ということ。つまり「国民の行動抑制」である。社会的な抑制で感染拡大を抑える…恐らく初めからそういう方向で行く算段だったのだと推測されるところだ。

最初からこの方針だったことが最もよく判る事実がある。最初に「42万人死ぬ」という予測が出されているのだ。42万人亡くなる時には2000万人以上の感染者が出る、と推定される。その規模になってくると「医療体制の強化」は全然意味が無くなってしまう。政府側は最初からそういうシナリオで動いていたのだろう、と推測される。

つまり・・・

医療体制の方は徹底して手を付けないでおいて感染患者の方だけを抑える…そういうコンセプトだったのはほぼ間違いない。

前述の補助金1.5兆円だが、この予算が付けられた後で、コロナ専用のプレハブ病棟が全国各地にできるのだろう、と考えられていた。しかし、それが作られることはなかった。本来なら1年半前に1.5兆円も付けたのだから専用病床が各地にできていた筈なのである。それらが出来ていたならば自宅療養などしないで済んだ筈なのだ。


ある時に、厚生労働大臣が病床数の目標を言っているのだが、もちろんそれは全然達成できてないのである。つまり、厚生労働大臣は医師会をコントロールできてない、ということだ。

実は、日本で緊急事態宣言を出す時に「医師会に対して指示命令はできない」ことになっているのだ。医師や病院に対する指揮命令が取れない…そういう法律が無いから、である。

本来の緊急事態宣言にはかなり強力な私権制限があるので、それと同じレベルで業者に対する指示命令が必要なのだが、そういうことは法律になっていないのが現状である。それは実は憲法にも関わってくる問題である。

ただ、医師の事になると一般的な私人の話とは違ってくるので、憲法レベルの話でなくとも、業者に対する命令であり、特に医師法に依る免許を持っている人達の事なので、その範囲で必要なことはできるだろう、と思われるところである。仮にも医師法という法律に依って定められている医師に対する指導を強化する、という話なので憲法云々の話とは別にできるだろう、と考えられるのだ。

厚労省は今までにそのような法律を作った実績は無いので、今のような「緊急事態宣言の時に医師に対する指導が行えない」というのが現実である。

なにしろ、こうした緊急時に病院・医療に大して指揮命令ができないのは非常によろしくない事である。

逆に、そうした法律があれば指揮命令ができて、なおかつそれに従わないと医師免許剥奪になるので医師としてはまずいことになるだろう。

だが、残念なことに、なかなかここまでの議論にはなっていないのが現状である。

もしもこの法律を作るのであれば、その内容は「厚労省が医師法の中で緊急事態の場合には厚生労働大臣が医師や病院に対して種々の指示ができる」とし、「もしこの指示に従わない場合には医師免許を取り上げます」、という立て方になるであろう。このような形であれば憲法改正をしなくても実現可能な筈なのである。

ただし・・・。

これを今現在やろうとするなら必然的に大反対が起きて混乱することは必定であろう。こういうものは平時に作っておかなければいけないのである。平時の時に予め緊急事態用の法律を作っておくのだ。その中の一環としてこのような医師に対する指揮命令も一緒に入れておくのが最もスマートなやり方と言えよう。

特措法を作った時に入れておけば、という話もあるが、あれは民主党政権下で作ったものであり、そもそも無理というものである。特措法は私権制限もほとんど無く営業規制の話も殆どないので、これではロックダウンも何も出来ない事は明白である。この間の改正の時でも無理である。理由は医療従事者が猛反対するから、である。そうなると国会が紛糾して法律が通らなくなってしまうだろう。こういうことは火事場の時(緊急時)にはできないものなのだ。

逆の視点から見れば、医師会は指揮命令も何も無いので好き勝手に言いたいことを言っているのがよくわかるのだ。ワクチン接種も最初は医療従事者を優先的にしたのであり、積極的にコロナ対応で頑張ってもらいたいのにあまり活躍しているとは言い難いのが実情だ。医療従事者の為に打ったのであって、パーティーや寿司屋に行くために打っているのではないのだ。酷い話である。

パーティーや寿司屋に行った人たちは炎上の火消しが早かったが、今は医師を敵に回すことができないので、結果として有耶無耶になってしまったのである。マスコミは本来はこうした事を追求すべき筈であろう。


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(*1)
医師・医療者側は何も変わらず何も変えず一切の負担を背負わない一方で、その分の負担を全部国民に押し付けているのが実態である。だから新型コロナウイルス感染症対策分科会長の尾身茂氏は国民に行動制限を求める事しかしないのだ。高橋洋一氏に依れば、そもそも尾身茂氏は活動家的な人物である。彼が「国民」と言わずに「市民」という単語を使いたがるのもそこに由来するものと推察されるのである。