Altered Notes

Something New.

賑やか過剰な熱帯の国

2021-08-10 17:46:00 | 世界
HTBの人気番組「水曜どうでしょう」の企画で、中米コスタリカで幻の美鳥「ケツァール」を激写する、というものがあった。撮影はいくつかの場所で行われ、その移動には現地の路線バスが使われたのだが、乗り込んで走り出すと、なぜかバスの車内にBGMが鳴り始めるのだ。恐らくは現地のポップスであろうが、軽快な調子の歌がバス内のスピーカーから結構な大音量で鳴らされるのだ。乗車している現地の人々は平然としているが、日本から来た「どうでしょう軍団」の一行にとっては騒音でしかなく、とても落ち着いて座席に座っていられないほどの苦痛なのであった。しかもこれが目的地に到着するまで何時間でも続くのだ。さぞ地獄であったろうと思う。

次は、乃木坂46の事例だ。
1期生で人気メンバーの一人である齋藤飛鳥さんはミャンマーと日本のハーフである。お母様の故郷であるミャンマーに渡り、観光地にもなっている有名な寺院に向かって長距離バスに乗車した飛鳥さんだが、こちらもバスが走行し始めた途端に大音量のBGM(現地のポップス)が流れ始めたのである。最初は「え?」という顔で喫驚していた飛鳥さんだが、バスは休みなく音楽を鳴らし続ける。しかもバス車内の冷房がきつい(寒い)。もはや地獄だが、やがて諦めの境地で苦笑するしかなかった飛鳥さんである。こちらも目的地に到着するまで数時間この苦行が続いたのであった。

不思議なもので、中米コスタリカと東南アジアのミャンマーにおいて全く同じパターンの事例である。バスの車内で大音量で音楽(ポップス)を鳴らす事が、どうも現地の人(バス会社)にとっては「乗客にサービスをしている」という事になるのかもしれない。どちらも同じ発想で同じ事をしているところが興味深い。


ラストは筆者の事例である。
知り合いがタイ人の女性と結婚する(結婚式を挙げる)というので、バンコクから北へ200Kmほど行ったところにあるチャイナート県に行った時の事である。現地の人々は純朴で微笑みを忘れない、やさしくて素敵な人々であった。結婚式は到着の翌朝から寺院のお坊さん9名(*1)を招いて挙行される。私は前日の夕方に到着したのだが、何しろ亜熱帯の国である。暑いし蒸すのだ。夜は屋根だけで窓がないオープンタイプの部屋でゴザ敷きの硬い床で横になったのだが、蒸し暑くてなかなか睡眠が取れない。半醒半睡の内に明け方4時半くらいだろうか、まだ空も暗い内に突然大音響が鳴り始めたので喫驚して飛び起きた。大音響とは、ラウドスピーカー複数個から繰り出されるタイの音楽(ポップス!)である。そこはチャオプラヤー川に近い村で、近所にだって他の家々(農家など)があるのだ。こんな朝まだきの時間から大音量のポップスなど迷惑極まりないのではないか、と心配したが、ご近所さん達は誰ひとりとして怒鳴り込んでくることはなかった。婚礼という大イベントの直前に景気づけなのか、或いは他に意味があるのかは不明だが、どうもこの地方ではそういうことらしいのだ。言っても朝の4時半である。日本国内だったらご近所さんが「うるさい!」と怒鳴り込んでくるだろうし、即通報ものであることは間違いない。騒音条例に抵触して行政から科料が請求されるような、そんな事例に該当するだろう。鳴っているポップスがあまりにもうるさいので、どんなスピーカーで鳴らしているのか、外に出て確認したところ、軽トラックの荷台上いっぱいに取り付けられた枠組みに直径80cmはあろうかと思える大きなラウドスピーカーが4個(!)設置されていた。「街宣車か!」と突っ込みたくなるような有様である。だが、ここはタイだ。日本とは常識も価値観も違う。そういう文化・慣習があるのであろう。所変われば常識もひっくり返るというものだ。興味深いことである。


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(*1)
タイでは、”9”という数字は幸運を呼ぶ数字として好まれている。日本で”7”が好まれるのと似ている。