京都で定年後生活

2013年3月60歳で定年退職。

美術館と庭園めぐり、京都の四季の行事と花を綴ります。

京町屋下京(2)十四春、熊谷邸、旧武田邸、鮒鶴南門、鮒鶴本館、田中邸、鳥彌三

2020-01-11 19:12:12 | 京都の町 町屋・建造物


京都の町屋下京区、第2回です。

十四春
国登録有形文化財、歴史的意匠建造物
下京区諏訪町通松原下る弁財天町
明治/1909頃 木造2階建、瓦葺、建築面積107㎡、塀延長12m付1棟
烏丸五条の交差点の北西,諏訪町通に東に面しています。通り側に間口10mの高塀を配し,やや奥に主屋を構えています。
内部は随所に銘木をあしらい,趣の異なる複数の座敷を北半に配しています。
高塀は,腰竪板張,上部真壁で出格子窓を付す端正なつくりです。

















熊谷家住宅門及び塀
登録有形文化財
下京区室町通五条上る坂東屋町
大正/1924頃 門 木造、瓦葺、間口1.4m 塀 木造、瓦葺、総延長25m、供待、玄関戸付
敷地正面から矩折れに両側面を画しています。南端に玄関を開き、供待を備え、その奥には勝手口を設けて内向き部分を画します。
中央やや南寄りには主屋洋室に合せて出格子窓を設け銅板で庇を葺いています。長押下を幅広の竪板張、上部を土壁とし、繊維問屋街の景観を今に伝えています。










旧武田家住宅主屋
登録有形文化財
下京区高辻通油小路東入永養寺町
明治/1868~1882/1916改修 木造2階建、瓦葺、建築面積131㎡
高辻通に北面する表屋造の町家です。表屋の正面一階は出格子と平格子で構成し、二階は土塗の大壁に横長の窓を開けます。
大正初期の居住部は上下階とも八畳を主室とし、座敷飾に数寄屋風を加味し、廻り階段を二箇所設けるなど、内部造作に趣向を凝らす、上質な町家です。





鮒鶴南門
登録有形文化財
下京区東木屋町通松原上る美濃屋町
昭和前/1932頃/2001改修 木造、瓦葺、間口2.1m、左右袖塀付
木屋町通の新館玄関前に開く腕木門で、起り付の切妻造桟瓦葺です。
コンクリート基礎に立つ親柱は円柱で、門口は二・一メートル、上部に鶴に松の欄間彫刻を飾っています。
両脇の袖塀は門破風板の拝部まで立ち上げ、漆喰塗の腰を杉皮張とし、料亭入口の瀟洒な門です。










鮒鶴本館
登録有形文化財
下京区東木屋町通松原上る美濃屋町
昭和前/1927頃 木造3階一部4階地下1階建、鉄板葺、建築面積273㎡、塔屋付
鴨川右岸に建つ木造三階建で、建築面積二七三平方メートル、木屋町通に玄関を構え、川側客室は縁の手摺で飾っています。
急勾配の屋根上にパラペットを廻らせ。四階屋根上に入母屋造の塔屋を設けています。
地下にアールデコ意匠のダンスホールを持つ、近代の大規模和風料亭です。





田中邸
景観重要建造物、京都を彩る建物選定第1-052号
下京区 七条通間之町東入材木町
 明治後期の建築で,客間の天井は天然屋久杉の一枚板,床は松心材の一枚板,柱は栂の四方柾・北山杉など,本願寺再建時の端材が用いられたとされる。
 七条通り沿いに北面して建つ田中家は,市電敷設による曳家により,現在の位置となった。北西側に大きく隅切りとなった敷地には,明治28年(1895)東本願寺再建の際の御下賜品の建材を用いたと伝わる主屋,その西側の大正から昭和初期に増築された貸家,主屋南側にはオクニワを挟み蔵が建つ。主屋は,桟瓦葺切妻造平入の2階建てで,2階の軒は高く,袖壁と格子戸,平格子を備える。間取りは,一列三室型となっており,ミセノマ,ナカノマ,座敷と続き,ミセニワ,ゲンカンニワ,台所のあるハシリが並ぶ。室内は一部改修が見られるものの,建築当初からの建築材料が残っている。田中家は,町家の佇まいを現在も良好に保持し,通り景観の形成に欠かせない重要な建物となっている。


















鳥彌三
登録有形文化財、景観重要建造物
下京区 西石垣通四条下る斎藤町
江戸/1751-1829 木造2階建、瓦葺、建築面積136㎡
鴨川右岸,西石垣通に西面する木造2階建の料亭です。桁行7間梁間5間半の切妻造,平入で,左手2間分の大棟がわずかに低い。
1階の通り土間沿いを厨房とし,2階を中心に大小の客間を配します。
出格子や2階縁の格子組手摺など,多彩な格子が趣ある外観を形成しています。















外観の特徴
屋根
一階庇の最前列は一文字瓦で葺いています。
横の一直線と格子の縦の線の調合が町屋の外観美の一つです。
格子
格子は戦国時代からで、内からは外がよく見え、外からはよく見えないようになっています。
家の商いや家主の好みでデザインが異なります。
上部が切り取られた「糸屋格子」、太い連子の「麩屋格子」、「炭屋格子」、重い酒樽や米俵を扱う「酒屋格子」、「米屋格子」、繊細な「仕舞屋格子」などがあります。格子を紅殻で塗ったものが紅殻格子。
ばったり床几
元々は商いの品を並べるもので、後に腰掛け用に床几として近隣との語らいの場でした。ばったりとは棚を上げ下げするときの音からきています。
店の間の外観
軒下に水引暖簾、大戸に印暖簾を掛けます。
虫籠窓
表に面した二階が低くなっている「厨子二階」に多く見られる意匠。
防火と道行く人を見下ろさない配慮と言われています。
犬矢来
竹の犬矢来は割竹を透き間なく組んだものから、少し透かしたものまでさなざまです。
直線的な町屋の表情を和らげてくれます。


各種建造物指定の説明

国・登録有形文化財
緩やかな規制により建造物を活用しながら保存を図るため,平成8年度施行の文化財制度で,登録された建物が登録有形文化財です。
登録文化財には,築後50年を経過している建造物で,国土の歴史的景観に寄与しているもの、造形の規範となっているもの、再現することが容易でないものといった基準を満たす建造物が対象となります。
京都市では,近代の建造物を中心に積極的に登録を進め,市内243件(平成31年1月末現在告示分)が登録されています。

景観重要建造物
 平成16年に制定された景観法に基づき,地域の自然,歴史,文化等からみて,建造物の外観が景観上の特徴を有し,地域の景観形成に重要なものについて,京都市長が当該建造物の所有者の意見を聞いて指定を行う制度です。
指定を受けた建造物には,所有者等の適正な管理義務のほか,増築や改築,外観等の変更には市長の許可が必要となりますが,相続税に係る適正評価や,建造物の外観の修理・修景に係る補助制度が活用できます。

歴史的意匠建造物
 歴史的な意匠を有し、地域の景観のシンボル的な役割を果たしている建築物等を京都市が指定するものです。

歴史的風致形成建造物
 平成20年11月に施行された、歴史まちづくり法に記載された重点区域内の歴史的な建造物で,地域の歴史的風致を形成し,歴史的風致の維持及び向上のために保存を図る必要があると認められるもので,京都市長が建造物の所有者及び教育委員会の意見を聞いて指定した建造物。
指定を受けた建造物には,所有者等の適切な管理義務のほか,増築や改築,移転又は除却の届出が必要となりますが,建造物の外観の修理・修景に係る補助制度が活用できます。