(写真は曽原新田付近)
松阪市内の地名の由来を訪ねています。今回は軟弱地盤・湿地を表す地名です。
松阪市内の地形を明治維新の時代までさかのぼると、海岸地帯にも、平野部にも、山間部にも、葦が生えているような湿地がいたるところにあったと思われます。今はそれらの湿地が整備され田畑になったり、住宅地になっており、当時の面影はありません。しかしそこに地名が残っていれば、当時の様子を想像することができるのです。
軟弱地盤や湿地を表す地名には次のようなものがあります。( )は当て字です
湿地を表す「ウダ・ぬ(沼)」。特に水気の多い湿地を表す「ふけ(泓・沮沢)・ふご・くご」。山間地の湿地を表す「やち(谷地・萢)」、「やつ(谷津)」。山中の湿地を表すものや水田化されたものに「ぬた(岱)」、「にた(仁田、似田)」、「むた・むだ(牟田・無田)」があります。開墾して水田にした湿地は「クテ・クデ(湫)」で表し、湿地を新たに開墾して水田にしたものに「しんでん・しんかい(新田・新開・新改)」で表します。
津市(旧美杉村)の「八知」は山間地の湿地を表す「谷地(やち)」から付いた地名と思われ、多気町の「仁田」は山間の湿地を水田化したところと思われます。長久手の戦いのあった愛知県「長久手」も湿地を表す地名で、当時は「長湫」と表記されていました。また福岡県の「大牟田」も水田化された湿地です。
松阪市内の湿地を由来とする地名では『矢津町』があります。これは山間地の湿地を表す「谷津」から変化したものと考えられます。また『新開町』も湿地を開墾して水田にして付いた地名と思われます。
また町名ではありませんが、「新田」の付く地名も多くあります。新田は湿地を新たに水田にしたところで、海岸沿いに多い地名ですが、高須町の「浦新田」や三雲地区の「曽原新田」「中道新田」「喜多村新田」「小津新田」はいずれも海岸沿いにある地名です。また平野部では大黒田町、小阿坂町、嬉野田村町にも「新田」と付く地名があり、山間地では飯南町粥見にも「大溝新田」があります。
以上の湿地に関係する地名の場所に立てば、今は水田や住宅地になっていても、当時の面影を偲ぶことができます。
以上の地名の由来は個人的な見解で述べています。歴史的にみておかしいところがあればご指摘下さい。